宅建業法 実戦篇
事務所等の過去問アーカイブス 平成8年・問36
案内所設置の届出・従業者証明書の提示・帳簿の保管期間・
自己の所有に属しない宅地建物の契約締結の制限
宅地建物取引業者A (個人) がその業務を行う場合に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定に違反しないものはどれか。(平成8年・問36) |
1.「Aは,20区画の一団の宅地分譲に際し,見学者の案内のみを行う現地案内所を設置したが,当該案内所について都道府県知事に届出をしなかった。」 |
2.「Aは,取引の関係者から従業者証明書の提示を求められたが,それに代えて宅地建物取引主任者証を提示した。」 |
3.「Aは,その業務に関する帳簿を,その閉鎖後2年を経過したので焼却した。」 |
4.「Aは,Bから停止条件付で取得する契約を締結した宅地を,その事実を故意に告げることなく,自ら売主として宅地建物取引業者でないCに売却した。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
違反しない | 違反する | 違反する | 違反する |
1.「Aは,20区画の一団の宅地分譲に際し,見学者の案内のみを行う現地案内所を設置したが,当該案内所について都道府県知事に届出をしなかった。」 |
【正解:違反しない】 ◆契約行為等を行わない案内所について,50条2項の届出をする必要はない 見学の案内のみを行う案内所〔契約行為等を行わない案内所〕については,50条2項の届出をする必要がありません。(専任の取引主任者の設置義務もない。) ●注意●標識 一団の宅地建物の分譲〔または媒介・代理〕に際して見学の案内のみを行う案内所には,標識を掲げなければなりません(宅建業法50条1項,施行規則19条1項2号・3号)。
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2.「Aは,取引の関係者から従業者証明書の提示を求められたが,それに代えて宅地建物取引主任者証を提示した。」 |
【正解:違反する】 ◆従業者証明書の提示 従業者証明書は,宅建業者がその従業者全員に携帯させる義務があり,携帯させなければ業務に従事させてはならないことになっています(宅建業法・48条1項)。 従業者は,取引の関係者から請求があったときには,従業者証明書を提示しなければならず(宅建業法48条2項,施行規則17条,別記様式第8号),取引主任者証の提示で代えることはできないので,本肢は宅建業法に違反します。 ▼取引主任者証には従事している宅建業者の名称は記載されていないので,取引主任者証を提示しても,従事者であることの証明にはなりません。 |
3.「Aは,その業務に関する帳簿を,その閉鎖後2年を経過したので焼却した。」 |
【正解:違反する】 ◆帳簿は閉鎖後5年間保存 宅建業者は,事務所ごとに,業務に関する帳簿を備え,その帳簿には,宅建業に関し取引のあったつど,その年月日,取引に係る宅地・建物の所在・面積その他国土交通省令で定める事項を記載しなければなりません(宅建業法49条,施行規則18条1項)。 この帳簿は,各事業年度の末日をもって閉鎖し,閉鎖後5年間保存(当該宅地建物取引業者が自ら売主となる新築住宅に係るものは10年間保存)しなければならないものとされています(施行規則18条3項)。 本肢では<閉鎖後2年を経過したので焼却>しているので,宅建業法に違反します。
※当該宅地建物取引業者が自ら売主となる新築住宅に係るものは10年間保存。 |
4.「Aは,Bから停止条件付で取得する契約を締結した宅地を,その事実を故意に告げることなく,自ら売主として宅地建物取引業者でないCに売却した。」 |
【正解:違反する】 ◆自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限 宅建業者は,自ら売主として,自己の所有に属しない物件(他人物)を,宅建業者でない者と売買契約を締結することは,原則として,禁止されています。 ただし,所有者と売買契約〔売買の予約契約でもよい〕を締結していれば,自ら売主として,宅建業者でない者と売買契約を締結できますが,所有者との売買契約が停止条件付であるときには,宅建業者でない者と売買契約を締結することはできません(宅建業法33条の2第1項第1号)。 本肢は,宅建業法に違反します。 |
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