宅建業法 実戦篇
自ら売主の制限の過去問アーカイブス 平成11年・問33
手付解除・瑕疵担保責任・損害賠償額の予定等の制限
宅地建物取引業者Aが,自ら売主として,宅地建物取引業者でない買主Bと締結した宅地の売買契約 (代金4,000万円,手付金400万円) に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法及び民法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成11年・問33) |
1.「契約に 「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,Bは手付金400万円を放棄して,Aは1,000万円を償還して,契約を解除することができる」 旨定めた場合,その定めは無効である。」 |
2.「契約に 「Aが瑕疵担保責任を負う場合,Bは,損害賠償の請求をすることができるが,契約の解除ができるのは瑕疵により契約をした目的を達成できないときに限る」 旨定めた場合,その定めは無効である。」 |
3.「契約に 「Aは,宅地の引渡しの日から2年間瑕疵担保責任を負うが,Bが知っていた瑕疵についてはその責任を負わない」 旨定めた場合,その定めは無効である。」 |
4.「契約に 「債務不履行による契約の解除に伴う損害賠償額の予定及び違約金の合計額を代金の額の3割とする」 旨定めた場合,その定めは,当該合計額につき800万円を超える部分については,無効である。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「契約に 「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,Bは手付金400万円を放棄して,Aは1,000万円を償還して,契約を解除することができる」 旨定めた場合,その定めは無効である。」 |
【正解:×】 ◆解約手附 宅建業者が,自ら売主として,宅建業者でない者と宅地又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは,その手附がいかなる性質のものであつても,当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主はその手附を放棄して,当該宅建業者はその倍額を償還して,契約の解除をすることができます。 この規定に反する特約で買主に不利なものは、無効です(宅建業法39条2項,3項)。 しかし,買主に有利な特約は有効ですから,買主に有利な本肢は誤りです。⇒ 宅建業者が解除するときは手付金400万円の倍額を超える1,000万円の償還になっているので,買主に有利な特約です。
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2.「契約に 「Aが瑕疵担保責任を負う場合,Bは,損害賠償の請求をすることができるが,契約の解除ができるのは瑕疵により契約をした目的を達成できないときに限る」 旨定めた場合,その定めは無効である。」 |
【正解:×】 ◆瑕疵担保責任の特約の制限 民法では,買主は瑕疵について善意無過失ならば,損害賠償の請求をすることができ,かつ,瑕疵のために契約の目的を達成できないときは契約の解除をすることができるとしています(民法570条,566条1項,売主は無過失でも責任を負う。)。 民法では,瑕疵担保責任は任意規定のため,当事者間で民法の規定と異なる特約をすることができるはずですが,宅建業法では,一般の消費者〔宅建業者ではない買主〕を保護するため,宅建業者が自ら売主で,宅建業者ではない者が買主となる場合は,民法の瑕疵担保責任の規定よりも買主に不利な特約は無効としました(宅建業法40条1項,2項)。→ただし,権利行使期間を引渡しの日から2年以上とする特約については例外的に認められています。 本肢の特約は<買主は,損害賠償の請求をすることができるが,契約の解除ができるのは瑕疵により契約をした目的を達成できないときに限る>として民法の規定と同じなので,買主に不利とはいえないため,有効です。「この特約は無効」とする本肢は誤りです。 |
3.「契約に 「Aは,宅地の引渡しの日から2年間瑕疵担保責任を負うが,Bが知っていた瑕疵についてはその責任を負わない」 旨定めた場合,その定めは無効である。」 |
【正解:×】 ◆瑕疵担保責任は善意無過失の買主しか追及できない 前半部の「権利行使期間を引渡しの日から2年間」とするのは,宅建業法でも認められていますた(宅建業法40条1項)。 民法の規定では,「瑕疵担保責任は瑕疵について善意無過失の買主しか追及できない」とされています(民法570条,566条1項)。このため,特約の後半部分「買主が瑕疵を知っていた場合責任を負わない」は民法の規定よりも買主に不利な特約とはいえません。 したがって,本肢の特約は有効であり,無効とする本肢は誤りです。 |
4.「契約に 「債務不履行による契約の解除に伴う損害賠償額の予定及び違約金の合計額を代金の額の3割とする」 旨定めた場合,その定めは,当該合計額につき800万円を超える部分については,無効である。」 |
【正解:○】 ◆損害賠償額の予定等の制限 宅建業者が自ら売主として宅建業者ではない者との宅地又は建物の売買契約において,当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し,又は違約金を定めるときは,これらを合算した額が代金の額の20%を超える定めをすることはできません。 この規定に反する特約をした場合は,代金の額の20%を超える部分について無効となります(宅建業法38条1項,2項)。 したがって,「損害賠償額の予定及び違約金の合計額を代金の額の3割とする」特約は,代金の額の20%である800万円を超える部分について無効になるので,本肢は正しい記述です。 |
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