宅建業法 実戦篇
媒介契約の過去問アーカイブス 平成元年・問46
宅地建物取引業者Aは,BからB所有の土地の売却を依頼され,これを,承諾した。AB間の媒介契約が,Bが他の宅地建物取引業者に重ねて売却又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずるものであった場合,宅地建物取引業法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(平成元年・問46) |
1.「この媒介契約がBの申し出により更新される場合,AB間の合意があれば,当該契約に係る業務の処理状況の報告日を毎月15日とする旨の特約をすることができる。」 |
2.「Aは,売買価額について,Bの希望価額とAの適正と評価する価額とが異なる場合には,同種の取引事例等その根拠を明らかにして,Bに対し意見を述べることができる。」 |
3.「この媒介契約の有効期間は,契約の締結時にAB間の合意があれば,契約の有効期間が終了したときにBの申し出がなくても,更新される。」 |
4.「Aの媒介行為によりBを売主とする売買契約が締結された場合,Aは,遅滞なくBに対して媒介契約の内容を記載した書面を交付しなければならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
●Comments |
用語の定義も正確に覚えておく必要があります。
<他の宅地建物取引業者に重ねて売却又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずるもの>というのは,専任媒介契約です(宅建業法34条の2第3項)。 専任媒介契約で,宅建業者が探索した相手方以外の者と売買・交換の契約を締結することができないもの<自己発見取引の禁止>は,専属専任媒介契約です(施行規則15条の7第3号)。 一般の専任媒介契約と専属専任媒介契約の違いは,自己発見取引の禁止の有無,指定流通機構に物件登録する期間制限(7日以内と5日以内),業務処理状況の報告義務(2週間に1回と1週間に1回)の3点です。 |
1.「この媒介契約がBの申し出により更新される場合,AB間の合意があれば,当該契約に係る業務の処理状況の報告日を毎月15日とする旨の特約をすることができる。」 |
【正解:×】 ◆業務処理状況の報告は,一般の専任媒介契約では2週間に1回以上 一般の専任媒介契約の場合,依頼者に対し,業務の処理状況を2週間に1回以上で報告しなければなりません。〔専属専任媒介契約では1週間に1回以上〕これに違反する特約は無効です(宅建業法・34条の2・第8項,第9項) ▼標準媒介契約約款に基づく場合は文書または電子メールで報告しなければなりません。 ●業務処理状況の報告回数
|
2.「Aは,売買価額について,Bの希望価額とAの適正と評価する価額とが異なる場合には,同種の取引事例等その根拠を明らかにして,Bに対し意見を述べることができる。」 |
【正解:○】 ◆価額・評価額について意見を述べるときは根拠を明らかにする 宅建業者が,宅地・建物の売買・交換の媒介契約をするときに,媒介する宅地・建物の価額や評価額について意見を述べるときには,求められなくてもその根拠を明らかにしなければいけません(宅建業法・34条の2・第2項)。したがって,本肢は正しい記述です。
|
3.「この媒介契約の有効期間は,契約の締結時にAB間の合意があれば,契約の有効期間が終了したときにBの申し出がなくても,更新される。」 |
【正解:×】 ◆専任媒介契約の有効期間の更新は依頼者からの申出による 専任媒介契約・専属専任媒介契約の有効期間は,依頼者の申出により更新することができます。ただし,更新のときから3ヵ月を超えることはできません。これに反する特約は無効になります。(宅建業法34条の2第4項,第8項)。 したがって,媒介契約締結時に合意があっても自動更新にすることはできないので,本肢は誤りです。
▼専任媒介契約・専属専任媒介契約の有効期間は3月を超えることはできず,これより長い期間を定めても,3月を超える期間については無効で,有効期間は3月になります(宅建業法34条の2第3項)。 |
4.「Aの媒介行為によりBを売主とする売買契約が締結された場合,Aは,遅滞なくBに対して媒介契約の内容を記載した書面を交付しなければならない。」 |
【正解:×】 ◆媒介書面〔34条の2の書面〕の交付は,媒介契約締結時 宅建業者は,宅地又は建物の売買又は交換の媒介契約を締結したときは,遅滞なく,宅建業法34条の2第1項の事項を記載した書面を作成して記名押印し,依頼者にこれを交付しなければいけません(宅建業法・34条の2・第1項)。 媒介により売買契約が締結されたときではないので,誤りです。 |