宅建業法 実戦篇

自ら売主の制限・業務上の規制の過去問アーカイブス 平成4年・問44 

信用の供与による契約締結誘引の禁止・解約手付・手付放棄による解除・
損害賠償額の予定等の制限・


宅地建物取引業者が自ら売主としてマンション (価格1億7,000万円) の売買契約を宅地建物取引業者でない買主と締結した場合の特約に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定に違反しないものは,どれか。(平成4年・問44)

1.「手付は,1,500万円としたが,が一括しては払えないというので,500万円ずつ3回に分割して支払うこととした。」

2.「手付は,契約の成立を証するものとして30万円とし,の契約の解除については,この他に1,000万円を支払わなければ,することができないこととした。」

3.「手付は,解約手付として3,000万円とし,が契約の履行を完了するまでは,は,手付を放棄して契約の解除をすることができることとした。」

4.「AB双方の債務不履行による契約の解除に関し,違約金については2,500万円とし,別に損害賠償額の予定として1,000万円とすることとした。」

【正解】

違反する 違反する 違反しない 違反する

1.「手付は,1,500万円としたが,が一括しては払えないというので,500万円ずつ3回に分割して支払うこととした。」

【正解:違反する

◆手付について信用の供与の禁止

  宅建業者は,手付について貸付その他信用を供与することで契約の締結を誘引する行為をしてはいけません(宅建業法47条3号)

 手付を分割払いにするのは,この規定に違反します(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方,国土交通省)

 KEY 

 手付について信用の供与の禁止
↓違反すると
監督処分 業務停止処分(情状が特に重いとき 免許取消)
罰則 6ヵ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金 又は併科

●業務に関する禁止事項
(業務に関する禁止事項)
第47条  宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

一  重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為

二  不当に高額の報酬を要求する行為

三  手附について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為

2.「手付は,契約の成立を証するものとして30万円とし,の契約の解除については,この他に1,000万円を支払わなければ,することができないこととした。」

【正解:違反する

◆解約手付

 契約の成立を証する手付は「証約手付」です。

 宅建業者が,自ら売主として,宅建業者ではない者と売買契約を締結する際に,受領する手附は,その性質を問わず,解約手附とみなされます(宅建業法39条2項)
 つまり,買主は,証約手付であっても,宅建業者が契約の履行に着手するまでは,手附を放棄して契約を解除することができます。

 これに反する特約で買主に不利なものは無効です(宅建業法39条3項)

したがって,<契約の解除については,手附の他に1,000万円を支払わなければ,することができないこととした。>本肢は宅建業法に違反します。

 KEY 

  手附の額の制限・解約手付
↓違反すると
監督処分 指示処分  罰則 なし

 

●手附の額の制限
(手附の額の制限等)
第39条  宅地建物取引業者は、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二をこえる額の手附を受領することができない。

2  宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは、その手附がいかなる性質のものであつても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手附を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。

3  前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。

3.「手付は,解約手付として3,000万円とし,が契約の履行を完了するまでは,は,手付を放棄して契約の解除をすることができることとした。」

【正解:違反しない

◆解約手付

  宅建業者が,自ら売主として,宅建業者ではない者と売買契約を締結する際に,受領する手附は,名目の如何を問わず,解約手附とみなされ,
 相手方が契約の履行に着手するまでは,買主は,手附を放棄して契約を解除することができ,宅建業者はその倍額を償還して契約の解除をすることができます(宅建業法39条2項)

 KEY 

  手付による解除 (手付による解除では,解除の理由は,何でもよい。)

買主は,手附を放棄して契約を解除することができ,
宅建業者その倍額を償還して契約の解除をすることができる。

4.「AB双方の債務不履行による契約の解除に関し,違約金については2,500万円とし,別に損害賠償額の予定として1,000万円とすることとした。」

【正解:違反する

◆損害賠償額の予定+違約金の合計は20%以内

 宅建業者が,自ら売主として,宅建業者ではない者と売買契約を締結する際に,債務不履行を理由とする解除に伴う損害賠償額の予定や違約金を定めるときは,その合計で,代金の20%を超える定めをすることはできません(宅建業法38条1項)

 もし,20%を超える定めをした場合は,20%を超える部分について無効になります(宅建業法38条2項)

 本肢の場合は,合計で3,500万円で,代金の20%である3,400万円を超えているので,3,400万円を超えた部分について無効になります。本肢は,宅建業法の規定に違反します。

 KEY 

  損害賠償額の予定等の制限
↓違反すると
監督処分 指示処分  罰則 なし

●損害賠償額の予定等の制限
(損害賠償額の予定等の制限)
第38条  宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2をこえることとなる定めをしてはならない。

2  前項の規定に反する特約は、代金の額の10分の2をこえる部分について、無効とする。


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