宅建業法 実戦篇
自ら売主の制限の過去問アーカイブス 平成12年・問40
宅地建物取引業者Aが,自ら売主として,宅地建物取引業者でないBと中古の土地付建物の売買契約 (代金5,000万円,手付金1,000万円) を締結する場合に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法及び民法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成12年・問40) |
1.「Aが,瑕疵担保責任を負うべき期間について,その土地付建物の引渡しの時から1年間とする旨の特約をした場合は,その期間は,Bが瑕疵の事実を知った時から1年間となる。」 |
2.「Aは,手付金のうち代金の10分の1を超える部分について宅地建物取引業法第41条の2に規定する手付金等の保全措置を講じた場合は,手付金全額を受領することができる。」 |
3.「Aは,Bの要求があった場合は,契約の締結を誘引するためBの手付金の支払いについて分割払とすることができる。」 |
4.「AB間で,手付金を違約手付とする旨の特約を定めた場合においても,別途Bの債務不履行による契約解除に伴う損害賠償の予定額を定めることができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
1.「Aが,瑕疵担保責任を負うべき期間について,その土地付建物の引渡しの時から1年間とする旨の特約をした場合は,その期間は,Bが瑕疵の事実を知った時から1年間となる。」 |
【正解:○】 ◆瑕疵担保責任 : 引渡しから2年未満 ⇒ 自動的に,知ったときから1年になる 宅建業者が自ら売主として,宅建業者でない者と売買契約を締結した際に,瑕疵担保責任を負う期間を引渡しから2年以上とすることは認められていますが,これより買主に不利な特約をしたときはその特約は無効になり,民法の原則に立ち戻って,買主が知ったときから1年間になります(宅建業法40条,民法570条,566条)。 |
2.「Aは,手付金のうち代金の10分の1を超える部分について宅地建物取引業法第41条の2に規定する手付金等の保全措置を講じた場合は,手付金全額を受領することができる。」 |
【正解:×】 ◆保全措置を講じるのは受領した全額 完成物件の場合に,原則として,手付金等保全措置を講じなければならないのは,代金の10%超,または,1,000万円超のときですが(宅建業法41条の2第1項),保全措置を講じるのはそれまでに名目を問わず受領した金銭の全額なので,代金の10%超(500万円超の部分)についてのみ講じるのではありません。 ●補足−手付金は20%以内 代金の20%以内であれば手付金として受領できるので(宅建業法39条1項),受領する額が1,000万円以内であれば,手付金として受領できます。 |
3.「Aは,Bの要求があった場合は,契約の締結を誘引するためBの手付金の支払いについて分割払とすることができる。」 |
【正解:×】 ◆手附についての信用の供与の禁止 「手附について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為」は,業務に関する禁止事項として禁止されています(宅建業法47条3号)。 買主から要求があったとしても,「手附を分割受領することは,<手附について貸付その他の信用の供与>に該当する」とされているため, 手付金の支払いについて分割払とすることはできません(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方,国土交通省)。 |
4.「AB間で,手付金を違約手付とする旨の特約を定めた場合においても,別途Bの債務不履行による契約解除に伴う損害賠償の予定額を定めることができる。」 |
【正解:×】 ◆損害賠償額の予定等の制限 宅建業者は,自ら売主として,宅建業者ではない者と宅地又は建物の売買契約を締結する場合に,『当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額』と『違約金』を合算した額が代金の額の20%を超える定めをすることはできません。これに反する特約をしても,代金の額の20%を超える部分については無効になります(宅建業法38条)。 本肢の場合,違約手付とする金額1,000万円は代金の額の20%なので,このほかに別途,損害賠償の予定額を定めることはできません。 したがって,本肢は誤りです。
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