宅建業法 実戦篇
自ら売主の制限の過去問アーカイブス 平成元年・問48
信用の供与による契約締結誘引の禁止・手付金の額の制限・損害賠償額の予定等の制限・
自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限
宅地建物取引業者Aは,自ら売主となって,宅地を買主Bに代金6,000万円で売却する契約を締結した。この場合,宅地建物取引業法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(平成元年・問48) |
1.「宅地建物取引業者である買主Bが手付金1,200万円を持ち合わせていなかったので,Aが貸与して契約の締結を誘引したとしても,宅地建物取引業法違反とはならない。」 |
2.「宅地建物取引業者である買主Bが本件物件を掘出し物と考えて,契約の拘束力を高めるため,自ら手付金を3,000万円とする申し出を行った場合,Aがこの手付金を受領しても,宅地建物取引業法違反とはならない。」 |
3.「Aが宅地建物取引業者でない買主Bと,当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を2,000万円とする特約をした場合,その特約は無効であり,損害賠償の額は予定しなかったことになる。」 |
4.「その宅地が第三者Cの所有するものである場合,AがCと売買予約を結んでいるときでも,Aは,常に宅地建物取引業者でない買主Bと売買契約を締結してはならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
1.「宅地建物取引業者である買主Bが手付金1,200万円を持ち合わせていなかったので,Aが貸与して契約の締結を誘引したとしても,宅地建物取引業法違反とはならない」 |
【正解:×】 ◆手付について信用の供与をすることによって契約の締結を誘引する行為は禁止 宅建業者が,相手方等に対し,手附について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為をすることは禁止されています(宅建業法47条3項)。 手付金の貸与は信用の供与にあたり,宅建業法違反となります。 ▼契約が実際に締結されなくても,信用の供与によって契約の締結を誘引する行為そのものが禁止されていることに注意してください。 ※信用の供与・・・手付金を貸し付ける,手付金を立て替える,手付金を数回に分けて受領する,約束手形で手付金を受領するなど。 ⇒ 業者間の取引でも禁止されていることに注意。 ⇒ 業者が手付を貸し付けて契約が締結された場合のもう1つの問題点としては,相手方等が手付の放棄によって解除する際には,相手方等は,業者が貸し付けた手付金を返還する義務が生じることがある。
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2.「宅地建物取引業者である買主Bが本件物件を掘出し物と考えて,契約の拘束力を高めるため,自ら手付金を3,000万円とする申し出を行った場合,Aがこの手付金を受領しても,宅地建物取引業法違反とはならない。」 |
【正解:○】 ◆手付の額の制限−買主が宅建業者のときは適用されない <3,000万円=6,000万円の50%> 宅建業者が自ら売主として,宅建業者でない者と売買契約を締結する際には,代金の20%を超える額の手附を受領することはできません(宅建業法39条1項)が,自ら売主の8種制限〔手附の額の制限も含まれる。〕は宅建業者相互間の取引には適用されない(宅建業法78条2項)ので,正しい記述です。
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3.「Aが宅地建物取引業者でない買主Bと,当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を2,000万円とする特約をした場合,その特約は無効であり,損害賠償の額は予定しなかったことになる。」 |
【正解:×】 ◆損害賠償額の予定等の制限 <2,000万円=6,000万円の約33%> 宅建業者が自ら売主として,宅建業者でない者と売買契約を締結する際に,債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額や違約金の合計で代金の20%を超える額を定めることはできず(宅建業法38条1項),この規定に反する特約は,代金の20%を超える部分について無効となります(宅建業法38条2項)。 本肢では,6,000万円の20%は1,200万円なので,それを超える部分の800万円が無効になります。〔一部無効〕⇒ 損害賠償の額を2,000万円としても1,200万円に圧縮される。 したがって,全部無効とする本肢は誤りです。
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4.「その宅地が第三者Cの所有するものである場合,AがCと売買予約を結んでいるときでも,Aは,常に宅地建物取引業者でない買主Bと売買契約を締結してはならない。」 |
【正解:×】 ◆他人物の売買 宅建業者は,自己の所有に属しない物件でも,当該物件を所有者から取得する契約〔予約を含む。条件付のものは除く。〕を締結しているときには,自ら売り主として,宅建業者でない者と売買契約を締結することができる(宅建業法33条の2第1項第1号)ので,本肢は誤りです。 |