宅建業法 実戦篇
営業保証金の過去問アーカイブス 平成元年・問43
宅地建物取引業者Aは,主たる事務所 a とその他の事務所 b 及び c の3事務所を設けて,B県知事から,今年4月1日宅地建物取引業の免許を受けた。この場合の営業保証金に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定に違反しないものはどれか。 |
1.「Aは,先ず1,500万円を供託して届け出た後,a及び bで業務を開始し,その後500万円を供託して届け出た後,cでも業務を開始した。」 |
2.「Aは,2,000万円を供託して届け出た後,a,b及び cで業務を開始し,更にその後新事務所dを設置して業務を開始した後,500万円を供託した。」 |
3.「Aは,2,000万円を供託して届け出た後,a,b及び cで業務を開始したところ,Aと宅地建物取引業に関し取引をしたCが,その取引により生じた1,000万円の債権に関し,Aの供託した営業保証金から弁済を受けたので,Aは,営業保証金の不足額を供託する代わりに,b及び cの業務を停止した。」 |
4.「Aは,2,000円を供託して届け出た後,a,b及び cで業務を開始したが,その後宅地建物取引業保証協会の社員となったので,直ちに,営業保証金として供託していた2,000万円を取り戻した。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
違反する | 違反する | 違反する | 違反しない |
●問題を解く前に,把握しておきたいこと |
・主たる事務所 a とその他の事務所 b 及び c の3事務所を設けているので,営業保証金は,1,000万円+500万円×2=2,000万円が必要であり,同時に全額を供託しなければならない(宅建業法25条2項,施行令2条の4)。
・免許権者に供託した旨の届出をした後でないと,事業を開始することはできない(宅建業法25条4項,5項)。⇒ 開業後に新たに事務所を設置した場合も同じ(宅建業法26条2項)。 ・営業保証金が還付されたことにより,供託額が不足したときは,免許権者から通知書の送付を受けた日から2週間以内に不足額を供託しなければならない。(宅建業法28条1項,営業保証金規則4条)。 ・保証協会の社員になったときは,すでに弁済業務保証金分担金を納付しているはずなので(宅建業法64条の9第1項),公告をせずに,直ちに営業保証金の取り戻しをすることができる(宅建業法64条の14第1項)。 |
1.「Aは,先ず1,500万円を供託して届け出た後,a及び bで業務を開始し,その後500万円を供託して届け出た後,cでも業務を開始した。」 |
【正解:違反する】 ◆全額を供託した旨の届出をした後,事業を開始することができる 宅建業者Aは,主たる事務所 a とその他の事務所 b 及び c の3事務所を設けており,3つの事務所があるということで,B県知事から,宅建業の免許を受けています。 このため,主たる事務所について1,000万円,その他の事務所2として500万円×2の合計2,000万円を一度に全額供託して,供託した旨を免許権者に届け出た上でなければ,事業を開始することはできません(宅建業法25条2項,施行令2条の4,宅建業法25条4項,5項)。 したがって,本肢は宅建業法に違反します。
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2.「Aは,2,000万円を供託して届け出た後,a,b及び cで業務を開始し,更にその後新事務所dを設置して業務を開始した後,500万円を供託した。」 |
【正解:違反する】 ◆新たに事務所を設置 新たに事務所を設置したときは,その事務所の分の営業保証金を供託し,その旨の届出をした後でなければ,その事務所で業務を開始することはできない(宅建業法26条,宅建業法25条4項,5項)ので,本肢は宅建業法に違反します。 |
3.「Aは,2,000万円を供託して届け出た後,a,b及び cで業務を開始したところ,Aと宅地建物取引業に関し取引をしたCが,その取引により生じた1,000万円の債権に関し,Aの供託した営業保証金から弁済を受けたので,Aは,営業保証金の不足額を供託する代わりに,b及び cの業務を停止した。」 |
【正解:違反する】 ◆還付による不足額の供託 営業保証金が還付されたことにより,供託額が不足したときは,免許権者から通知書の送付を受けた日から2週間以内に不足額を供託しなければなりません(宅建業法28条1項,営業保証金規則4条)。 したがって,本肢は宅建業法に違反します。 ▼不足額を供託したときは供託所の写しを添附して,2週間以内に,供託した旨を免許権者に届け出なければなりません(宅建業法28条2項)。
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4.「Aは,2,000円を供託して届け出た後,a,b及び cで業務を開始したが,その後宅地建物取引業保証協会の社員となったので,直ちに,営業保証金として供託していた2,000万円を取り戻した。」 |
【正解:違反しない】 ◆保証協会の社員になったことによる営業保証金の取り戻し 保証協会の社員になるには,前もって弁済業務保証金分担金の納付をしなければなりません(宅建業法64条の9第1項)。つまり,保証協会の社員になったということは,すでに弁済業務保証金分担金の納付をしていることを意味します。 保証協会の社員になると営業保証金を供託することを要しなくなるので,公告をせずに,直ちに供託した営業保証金を取り戻すことができます(宅建業法64条の14)。
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