宅建業法 実戦篇

営業保証金の過去問アーカイブス 平成11年・問38 

有価証券の評価額・不足額の供託・還付を受けることができる者・二重供託


宅地建物取引業者 (甲県知事免許) の営業保証金に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成11年・問38)

1.「が有価証券を営業保証金に充てるときは,国債証券についてはその額面金額を,地方債証券又はそれら以外の債券についてはその額面金額の百分の九十を有価証券の価額としなければならない」

2.「は,取引の相手方の権利の実行により営業保証金の額が政令で定める額に不足することとなったときは,甲県知事から不足額を供託すべき旨の通知書の送付を受けた日から2週間以内にその不足額を供託しなければならない。」

3.「が販売する宅地建物についての販売広告を受託した者は,その広告代金債権に関し,が供託した営業保証金について弁済を受ける権利を有する。」

4.「が,営業保証金を金銭と有価証券で供託している場合で,本店を移転したためもよりの供託所が変更したとき,は,金銭の部分に限り,移転後の本店のもよりの供託所への営業保証金の保管替えを請求することができる。」

【正解】

× × ×

1.「が有価証券を営業保証金に充てるときは,国債証券についてはその額面金額を,地方債証券又はそれら以外の債券についてはその額面金額の百分の九十を有価証券の価額としなければならない」

【正解:×

有価証券での供託

 営業保証金や保証協会の弁済業務保証金は,国債証券,地方債証券その他の国土交通省令で定める有価証券(振替社債等を含む。国土交通省令では31種類の有価証券が指定されている。)で供託することができます(宅建業法・25条3項,64条の7・第3項,施行規則・15条の2・第1項)

 ただし,有価証券の価額は,額面全額をそのまま評価するのではなく,以下の有価証券の区分に従い,定めるところによります(施行規則・15条・1項)

 国債証券  その額面金額
 地方債証券 又は
 政府がその債務について保証契約をした債券
 その額面金額の90%
 上記以外の債券  その額面金額の80%

 本肢では,地方債証券それら以外の債券 の2つとも,評価額を,額面金額の百分の九十としているので,誤りです。

本肢のそれら以外の証券には,「政府がその債務について保証契約をした債券」〔評価額90%〕も含まれますが,同時に,「国債証券」・「地方債証券」・「政府がその債務について保証契約をした債券」のいずれでもない債権【表中の "上記以外の債権"】〔評価額80%〕も含まれるので,誤りになります。

2.「は,取引の相手方の権利の実行により営業保証金の額が政令で定める額に不足することとなったときは,甲県知事から不足額を供託すべき旨の通知書の送付を受けた日から2週間以内にその不足額を供託しなければならない。」

【正解:

◆不足額の供託

 営業保証金が還付されたことにより,営業保証金に不足額が生じたときは,免許権者から通知書の送付を受けた日から2週間以内にその不足額を供託しなければなりません(宅建業法・28条1項)

 2週間以内に不足額を供託しないときは,業務停止処分の対象になります(宅建業法・65条2項2号)

不足額を供託したときは,2週間以内に,その旨を免許権者に届け出なければなりません(宅建業法・28条2項)⇒ 罰則はない

3.「が販売する宅地建物についての販売広告を受託した者は,その広告代金債権に関し,が供託した営業保証金について弁済を受ける権利を有する。」

【正解:×

◆広告代金債権では,営業保証金の還付を受けることはできない

 営業保証金について弁済を受ける権利を有するのは,宅建業者と宅建業に関して取引をして生じた債権を有する者です(宅建業法・27条1項)。 ⇒ 【売買・交換(その媒介・代理),貸借の媒介代理】について生じた債権のみ,還付を受けられる。

 広告代金債権は,宅建業に関して取引をして生じた債権ではないので,営業保証金の還付を受けることはできません。

4.「が,営業保証金を金銭と有価証券で供託している場合で,本店を移転したためもよりの供託所が変更したとき,は,金銭の部分に限り,移転後の本店のもよりの供託所への営業保証金の保管替えを請求することができる。」

【正解:×

◆二重供託

× 金銭の部分に限り,移転後の本店のもよりの供託所への営業保証金の保管替えを請求することができる。

 保管替えを請求できるのは,金銭のみをもって営業保証金を供託している場合です(宅建業法・29条)金銭と有価証券で供託しているときは,金銭のみの部分であっても保管換えの請求はできないので,本肢は誤りです。

 営業保証金を金銭と有価証券で供託している場合に,本店を移転したためもよりの供託所が変更したときは,

 遅滞なく,営業保証金を移転後の主たる事務所の最寄りの供託所に新たに供託しなければなりません。

 一時的に,二重に供託することになるので,二重供託と呼ばれることがあります。なお,本店を移転する前に供託していた営業保証金については,公告をすることなく,取り戻すことができます


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