宅建業法 実戦篇

自ら売主の制限の過去問アーカイブス 平成6年・問43 

瑕疵担保責任の特約の制限・損害賠償額の予定等の制限・手付放棄による解除


宅地建物取引業者が自ら売主として,宅地建物取引業者でない買主とマンション(価額5,000万円)の売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定によれば,誤っているものはどれか。(平成6年・問43)

1.「AB間の合意で,が瑕疵担保責任を負う期間について,が瑕疵の事実を知ったときから1年間と定めても,は,当該物件の引渡し後2年間は瑕疵担保責任を負わなければならない。」

2.「AB間の合意で,違約金を2,000万円と定めても,は,1,000万円を超える部分については,に対し請求することができない。」

3.「AB間の合意で,当事者の一方が契約の履行に着手するまでの間の契約の解除について,は手付の半額を放棄し,は手付の全額を償還して解除することができると定めても,は,手付の倍額を償還しなければ解除することができない。」

4.「AB間の合意で,が契約の履行に着手するまでの間の契約の解除について,は手付の3倍額を償還して解除することができると定めた場合,は,手付の倍額の償還だけでは,解除することはできない。」

【正解】

×

1.「AB間の合意で,が瑕疵担保責任を負う期間について,が瑕疵の事実を知ったときから1年間と定めても,は,当該物件の引渡し後2年間は瑕疵担保責任を負わなければならない。」

【正解:×

◆瑕疵担保責任

 <瑕疵の事実を知ったときから1年間>とするのは民法の規定どおりで(民法570条,566条3項),買主に不利な特約とはいえないので,有効です。

宅建業法では,宅建業者が自ら売主となり,宅建業者ではない者と宅地又は建物の売買契約を締結するに際して,<引渡しの日から2年以上とする特約>をする場合を除いて,民法の規定よりも買主に不利な特約をしてはならないことになっています(宅建業法40条)

●民法での瑕疵担保責任
・善意無過失の買主のみが契約の解除または損害賠償の請求をすることができる。

・除斥期間は,買主が事実を知ったときから1年間。

・買主は,契約をした目的を達成できないときは契約の解除をすることができる。

・買主は,契約の解除をすることができないときは,損害賠償の請求のみをすることができる。

・売主の無過失責任

●条文の確認
(瑕疵担保責任についての特約の制限)
第40条
 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法第570条 において準用する同法第566条第3項 に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。

2  前項の規定に反する特約は、無効とする。

2.「AB間の合意で,違約金を2,000万円と定めても,は,1,000万円を超える部分については,に対し請求することができない。」

【正解:

◆損害賠償額の予定等の制限

 宅建業者が自ら売主となり,宅建業者ではない者と宅地又は建物の売買契約を締結するに際して,債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額や違約金の合計は,代金の20%を超えることができず,20%を超えた場合でも20%を超える部分については無効になります(宅建業法38条)

 本肢での違約金2,000万円は価額5,000万円の40%なので,20%である1,000万円を超える部分は無効ですから,宅建業者は,1,000万円を超える部分については,に対し請求することができません。

●条文の確認
(損害賠償額の予定等の制限)
第38条
 宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない。

2  前項の規定に反する特約は、代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする。

3.「AB間の合意で,当事者の一方が契約の履行に着手するまでの間の契約の解除について,は手付の半額を放棄し,は手付の全額を償還して解除することができると定めても,は,手付の倍額を償還しなければ解除することができない。」

【正解:

◆解約手付 

 宅建業者が自ら売主となり,宅建業者ではない者と宅地又は建物の売買契約を締結するに際して,手付は解約手付とみなされており,<当事者の一方が履行に着手するまでは,買主はその手附を放棄して、当該宅建業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。>とされています(宅建業法39条2項)

 この規定に反する特約で買主に不利なものは無効です(宅建業法39条3項)

 本肢では,<は手付の半額を放棄し解除することができる>という部分はいいにしても,<は手付の全額を償還して解除することができる>という部分は買主に不利なので無効です。

 したがって,は,手付の倍額を償還しなければ解除することができません。

●条文の確認
(手附の額の制限等)
第39条  宅地建物取引業者は、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二をこえる額の手附を受領することができない。

2  宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは、その手附がいかなる性質のものであつても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手附を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。

3  前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。

4.「AB間の合意で,が契約の履行に着手するまでの間の契約の解除について,は手付の3倍額を償還して解除することができると定めた場合,は,手付の倍額の償還だけでは,解除することはできない。」

【正解:

◆解約手付

 <宅建業者は手付の3倍額を償還して解除することができる>と定めた場合,買主に有利な特約なのでこの特約は有効です(宅建業法39条2項,3項)

 したがって,は,手付による解除をするためには,手付の3倍額を償還しなければならず,手付の倍額の償還だけでは解除することはできません。


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