宅建業法 実戦篇

自ら売主の制限・媒介契約の過去問アーカイブス 平成8年・問48 

媒介契約の期間・自ら売主制限は宅建業者間の取引には適用されない(瑕疵担保責任の特約の制限・損害賠償額の予定の制限)


宅地建物取引業者でないが,所有のマンションをの媒介によりに売却し,その後に転売した場合の特約に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定によれば,正しいものはどれか。なお,及びは,宅地建物取引業者であるものとする。(平成8年・問48)

1.「AB間において専任媒介契約を締結した場合において,『有効期間は1年とする』 旨の特約は無効であり,有効期間の定めのない契約とみなされる。」

2.「AC間及びCD間のそれぞれの売買契約において,『瑕疵担保責任の期間をマンション引渡しの日から1年とする』 旨の特約をしても,その特約は,CD間では有効であるが,AC間では無効である。」

3.「AC間及びCD間のそれぞれの売買契約において,『違約金の額を代金の額の3割とする』 旨の特約をしても,その特約は,それぞれ代金の額の2割を超える部分については無効である。」

4.「AC間及びCD間のそれぞれの売買契約において,『契約締結日から5日間に限り損害賠償又は違約金の支払いをすることなく契約を解除することができる』 旨の特約をしても,宅地建物取引業法に違反しない。」

【正解】

× × ×

●自ら売主の8種制限は,宅建業者間の取引,売主が宅建業者でない取引には適用されない

 (宅建業者ではない)――― (宅建業者) ―― D (宅建業者)
               ↑
             の媒介

1.「AB間において専任媒介契約を締結した場合において,『有効期間は1年とする』 旨の特約は無効であり,有効期間の定めのない契約とみなされる。」

【正解:×

◆専任媒介,専属専任媒介では3月を超えることができない

 専任媒介契約,専属専任媒介契約では,有効期間は3ヵ月を超えることはできず,3ヵ月より長い期間を定めたとしても,有効期間は3ヵ月とされます(宅建業法34条3項)。⇒ 3ヵ月を超える部分は無効。

 本肢の場合,有効期間の1年は3ヵ月に短縮されるのであって,<有効期間の定めのない契約>になるのではないので,本肢は誤りです。

2.「AC間及びCD間のそれぞれの売買契約において,『瑕疵担保責任の期間をマンション引渡しの日から1年とする』 旨の特約をしても,その特約は,CD間では有効であるが,AC間では無効である。」

【正解:×

◆瑕疵担保責任の特約の制限−宅建業者相互間の取引には適用されない

  (宅建業者ではない)――― (宅建業者) ―― D (宅建業者)
               ↑
             の媒介

 瑕疵担保責任の特約の制限は,宅建業者が自ら売主となり,宅建業者ではない者に対して売買契約を締結する場合に適用されるのであって,

 宅建業者間相互の取引の場合(CD間)や売主が宅建業者ではない場合(AC間)には適用されません。

 したがって,『瑕疵担保責任の期間を引渡しの日から1年とする』 旨の特約はCD間,AC間とも有効です。

【民法での瑕疵担保責任】

 宅建業法では,<宅建業者ではない者が自ら売主として宅建業者ではない者との売買契約締結>,<宅建業者間の売買契約締結>,この二つのケースでは,瑕疵担保責任の特約について特に制限はしていません。これらの場合には,民法の規定に従うことになります(宅建業法では,この二つのケースでは,民法の規定より買主に不利な特約は禁止されてはいないからです)

 民法での瑕疵担保責任は,買主が瑕疵について善意無過失で,瑕疵を発見してから1年以内であれば(ただし,判例では引渡しから10年以内であることが必要),買主は瑕疵担保責任を追及することができます。

 しかし,この規定は,民法では任意規定なので,特約で排除することができます。このため,と(また,も)瑕疵担保責任について「引渡しの日から1年とする 旨の特約」をすることができるのです。

3.「AC間及びCD間のそれぞれの売買契約において,『違約金の額を代金の額の3割とする』 旨の特約をしても,その特約は,それぞれ代金の額の2割を超える部分については無効である。」

【正解:×

◆損害賠償額の予定等の制限−宅建業者相互間の取引には適用されない

  (宅建業者ではない)――― (宅建業者) ―― D (宅建業者)
               ↑
             の媒介

 損害賠償額の予定等の制限〔損害賠償の予定額及び違約金の合計は代金の20%を超えることができない〕は,宅建業者が自ら売主となり,宅建業者ではない者に対して売買契約を締結する場合に適用されるのであって,

 宅建業者間相互の取引の場合(CD間)や売主が宅建業者ではない場合(AC間)には適用されません。

 したがって,『違約金の額を代金の額の3割とする』 旨の特約はCD間,AC間とも有効です。

4.「AC間及びCD間のそれぞれの売買契約において,『契約締結日から5日間に限り損害賠償又は違約金の支払いをすることなく契約を解除することができる』 旨の特約をしても,宅地建物取引業法に違反しない。」

【正解:

◆損害賠償額の予定等の制限−宅建業者相互間の取引には適用されない

  (宅建業者ではない)――― (宅建業者) ―― D (宅建業者)
               ↑
             の媒介

 本肢から連想されるのは,クーリングオフの規定です。

 クーリングオフ〔買主は,書面によりクーリングオフができる旨を説明された日から8日間は損害賠償や違約金の支払をすることなく契約を解除できる〕は,宅建業者が自ら売主となり,宅建業者ではない者に対して売買契約を締結する場合に適用されるのであって,

 宅建業者間相互の取引の場合(CD間)や売主が宅建業者ではない場合(AC間)には適用されません。

 したがって,『契約締結日から5日間に限り損害賠償又は違約金の支払いをすることなく契約を解除することができる』 旨の特約はCD間,AC間とも有効です。


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