宅建業法 実戦篇

自ら売主の制限の過去問アーカイブス 平成3年・問42 

自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限


宅地建物取引業者が自ら売主となって宅地の売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定に違反するものは,どれか。(平成3年・問42)

1.「の所有地について,が,の代替地取得を停止条件としてと売買契約を締結して,自ら売主となって宅地建物取引業者でないと売買契約を締結した場合」

2.「の所有地について,が,と売買契約を締結し,その売買代金完済の前に,自ら売主となって宅地建物取引業者でないと売買契約を締結した場合」

3.「の所有地について,が,と売買契約または予約契約を締結しないで,自ら売主となって宅地建物取引業者と売買契約を締結した場合」

4.「の所有地について,と売買契約を締結したので,の売買代金完済の前に,が,とその宅地の売買の予約契約を締結し,自ら売主となって宅地建物取引業者でない と売買契約を締結した場合」

【正解】

違反する 違反しない 違反しない 違反しない

●問題を解く視点
 宅建業者は,自ら売主として,自己の所有に属しない物件(他人物)を,宅建業者でない者と売買契約を締結することは,原則として,禁止されている。

 ただし,所有者と売買契約〔売買の予約契約でもよい〕を締結していれば,自ら売主として,宅建業者でない者と売買契約を締結できるが,所有者との売買契約が停止条件付であるときには,宅建業者でない者と売買契約を締結することはできない(宅建業法33条の2第1項第1号)

●買主が宅建業者でない場合 

  B    −−−−−−  A   ⇒ C
 (所有者)  売買契約を    (売主)    (買主)
        
締結        宅建業者   宅建業者ではない
 宅建業法に
 違反しない
  B    −−−−−−  A   ⇒ C
 (所有者)  売買の予約    (売主)    (買主)
        
契約を締結    宅建業者   宅建業者ではない
 宅建業法に
 違反しない
  B    −−−−−−  A   ⇒ C
 (所有者)  停止条件付    (売主)    (買主)
         
売買契約    宅建業者   宅建業者ではない
 宅建業法に
 違反する
  B    −−−−−−  A   ⇒ C
 (所有者)  売買契約・    (売主)    (買主)
        
予約契約    宅建業者   宅建業者ではない
        ともなし
 宅建業法に
 違反する

●買主が宅建業者である場合 ⇒ 自ら売主の8種制限は適用されない。

  B    −−−−−−  A   ⇒ C
 (所有者)  売買契約を    (売主)    (買主)
        
締結        宅建業者   宅建業者
 宅建業法に
 違反しない
  B    −−−−−−  A   ⇒ C
 (所有者)  売買の予約    (売主)    (買主)
        
契約を締結    宅建業者   宅建業者
 宅建業法に
 違反しない
  B    −−−−−−  A   ⇒ C
 (所有者)  停止条件付    (売主)    (買主)
         
売買契約    宅建業者   宅建業者
 宅建業法に
 違反しない
  B    −−−−−−  A   ⇒ C
 (所有者)  売買契約・    (売主)    (買主)
        
予約契約    宅建業者   宅建業者
        ともなし
 宅建業法に
 違反しない

1.「の所有地について,が,の代替地取得を停止条件としてと売買契約を締結して,自ら売主となって宅地建物取引業者でないと売買契約を締結した場合」

【正解:違反する

◆停止条件付のときは,宅建業者でない者との売買契約をすることはできない

 B
 土地を所有
 停止条件付
 売買契約
 A
 自ら売主
 宅建業者
 ⇒   C
 宅建業者
 ではない

 から取得する契約が停止条件付のとき,その条件が成就するまでの間は,は,自ら売主として宅建業者ではないと売買契約を締結することはできないので,本肢は宅建業法に違反します。

 KEY 

所有者との売買契約が停止条件付であるとき 

自ら売主として,宅建業者でない者と売買契約を締結することはできない

2.「の所有地について,が,と売買契約を締結し,その売買代金完済の前に,自ら売主となって宅地建物取引業者でないと売買契約を締結した場合」

【正解:違反しない

◆取得する契約が締結されていれば,売買代金完済前でもよい

 D
 土地を所有
 売買契約を締結

 〔売買代金完済前〕

 A
 自ら売主
 宅建業者
 ⇒   E
 宅建業者
 ではない

 DA間で売買契約が締結されていれば,代金完済前であっても,宅建業者は宅建業者でないと売買契約を締結することができるので,宅建業法には違反しません。

3.「の所有地について,が,と売買契約または予約契約を締結しないで,自ら売主となって宅地建物取引業者と売買契約を締結した場合」

【正解:違反しない

◆宅建業者相互間の取引には,8種制限は適用されない

 F
 土地を所有
 売買契約なし
 予約契約なし
 A
 自ら売主
 宅建業者
 ⇒   G
 宅建業者
 

  FA間で売買契約,予約契約のどちらも締結されていなくても,買主が宅建業者のときは,自ら売主の8種制限は適用されないので(宅建業法78条2項),他人物の売買契約締結の制限も適用されず,代金完済前であっても宅建業者は,宅建業法には違反しません。

 KEY 

 宅地建物の売買を不特定多数のものに反復継続して行う

宅建業の免許が必要

4.「の所有地について,と売買契約を締結したので,の売買代金完済の前に,が,とその宅地の売買の予約契約を締結し,自ら売主となって宅地建物取引業者でない と売買契約を締結した場合」

【正解:違反しない

◆取得する契約は予約契約であってもよい

 H
 土地を所有
 売買契約締結  I   売買の

 予約契約

 A
 自ら売主
 宅建業者
 ⇒   J
 宅建業者
 ではない

 本肢では,売買が2段階になっています。このように場合について宅建業法では規定はありませんが,ポイントは次の2つです。

は,の所有地を取得できるか。⇒  間で売買契約が締結されている。

間での契約が締結されていれば,予約契約であっても,宅建業者ではないと売買契約を締結できる。

 間〔売買契約〕,I−A 間〔予約契約〕で契約が締結されていれば,は当該土地を取得できるので,は宅建業者でないと売買契約を締結することができます。
 したがって,宅建業法には違反しません。


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