宅建業法 実戦篇
取引主任者の過去問アーカイブス 平成4年・問38 取引主任者証
知事指定の法定講習・登録の移転・勤務先の廃業・書換え交付
宅地建物取引主任者 (以下「取引主任者」という) と宅地建物取引主任者証 (以下「取引主任者証」という) に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成4年・問38) |
1.「取引主任者の業務を行うため,取引主任者証の交付の申請をしようとする者は,その交付の申請前に宅地建物の取引に関する実務経験が2年以上あれば,都道府県知事の指定する講習を受講する必要はない。」 |
2.「取引主任者が転勤して,登録の移転の申請をした場合,その移転後の取引主任者証の有効期間は,登録の移転の申請の日から5年となる。」 |
3.「取引主任者が宅地建物取引業者である場合において,宅地建物取引業を廃止したときは,取引主任者は,速やかに,その登録をしている都道府県知事に取引主任者証を返納しなければならない。」 |
4.「取引主任者が氏名を変更して,変更の登録の申請をする場合,取引主任者は,常にその申請とあわせて取引主任者証の書換え交付の申請をしなければならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「取引主任者の業務を行うため,取引主任者証の交付の申請をしようとする者は,その交付の申請前に宅地建物の取引に関する実務経験が2年以上あれば,都道府県知事の指定する講習を受講する必要はない。」 |
【正解:×】 ◆法定講習の免除 ⇒ 1) 合格後1年以内に交付申請,2) 登録の移転の申請とともに交付申請 取引主任者証の交付の申請をしようとする者<有効期間の更新の申請でも同じ>は,原則として,登録をしている都道府県知事が指定する講習<法定講習。登録をしている都道府県知事が指定していれば,必ずしも登録している都道府県内で実施されているものでなくてもよい。>で交付の申請前6ヵ月以内に行われるものを受講しなければなりません(宅建業法22条の2第1項,22条の3)。 しかし,これには例外があり,以下の場合は,法定講習の受講は免除されています。 1) 合格後1年以内に交付申請,2) 登録の移転の申請とともに交付申請 本肢では,『交付の申請前に宅地建物の取引に関する実務経験が2年以上あれば,都道府県知事の指定する講習を受講する必要はない』としていますが,このような規定はないので,誤りです。
▼取引主任者の登録申請時には,原則として,宅地建物の取引に関する実務経験が2年以上あることが必要です(宅建業法18条1項,施行規則13条の15)。2年以上ない場合は,国土交通大臣の登録を受けた登録実務講習を修了すれば,国土交通大臣が2年間の実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認められ,登録を受けることができます(宅建業法18条1項,施行規則13条の16第1項1号)。
※法定講習は法令上の用語ではありませんが,慣用的に使われています。 |
2.「取引主任者が転勤して,登録の移転の申請をした場合,その移転後の取引主任者証の有効期間は,登録の移転の申請の日から5年となる。」 |
【正解:×】 ◆登録の移転の申請とともに交付申請したとき 登録の移転とともに取引主任者証の交付申請をした場合は,移転前に交付を受けていた取引主任者証の有効期間が経過するまでの期間を有効期間とする取引主任者証が交付されます(宅建業法22条の2第5項)。この場合は,移転前の取引主任者証と引換えに新たな取引主任者証が交付されます(施行規則14条の14)。 したがって,『登録の移転の申請の日から5年』ではありません。
▼宅建業者の免許換えでは,従前の免許はその効力は失い,新たな免許証番号になるなど従前の免許との連続性はないので,免許証の有効期間は5年です(宅建業法7条1項,3条2項)。登録の移転申請とともに交付申請した場合の取引主任者証の有効期間と混同してはいけません。 ただし,免許換えの申請をしてまだその処分がなされないときは,その処分がなされるまでは従前の免許はなお効力をもっています(宅建業法7条2項,3条4項)。 |
3.「取引主任者が宅地建物取引業者である場合において,宅地建物取引業を廃止したときは,取引主任者は,速やかに,その登録をしている都道府県知事に取引主任者証を返納しなければならない。」 |
【正解:×】 ◆取引主任者が宅建業者であり,宅建業を廃止したとき 取引主任者が宅建業者である場合に,宅建業を廃止したときは,30日以内に廃業等の届出をしなければなりませんが(宅建業法11条1項5号),原則として,取引主任者証を返納する必要はありません。⇒ ▼参照 取引主任者証を,速やかに,返納しなければならないのは,以下の場合です(宅建業法22条の2第6項,施行規則14条の15第3項)。 1) 登録が消除されたとき <本人の申請による場合,宅建業法違反等による登録消除処分の場合> 2) 取引主任者証が効力を失ったとき <取引主任者証の有効期間の満了,登録の移転など> 3) 主任者証を亡失したことにより再交付を受けた後に,亡失した主任者証を発見したとき 罰則 1) 2)の規定に違反すると10万円以下の過料に処せられます(宅建業法86条)。 ▼取引主任者である宅建業者が,宅建業法違反などで免許取消処分に該当して,その聴聞の公示日以後に相当な理由なく,廃業届を提出した場合は取引主任者の登録の欠格事由に該当するため(宅建業法18条1項4号の2),登録をしている都道府県知事はその登録を消除しなければならず(宅建業68条の2第1項第1号),その場合は,登録が消除されたときに速やかに取引主任者証を返納しなければなりません(宅建業法22条の2第6項)。 しかし,本肢では,特に言及してはいないため,このことを考える必要はありません。 |
4.「取引主任者が氏名を変更して,変更の登録の申請をする場合,取引主任者は,常にその申請とあわせて取引主任者証の書換え交付の申請をしなければならない。」 |
【正解:○】 ◆取引主任者証の書換え交付 “常に” という文言に引っかかったかもしれませんが,本肢は正しい記述です。条文では,<氏名又は住所の変更のときは,変更の登録の申請とあわせて主任者証の書換え申請をしなければならない>と,なっているからです(施行規則14条の13第1項)。 取引主任者の氏名や住所は資格登録簿の登載事項であり,取引主任者証の記載事項になっています(宅建業法18条2項,施行規則14条の11第1項第1号)。 したがって,取引主任者の氏名<婚姻や養子縁組,改名>又は住所が変更になったときは,遅滞なく変更の登録を申請し,かつ,同時に,取引主任者証の書換え交付もあわせて申請しなければなりません(宅建業法20条,施行規則14条の13第1項)。
▼取引主任者証の書換え交付
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