宅建業法 実戦篇

取引主任者の過去問アーカイブス 平成2年・問35 

設置義務(監査役・婚姻した未成年者)・変更の登録


宅地建物取引主任者 (以下「取引主任者」という。) に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成2年・問35)

1.「宅地建物取引業者は,他の宅地建物取引業者に勤務していた取引主任者を採用したときは,その取引主任者が登録を受けている都道府県知事に変更の登録を申請しなければならない。」

2.「宅地建物取引業を営む株式会社にあっては,当該会社の監査役を専任の取引主任者として置くことができる。」

3.「宅地建物取引業者は,20歳未満の者であっても,婚姻をした者については,その者を専任の取引主任者として置くことができる。」

4.「宅地建物取引業者は,事務所以外で専任の取引主任者を置かなければならないとされている場所においても,業務に従事する者の数に対する割合が5分の1となるように,専任の取引主任者を置かなければならない。」

【正解】

× × ×

1.「宅地建物取引業者は,他の宅地建物取引業者に勤務していた取引主任者を採用したときは,その取引主任者が登録を受けている都道府県知事に変更の登録を申請しなければならない。」

【正解:×

◆変更の登録をするのは取引主任者自身

 登録の変更は,取引主任者がしなければならないので,本肢は誤りです。

取引主任者から見た視点

 取引主任者は,宅地建物取引主任者資格登録簿の登録を受けている事項に変更があったときは,遅滞なく,変更の登録をしなければなりません(宅建業法20条,18条2項,施行規則14条の2第1項5号)。本肢では,転職によって,従事する宅建業者の商号,名称,免許証番号が変わったのですから,取引主任者は変更の登録を申請しなければなりません。

宅建業者から見た視点

 宅建業者が,専任の取引主任者を新たに採用したときは,専任の取引主任者の氏名は宅地建物取引業者名簿の登載事項であることから,登載事項に変更があったことになるので,30日以内に変更の届出をしなければなりません(宅建業法9条,8条2項6号)

 ただし,<専任ではない取引主任者>や<取引主任者でない者>を採用しただけでは,変更の届出は不要です。

 取引主任者  変更の登録  遅滞なく
 宅建業者  変更の届出  30日以内

事務所ごとに置かなければならない成年・専任の取引主任者の法定数が不足したときは,2週間以内に必要な措置を執らなければならない(宅建業法15条3項)ことも,併せて覚えておきましょう。

2.「宅地建物取引業を営む株式会社にあっては,当該会社の監査役を専任の取引主任者として置くことができる。」

【正解:×

◆監査役を専任の取引主任者とすることはできない

 法人の役員の場合は,その役員が取引主任者であるときは,その者が自ら主として業務に従事する事務所等においては,その事務所等に置かれる成年の専任の取引主任者であるとみなされます(宅建業法15条2項)が,監査役はここでの法人の役員には含まれないものと考えられています。したがって,監査役を専任の取引主任者として置くことはできません。

 なぜならば,監査役は,もともと,会社・子会社の取締役や支配人その他の使用人,または子会社の会計参与や執行役を兼任することはできない(旧・商法276条,会社法335条2項)のであり,

 監査役は取締役の職務の執行を監査し,いつでも,取締役・会計参与・支配人その他の使用人に対して事業の報告を求める立場にあるからです(会社法・381条1項,2項)

 監査役は,取引主任者の資格を有していても,宅建業の業務に従事することはできず,専任の取引主任者になることもできません。 

 KEY 

役員が取引主任者であるときは, 
その事務所等に置かれる成年の専任の取引主任者であるとみなされる

しかし,監査役を専任の取引主任者とすることはできない。

3.「宅地建物取引業者は,20歳未満の者であっても,婚姻をした者については,その者を専任の取引主任者として置くことができる。」

【正解:

◆婚姻による成年擬制

 未成年者であっても,婚姻した者や婚姻を解消した者〔死別・離婚〕については,成年者とみなされるので(民法753条,通説),宅建業者は,20歳未満の者であっても,婚姻をした者については,その者を専任の取引主任者として置くことができます。

 KEY 

婚姻した者や婚姻を解消した者〔死別・離婚〕 

成年の専任の取引主任者になれる

宅建業者が取引主任者であるときは,自ら主として業務に従事する事務所等では,その者がその事務所等に置かれる成年の専任の取引主任者であるとみなされます(宅建業法15条2項)

●未成年であっても,成年の専任の取引主任者になる場合
(i) 婚姻した者婚姻を解消した者〔死別・離婚〕は成年とみなされるので,専任の取引主任者になり得る。

(ii) 宅建業者が取引主任者であるとき,または,宅建業者である法人の役員であるときは,その者がその事務所等に置かれる成年の専任の取引主任者であるとみなされ.る。

4.「宅地建物取引業者は,事務所以外で専任の取引主任者を置かなければならないとされている場所においても,業務に従事する者の数に対する割合が5分の1となるように,専任の取引主任者を置かなければならない。」

【正解:×

◆事務所以外の国土交通省令で定める場所

 事務所以外の国土交通省令で定める場所〔10区画以上の宅地・10戸以上の建物の分譲を案内所を設置して行う場合の案内所(契約行為等を行うもの),展示会場など。〕で置かなければならない成年の専任の取引主任者の数は1以上です(宅建業法15条1項,施行規則6条の2,同6条の3)

 成年の専任の取引主任者を<業務に従事する者の数に対する割合が5分の1>以上置かなければならないのは,『事務所』です(施行規則6条の3)

 KEY 

 事務所以外の国土交通省令で定める場所

宅年の専任の取引主任者は1人以上


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