宅建業法 実戦篇

取引主任者の過去問アーカイブス 平成元年・問41 資格登録


登録(註)に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成元年・問41)

註 ここでは,宅地建物取引主任者資格登録のことをいう。

1.「破産者は,復権後5年を経過しないと,登録を受けることができない。」

2.「執行猶予つきの懲役の刑に処せられた者は,執行猶予期間満了の日から5年を経過しないと,登録を受けることができない。」

3.「未成年者は,成人に達しないと,登録を受けることができない。」

4.「不正の手段により宅地建物取引業の免許を取得したとして,その免許を取り消された者は,当該免許取消しの日から5年を経過しないと,登録を受けることができない。」

【正解】

× × ×

1.「破産者は,復権後5年を経過しないと,登録を受けることができない。」

【正解:×

◆破産手続開始の決定があり,復権していない者

 破産者で復権を得ない者は取引主任者の資格登録を受けることはできません(宅建業法・18条1項3号)

 しかし,復権を得れば,5年を経過することなく,登録を受けることができるので,誤りです。

 KEY 

 破産手続開始の決定があったが,復権を得た。

復権すれば,登録を受けることができる。

復権(破産法255条〜256条)・・・破産手続開始の決定があると,官報に記載されるとともに,本籍地の市町村の破産者名簿に記載され,後見人・保証人・遺言執行人や会社の取締役・監査役にはなれず,弁護士や会計士等の職業にも就けません。しかし,免責許可の決定が確定すれば,債務の支払義務はなくなり,復権することになります(破産法255条1項1号)。復権によって職業や資格の制限はなくなります。

 復権については,このほかにもあります。(破産手続廃止の決定が確定したとき,民事再生手続に移行して再生計画認可の決定が確定したとき,免責不許可の場合に破産手続開始の決定後に破産法265条の詐欺破産罪で有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき。 )

破産の申立から免責決定までの期間・・・おおむね半年程度ですが,即日面接を採用している裁判所では3ヵ月程度になることもあります。

2.「執行猶予つきの懲役の刑に処せられた者は,執行猶予期間満了の日から5年を経過しないと,登録を受けることができない。」

【正解:×

◆登録欠格に係るものについての執行猶予期間中は登録を受けることができない

 罪名を問わず禁錮以上の刑に処せられ,その刑の執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者は,登録の欠格要件に該当し,登録を受けることができません(宅建業法・18条1項5号)

 しかし,執行猶予がついている場合には,執行猶予期間が満了すれば,刑の言い渡しそのものの効力がなくなり,刑に処せられなかったことになるので(刑法27条)登録を受けることができます。

 したがって,執行猶予期間が満了すれば,5年が経過しなくても,登録を受けることができるので,本肢は誤りです。

 KEY 

禁錮以上の刑で,執行猶予期間中にある者 

執行猶予期間が満了するまでの間は登録を受けることができない。

3.「未成年者は,成人に達しないと,登録を受けることができない。」

【正解:×イジワル問題

◆成年者と同一の行為能力を有しない者

未成年者  成年者と同一の行為能力を有しない者  登録を受けることはできない。
成年者と同一の行為能力を有する者  登録を受けることができる。
婚姻している者 (婚姻したことがある者)

 宅建業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者は,取引主任者の資格登録を受けることはできません(宅建業法・18条1項1号)

 しかし,未成年者であっても,『民法6条1項の規定により宅建業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有している者』(民法6条1項,823条1項,商法5条,商業登記法35条〜39条)や『婚姻している者又は婚姻したことがある者(離婚・死別による婚姻の解消があった者)』(民法753条,通説)については,登録を受けることができるので,<成人に達しないと,登録を受けることができない>とは言い切れません。

 したがって,本肢は誤りです。

 KEY 

 宅建業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
(婚姻をしていない者)

取引主任者の登録を受けることはできない

宅建業者の免許では,宅建業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有していなくても,法定代理人が免許の欠格要件に該当しなければ,免許を受けることができます(宅建業法・5条1項6号)。⇒ 取引主任者の登録では,法定代理人が欠格要件に該当しなくても,登録を受けることはできないことと対比して覚えて置いてください。

未成年者 成年者と同一の
行為能力を有しない者
法定代理人が
免許の欠格要件に
該当する
 免許を受けることはできない。
法定代理人が
免許の欠格要件に
該当しない
 免許を受けることができる。
民法6条1項の規定により
成年者と同一の行為能力を有している者
 免許を受けることができる。

 (法定代理人の欠格要件は
 関係ない。)

婚姻している者 (婚姻したことがある者)  免許を受けることができる。

●専任の取引主任者
 未成年者のうち,民法6条1項の規定により成年者と同一の行為能力を有する者は,個人業者であるとき,または宅建業者である法人の役員のときは,専任の取引主任者とみなされます。 ⇒ 
   ―  専任の
 取引主任者
 専任以外の
 取引主任者
未成年者 成年者と同一の

行為能力を有しない者

 ×

 登録そのものができない 
 のでなれない。

 ×

 登録そのものができない
 のでなれない。

成年者と同一の

行為能力を有する者

 原則は×

 しかし,個人業者であるとき,
 または宅建業者である法人の
 役員のときは,
 専任の取引主任者と
 みなされる。

 しかし,この場合を除けば,
 専任の取引主任者にはなれない。

 
婚姻している者

(婚姻したことがある者)

 

 婚姻している者は,成年者と
 みなされるので,なりえる。

 

 婚姻している者は,成年者と
 みなされるので,なりえる。

註 個人の宅建業者本人が取引主任者であるとき,又は,宅建業者が法人で,その役員(業務を執行する社員,取締役又はこれらに準ずる者)が取引主任者であるときは,その者が自ら主として業務に従事する事務所等については,その者は,その事務所等に置かれる成年者である専任の取引主任者とみなされる(宅建業法15条2項)

4.「不正の手段により宅地建物取引業の免許を取得したとして,その免許を取り消された者は,当該免許取消しの日から5年を経過しないと,登録を受けることができない。」

【正解:

◆不正手段による免許取得等で免許を取り消された者

 不正の手段により宅建業の免許を取得したとして,その免許を取り消された者(宅建業法・66条1項8号9号)は,当該免許取消しの日から5年を経過しないと,登録を受けることができません(宅建業法・18条1項4号)

 KEY 

 宅建業法66条1項8号9号により宅建業の免許を取り消された者

免許取消しの日から5年を経過しないと,
登録を受けることはできない。


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