宅建業法 実戦篇

業務上の規制の過去問アーカイブス 平成12年・問35 重要事項の不告知・

報酬額の制限・預り金の返還拒否の禁止・信用の供与による契約締結誘引の禁止


宅地建物取引業者Aが,その業務を行う場合に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定に違反しないものはどれか。(平成12年・問35)

1.「が,建物の貸借の媒介をするに当たり,当該建物の近隣にゴミの集積場所を設置する計画がある場合で,それを借主が知らないと重大な不利益を被るおそれがあるときに,は,その計画について故意に借主に対し告げなかった。」

2.「は,建物の売買の媒介をするに当たり,建物の売主から特別の依頼を受けて広告をし,当該建物の売買契約が成立したので,国土交通大臣が定めた報酬限度額の報酬のほかに,その広告に要した実費を超える料金を受領した。」

3.「が,建物の貸借の媒介をするに当たり,借受けの申込みをした者から預り金の名義で金銭を授受した場合で,後日その申込みが撤回されたときに,は,「預り金は,手付金として既に家主に交付した」といって返還を拒んだ。」

4.「は,建物の売買の媒介をするに当たり,買主が手付金を支払えなかったので,手付金に関し銀行との間の金銭の貸借のあっせんをして,当該建物の売買契約を締結させた。」

【正解】

違反する 違反する 違反する 違反しない

1.「が,建物の貸借の媒介をするに当たり,当該建物の近隣にゴミの集積場所を設置する計画がある場合で,それを借主が知らないと重大な不利益を被るおそれがあるときに,は,その計画について故意に借主に対し告げなかった。」

【正解:違反する

◆重要な事項について故意に事実を告げないことは禁止されている

 宅建業者は,その業務に関して,相手方等に対し,<重要な事項について,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為>は禁止されています(宅建業法47条1号)

 近隣にゴミの集積場所を設置する計画があり,借主が知らないと重大な不利益を被るおそれがある場合に,それを故意に告げないことは,宅建業法に違反します。

●47条1号の重要な事項とは?

 35条の重要事項〔故意・過失とも説明しなかったときは違反する〕は宅建業法で細かく規定されていますが,47条1号二の重要な事項は抽象的な規定になっています。

 しかし,47条1号二の重要な事項とは,『取引の関係者に重大な不利益をもたらすおそれのあるもの,知っていたら取引はしなかったであろうと考えられるもの』を意味すると解釈されています。⇒ したがって,35条の重要事項に該当しなくても,47条1号には該当するということが起こります。

 47条1号では,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為が禁止され,違反すると,業務停止処分の対象〔情状が重いときは免許取消〕になっています。

 では,調査義務を怠っていたために宅建業者も知らなかったような場合はどうでしょうか?
 その場合は,故意の要件を満たさないため47条1号に該当しなくても,宅建業に関して著しく不当な行為をしたとして,業務停止処分の対象になります(宅建業法65条2項5号)

●業務に関する禁止事項
(業務に関する禁止事項)
第47条
 宅地建物取引業者は,その業務に関して,宅地建物取引業者の相手方等に対し,次に掲げる行為をしてはならない。

1号 宅地若しくは建物の売買,交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し,又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため,次のいずれかに該当する事項について,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為

イ 第35条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項
ロ 第35条の2各号に掲げる事項 (供託所等に関する説明)
ハ 第37条第1項各号又は第2項各号(第1号を除く。)に掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか,宅地若しくは建物の所在,規模,形質,現在若しくは将来の利用の制限,環境,交通等の利便,代金,借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であって,宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの

2.「は,建物の売買の媒介をするに当たり,建物の売主から特別の依頼を受けて広告をし,当該建物の売買契約が成立したので,国土交通大臣が定めた報酬限度額の報酬のほかに,その広告に要した実費を超える料金を受領した。」

【正解:違反する

◆広告に要した実費を超える金銭を受領

 依頼主から特別の依頼を受けて広告をした場合は,契約が成立しなくても,広告料金に相当する額を受領することができますが(平成16.2.18,国土交通省告示第100号)

 広告に要した実費を超える金銭を請求し受領することは,宅建業法に違反します。

3.「が,建物の貸借の媒介をするに当たり,借受けの申込みをした者から預り金の名義で金銭を授受した場合で,後日その申込みが撤回されたときに,は,「預り金は,手付金として既に家主に交付した」といって返還を拒んだ。」

【正解:違反する

◆預り金の返還を拒むこと

 <相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し,既に受領した預り金を返還することを拒むこと。>(施行規則16条の12第2号)

 <相手方等が手付を放棄して契約の解除を行うに際し,正当な理由なく,当該契約の解除を拒み,又は妨げること。 >(施行規則16条の12第3号)

 この2つは,『契約の締結に関する行為又は申込みの撤回若しくは解除の妨げに関する行為であって,相手方等の保護に欠けるもの』として国土交通省令で禁止されているものです(宅建業法47条の2第3項,施行規則16条の12第2号,第3号)

 本肢は,預り金の名目で授受のあった金銭の返還を拒んでいるので,宅建業法に違反します(施行規則16条の12第2号)

4.「は,建物の売買の媒介をするに当たり,買主が手付金を支払えなかったので,手付金に関し銀行との間の金銭の貸借のあっせんをして,当該建物の売買契約を締結させた。」

【正解:違反しない

◆手付金について,銀行との金銭貸借のあっせんをすること

 『手付金について,銀行との間の金銭の貸借のあっせんをすること』は,<手附について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為>には該当しないため,宅建業法には違反しません。


宅建業法の過去問アーカイブスに戻る  

1000本ノック・宅建業法編・本編のトップに戻る  Brush Up! 業務上の規制に戻る

宅建過去問に戻る