宅建業法 実戦篇

業務上の規制の過去問アーカイブス 平成11年・問42 

報酬額の限度・信用の供与による契約締結誘引の禁止・重要な事項の不告知の禁止・


宅地建物取引業者が,宅地の所有者の依頼を受けてBC間の宅地の売買の媒介を行おうとし,又は行った場合に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法第47条(業務に関する禁止事項)の規定に違反しないものはどれか。(平成11年・問42)

1.「は,との媒介契約の締結に当たり不当に高額の報酬を要求したが,BC間の売買契約が成立した後に実際にから受領した報酬額は,国土交通大臣が定めた報酬額の限度内であった。」

2.「は,に対し手付を貸し付けるという条件で,BC間の売買契約の締結を誘引したが,は,その契約の締結に応じなかった。」

3.「は,当該宅地に対抗力のある借地権を有する第三者が存在することを知っていたが,当該借地権は登記されていなかったので,に対して告げることなく,BC間の売買契約を締結させた。」

4.「は,及びに対し,手付金について当初が提示した金額より減額するという条件でBC間の売買契約の締結を誘引し,その契約を締結させた。」

【正解】

違反する 違反する 違反する 違反しない

1.「は,との媒介契約の締結に当たり不当に高額の報酬を要求したが,BC間の売買契約が成立した後に実際にから受領した報酬額は,国土交通大臣が定めた報酬額の限度内であった。」

【正解:違反する

◆不当に高額の報酬を要求する行為の禁止

 「不当に高額の報酬を要求する行為」は,業務に関する禁止事項として禁止されています(宅建業法47条2号)

 実際に受領した報酬額が国土交通大臣が定めた報酬額の限度内であったとしても,不当に高額の報酬を要求すること自体が禁止されているので,宅建業法に違反します。

2.「は,に対し手付を貸し付けるという条件で,BC間の売買契約の締結を誘引したが,は,その契約の締結に応じなかった。」

【正解:違反する

◆手附についての信用の供与の禁止

  「手附について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為」は,業務に関する禁止事項として禁止されています(宅建業法47条3号)

 結果的に,相手方等が契約の締結に応じなかったとしても,手附について貸付けその他信用の供与をすることによって契約の締結を誘引する行為自体が禁止されているので,宅建業法に違反します。

3.「は,当該宅地に対抗力のある借地権を有する第三者が存在することを知っていたが,当該借地権は登記されていなかったので,に対して告げることなく,BC間の売買契約を締結させた。」

【正解:違反する

◆重要事項の不告知の禁止

 「重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」は,業務に関する禁止事項として禁止されています(宅建業法47条1号)

 登記されていなかったとしても,対抗力のある借地権を有する第三者が存在することを知っていたのに告げなかったことは,重要な事項について,故意に事実を告げなかったことに該当し,宅建業法に違反します。

●監督処分と罰則
   監督処分  罰則
 重要事項の不告知・
 不実な告知
業務停止

(情状が特に重いときは免許取消し)

2年以下の懲役もしくは
300万円以下の罰金,
または併科
 不当に高額の
 報酬の要求
業務停止

(情状が特に重いときは免許取消し)

1年以下の懲役もしくは
100万円以下の罰金,
または併科
 手形貸与による
 信用の供与
業務停止

(情状が特に重いときは免許取消し)

6月以下の懲役もしくは
100万円以下の罰金,
または併科

●業務に関する禁止事項
(業務に関する禁止事項)
第47条
 宅地建物取引業者は,その業務に関して,宅地建物取引業者の相手方等に対し,次に掲げる行為をしてはならない。

1号 宅地若しくは建物の売買,交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し,又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため,次のいずれかに該当する事項について,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為

イ 第35条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項
ロ 第35条の2各号に掲げる事項 (供託所等に関する説明)
ハ 第37条第1項各号又は第2項各号(第1号を除く。)に掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか,宅地若しくは建物の所在,規模,形質,現在若しくは将来の利用の制限,環境,交通等の利便,代金,借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であって,宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの

4.「は,及びに対し,手付金について当初が提示した金額より減額するという条件でBC間の売買契約の締結を誘引し,その契約を締結させた。」

【正解:違反しない

◆手付金の減額

 手付金を減額して,売買契約の締結を誘引するのは,「手附について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為」には該当しないと考えられ,宅建業法には違反しません。

 何が信用の供与に該当するかについては,「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(国土交通省) でいくつか例示されています。⇒ 下の表でのついているもの。

 手附についての信用の供与に該当する  ・手付金を立て替える。

 ・手付金を貸し付ける。

 ・手付金を分割受領する。

 ・手附として約束手形を受領する。

 ・手附予約をした場合に,宅建業者が
  その予約債務について保証行為等を
  する。

 手附についての信用の供与に該当しない  ・手付金を減額する。

 ・手付金に関して,銀行との間で
  金銭の貸借のあっせんをする。


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