宅建業法 実戦篇
クーリングオフの過去問アーカイブス 平成8年・問49
債務不履行による解除・手付放棄による解除・
宅地建物取引業者Aが,宅地建物取引業者でないBからBの自宅近くの喫茶店で宅地の買受けの申込みを受け,自ら売主としてBと宅地の売買契約 (手付あり) を締結した場合に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法及び民法の規定によれば,誤っているものはどれか。(平成8年・問49) |
1.「AがBに宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づき契約を解除できる旨告げなかった場合でも,Bは,宅地の引渡しを受け,かつ,代金の全部を支払った後は,同条の規定により契約を解除することはできない。」 |
2.「AがBに宅地建物取引業法第37条の2の規定により契約を解除できる旨告げた場合で,同条の規定に基づき解除できる期間を経過したとき,Bは,Aに債務不履行があったとしても,不履行を理由に契約を解除することはできない。」 |
3.「手付の放棄により契約を解除できる旨の特約がない場合でも,Bは,Aが契約の履行に着手するまでは手付を放棄して契約を解除することができる。」 |
4.「宅地の引渡しがあるまでは,いつでも手付の放棄により契約を解除できる旨の特約がある場合,Bは,Aが契約の履行に着手していたとしても,手付を放棄して契約を解除することができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
1.「AがBに宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づき契約を解除できる旨告げなかった場合でも,Bは,宅地の引渡しを受け,かつ,代金の全部を支払った後は,同条の規定により契約を解除することはできない。」 |
【正解:○】 ◆引渡しを受け,かつ,代金の全部を支払うと,クーリングオフによる解除はできない 引渡しを受け,かつ,代金の全部を支払った後は売主の履行が終了するため,クーリングオフの規定は適用されないので,買主はクーリングオフの規定による解除をすることはできません(宅建業法37条の2第1項第2号)。 しかし,売主の債務不履行による解除や手附による解除をすることはできます。 ▼クーリングオフの規定により契約を解除できる旨を説明しなかった場合は,起算日が定まらないので,期間に関係なくいつでもクーリングオフの規定による契約解除をすることができますが,これはそもそもクーリングオフの規定が適用される場合のことですから,本肢のように,クーリングオフの規定が適用されない場合と混同してはいけません。
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2.「AがBに宅地建物取引業法第37条の2の規定により契約を解除できる旨告げた場合で,同条の規定に基づき解除できる期間を経過したとき,Bは,Aに債務不履行があったとしても,不履行を理由に契約を解除することはできない。」 |
【正解:×】 ◆クーリングオフの規定による解除と債務不履行による解除とは別の次元 申込場所等がクーリングオフの適用がある場合であっても,宅建業者が書面を交付してクーリングオフにより解除できる旨を説明した日から起算して8日を過ぎると,買主はクーリングオフによる解除をすることができなくなります(宅建業法37条の2第1項第1号)。 しかし,クーリングオフの規定と,売主の債務不履行による解除や手附による解除は別の次元のことなので,クーリングオフの規定による解除ができなくても,債務不履行による解除をすることはできます。 <クーリングオフの規定による契約解除ができる期間が経過すると,債務不履行を理由に契約を解除することはできなくなる。>とする本肢は誤りです。 |
3.「手付の放棄により契約を解除できる旨の特約がない場合でも,Bは,Aが契約の履行に着手するまでは手付を放棄して契約を解除することができる。」 |
【正解:○】 ◆解約手付 宅建業者が,自ら売主として,宅建業者ではない者と売買契約を締結する際に受領する手附は,その性質がいかなるものであっても,本肢のように手付による解除の特約がない場合であっても,その手付は解約手付の性質をもち, 当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主はその手附を放棄して,当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して,契約の解除をすることができます(宅建業法39条2項)。 |
4.「宅地の引渡しがあるまでは,いつでも手付の放棄により契約を解除できる旨の特約がある場合,Bは,Aが契約の履行に着手していたとしても,手付を放棄して契約を解除することができる。」 |
【正解:○】 ◆買主に有利な特約は有効 手付による解除についての特約で,宅建業法の規定【肢2参照】よりも買主に不利なものは無効です(宅建業法39条3項)。 本肢の特約は,<宅地の引渡しがあるまでは,いつでも手付の放棄により契約を解除できる>ので,宅建業補の規定よりも買主に有利な特約であり,有効です。 したがって,買主のBは,Aが契約の履行に着手していたとしても,宅地の引渡しがあるまでは,いつでも手付を放棄して契約を解除することができます。 |
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