宅建業法 実戦篇
営業保証金の過去問アーカイブス 平成9年・問34
宅地建物取引業者A(甲県知事免許)が,甲県内に本店と支店a を設置して営業しようとし,又は営業している場合の営業保証金に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定によれば,誤っているものはどれか。 (平成9年・問34) |
1.「Aが,甲県知事から営業保証金の供託の届出をすべき旨の催告を受けたにもかかわらず,その催告が到達した日から1月以内に届出をしない場合,Aは,実際に供託をしていても,免許の取消処分を受けることがある。」 |
2.「Aと支店a で宅地建物取引業に関する取引をした者は,その支店a における取引により生じた債権に関し, 500万円を限度として,Aの供託した営業保証金の還付を請求することができる。」 |
3.「Aが,新たに甲県内に支店b を設置したが,同時に従来の支店a を廃止したため,事務所数に変更を生じない場合,Aは,新たに営業保証金を供託する必要はない」 |
4.「Aが支店a を廃止し,営業保証金の額が政令で定める額を超えた場合において,Aは,その超過額について,還付請求権者に対し所定の期間内に申し出るべき旨の公告をし,その期間内に申出がないとき,当該超過額を取り戻すことができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○の設定 | ○ |
1.「Aが,甲県知事から営業保証金の供託の届出をすべき旨の催告を受けたにもかかわらず,その催告が到達した日から1月以内に届出をしない場合,Aは,実際に供託をしていても,免許の取消処分を受けることがある。」 |
【正解:○】 ◆催告の通知が届いてから1ヵ月以内に供託した旨の届出がないとき 国土交通大臣又は都道府県知事は,免許をした日から3ヵ月以内に宅建業者が供託をした旨の届出をしないときは,その届出をすべき旨の催告をしなければなりません(宅建業法25条6項)。 国土交通大臣又は都道府県知事は,この催告が到達した日から1ヵ月以内に宅建業者が供託した旨の届出をしないときは,その免許を取り消すことができます(宅建業法25条7項) 。 出題者は,これらの規定から,実際に供託をしていても,免許の取消処分を受けることがあり得る,と考えたと思われます。
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2.「Aと支店a で宅地建物取引業に関する取引をした者は,その支店a における取引により生じた債権に関し, 500万円を限度として,Aの供託した営業保証金の還付を請求することができる。」 |
【正解:×】
Aと宅建業に関して取引をした者が還付を請求できるのは, Aが供託した営業保証金1,500万円の範囲内です。支店a についての営業保証金を限度とするのではません。 本肢は誤りです。
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3.「Aが,新たに甲県内に支店b を設置したが,同時に従来の支店a を廃止したため,事務所数に変更を生じない場合,Aは,新たに営業保証金を供託する必要はない」 |
【正解:○の設定】肢2が明らかに誤りなので,肢3は○として設定したはずです。 ◆新しく支店を設置するとともに,従来の支店を廃止したとき 廃止した支店があったために営業保証金に超過額が生じたときは,一定期間内に申し出るべき旨の公告をして,還付請求権者からの申出がなかった場合に取戻しができることになっています(宅建業法30条1項,2項)。 この規定から本肢を考えると,廃止と同時に新たに支店を開設する時点では,廃止する支店aで宅建業に関して取引があった者の中に,還付請求権者がいるかいないかまだ確定していないために,従来の支店についての営業保証金500万円とは別に,新たな支店bについての営業保証金を供託する必要があるのではないかとの見方も成り立ちます。⇒ この件について問い合わせたときに,国土交通省の地方整備局等でこのように説明を受けたとする報告があります。 しかしながら,<新たに従たる事務所を新設すると同時に,同数の従たる事務所を廃止して事務所数に変更を生じないならば,供託すべき営業保証金の額も従来の営業保証金1,500万円のままでよいのではないか>とする考え方があることから,本肢は○に設定したものと思われます。 ▼本肢は<超過額が生じたとき>について判断が分れる可能性がある問題ですが,この後平成16年にも類似の議論を呼ぶ問題がありました。 |
4.「Aが支店a を廃止し,営業保証金の額が政令で定める額を超えた場合において,Aは,その超過額について,還付請求権者に対し所定の期間内に申し出るべき旨の公告をし,その期間内に申出がないとき,当該超過額を取り戻すことができる。」 |
【正解:○】 ◆超過額について取り戻しをするための公告 Aが支店a を廃止すると,供託すべき営業保証金は,従来の<主たる事務所1,000万円,従たる事務所一箇所の500万円,合計1,500万円>から,<主たる事務所のみのため1,000万円>になり,供託している営業保証金の額1,500万円は政令で定める供託すべき額1,000万円を超えることになります(宅建業法30条1項,2項)。 この場合,Aは,還付請求権者に対し所定の期間内に申し出るべき旨の公告をし,その期間内に申出がないとき,当該超過額を取り戻すことができます。 |
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