宅建業法 実戦篇

営業保証金の過去問アーカイブス 平成2年・問36 


宅地建物取引業法に規定する営業保証金に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成2年・問36)

1.「新たに宅地建物取引業を営もうとする者は,営業保証金を金銭又は国土交通省令で定める有価証券により,主たる事務所のもよりの供託所に供託した後に,国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受けなければならない。」

2.「宅地建物取引業者は,その主たる事務所を移転したためそのもよりの供託所が変更した場合において,金銭と有価証券をもって営業保証金を供託しているときは,遅滞なく,費用を予納して,営業保証金を供託している供託所に対し,移転後の主たる事務所のもよりの供託所への営業保証金の保管替えを請求しなければならない。」

3.「宅地建物取引業者との取引により生じた債権であっても,広告業者の広告代金債権については,当該広告業者は,宅地建物取引業者が供託した営業保証金について,その債権の弁済を受ける権利を有しない。」

4.「宅地建物取引業者は,営業保証金の還付が行われ,営業保証金が政令で定める額に不足することとなったときは,通知書の送付を受けた日から2週間以内にその不足額を供託しなければ,10万円以下の罰金に処せられることがある。」

【正解】

× × ×

1.「新たに宅地建物取引業を営もうとする者は,営業保証金を金銭又は国土交通省令で定める有価証券により,主たる事務所のもよりの供託所に供託した後に,国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受けなければならない。」

【正解:×

◆免許を受けた後に営業保証金を供託する

 <免許を受けてから営業保証金の供託をしなければならない>ので(宅建業法25条1項),本肢は誤りです。

 免許を取得してから事業の開始までの流れをしっかり押さえておきましょう。

●免許取得〜事業の開始
 免許を受ける
   ↓
 営業保証金を供託
   ↓
 供託した旨の届出 (免許を受けた日から3ヵ月以内)
   ↓
 事業を開始

●供託した旨の届出がない〜任意的取消事由
 免許をした日から3ヵ月以内に供託した旨の届出がない
     ↓
 免許権者は届出をするように催告
     ↓
 催告が到達してから1ヵ月以内に届出をしないときは,免許を取り消すことができる。

 

2.「宅地建物取引業者は,その主たる事務所を移転したためそのもよりの供託所が変更した場合において,金銭と有価証券をもって営業保証金を供託しているときは,遅滞なく,費用を予納して,営業保証金を供託している供託所に対し,移転後の主たる事務所のもよりの供託所への営業保証金の保管替えを請求しなければならない。」

【正解:×

◆金銭のみ以外の供託では,保管替えの請求はできない

 主たる事務所の移転によりもよりの供託所が変更になった場合に,営業保証金の保管替えの請求ができるのは,金銭のみで供託している場合に限られます(宅建業法29条1項)

 金銭のみ以外−つまり,<有価証券のみで供託>,<有価証券と金銭で供託>の場合は,遅滞なく,営業保証金を移転後の主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならないので〔二重供託〕,本肢は誤りです。

●金銭のみ以外の供託−主たる事務所の移転による営業保証金の供託
 主たる事務所の移転により,もよりの供託所が変更
   ↓
 移転後の主たる事務所のもよりの供託所に営業保証金を供託
   ↓
 従前の主たる事務所のもよりの供託所に営業保証金の取り戻しの請求
 ※この場合,営業保証金の還付について権利を有する者への公告は要らない。

3.「宅地建物取引業者との取引により生じた債権であっても,広告業者の広告代金債権については,当該広告業者は,宅地建物取引業者が供託した営業保証金について,その債権の弁済を受ける権利を有しない。」

【正解:

◆営業保証金の還付を受けられる者

 営業保証金の還付を受けられるのは,宅建業者と宅建業に関して取引〔売買・交換,売買・交換・貸借の媒介・代理〕をした者です(宅建業法27条1項)

 宅建業者が広告をしたときの広告業者は,営業保証金について,その債権の弁済を受ける権利はないので,本肢は正しい記述です。

 KEY 

営業保証金の還付 

宅建業に関して取引をした者に限られる

4.「宅地建物取引業者は,営業保証金の還付が行われ,営業保証金が政令で定める額に不足することとなったときは,通知書の送付を受けた日から2週間以内にその不足額を供託しなければ,10万円以下の罰金に処せられることがある。」

【正解:×

◆還付による不足額の供託をしないとき

 宅建業者は,営業保証金の還付が行われ,営業保証金が不足することになったときは,通知書の送付を受けた日から2週間以内にその不足額を供託しなければなりません(宅建業法28条1項,営業保証金規則4条)

 通知書の送付を受けた日から2週間以内にその不足額を供託しない場合は,業務停止処分〔情状が重いときは免許取消処分〕を受けることがありますが(宅建業法65条2項1号,66条1項9号),罰金に処せられることはないので,本肢は誤りです。

●営業保証金の還付後の流れ
  営業保証金の還付
   ↓
  供託所は,還付請求権者が提出した通知書3通のうち,2通を免許権者に送付
   ↓ 
 免許権者から,宅建業者に,還付請求権者が提出した通知書のうち1通が送付される
   ↓
 通知書の送付を受けてから2週間以内に営業保証金の不足額を供託
   ↓
 供託してから2週間以内に免許権者に届出
  (供託物受入れの記載のある供託所の写しを添付する)


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