宅建業法 実戦篇
宅建業者の過去問アーカイブス 平成15年・問35
信託会社・所有権留保の禁止・保証協会・他人物売買の禁止
次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定に違反しないものはどれか。(平成15年・問35) |
1.「 信託会社Aは,国土交通大臣に対し事務所を設置して宅地建物取引業を営む旨の届出をした後,営業保証金の供託又は宅地建物取引業保証協会への加入をせず宅地建物取引業の業務を開始した。」 |
2.「宅地建物取引業者Bは,自ら売主として宅地建物取引業者でないCと4,000万円の宅地の割賦販売の契約を締結し,引渡しを終えた。残代金1,000万円が未払であったため,Cは代金債務を保証する保証人を立てたが,Bは,宅地の所有権の登記をB名義のままにしておいた。 」 |
3.「一の宅地建物取引業保証協会の社員である宅地建物取引業者Dは,自らが取引の相手方に対し損害を与えたときに備え,相手方の損害を確実に補填できるよう,他の宅地建物取引業保証協会に加入した。 」 |
4.「宅地建物取引業者Eは,Fの所有する宅地を取得することを停止条件として,宅地建物取引業者Gとの間で自ら売主として当該宅地の売買契約を締結した。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
違反する | 違反する | 違反する | 違反しない |
1.「 信託会社Aは,国土交通大臣に対し事務所を設置して宅地建物取引業を営む旨の届出をした後,営業保証金の供託又は宅地建物取引業保証協会への加入をせず宅地建物取引業の業務を開始した。」 |
【正解:違反する】 ◆信託会社 信託会社は,宅建業を営もうとするときは,国土交通大臣へその旨を届け出ることによって,国土交通大臣免許業者とみなされ,宅建業法では,免許以外の規定が適用されます(宅建業法77条3項,2項)。 したがって,信託会社も,営業保証金の供託又は保証協会への加入をせずに,宅建業の業務を開始することはできないので,本肢は誤りです。 |
●参考●信託会社,信託業務を兼営する銀行 |
信託会社は,信託業法3条の内閣総理大臣の免許又は同法7条1項の内閣総理大臣の登録を受けた者(管理型信託業)をいう(信託業法2条1項)。 |
「銀行」とは,銀行法4条第1項の内閣総理大臣の免許を受けて銀行業を営む者をいいますが,銀行が信託業務を兼営するには内閣総理大臣の認可を受けなければなりません(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律1条1項)。 |
●供託した旨の届出 |
●宅建業者 −『供託した旨の届出』 宅建業者は,営業保証金を供託したときは,免許権者にその旨を届け出ます。この供託した旨の届出をしなければ,事業を開始することはできません(宅建業法25条4項,5項)。 ●保証協会 −『加入の報告』と『新たに加入した社員に係る供託をした旨の届出』 宅建業者が保証協会の社員になったときは,保証協会が「加入の報告」と「その社員に係る供託をした旨の届出」をその社員の免許権者にします。 保証協会は,新たに社員が加入したときは,直ちに,その旨を当該宅建業者が免許を受けている国土交通大臣または都道府県知事に報告しなければなりません(宅建業法64条の4第2項)。 また,社員になろうとする者から弁済業務保証金分担金の納付を受けて弁済業務保証金を供託したときは,当該供託に係る社員がその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に対して,当該社員に係る供託をした旨を届け出なければなりません(宅建業法64条の7第3項)。 |
2.「宅地建物取引業者Bは,自ら売主として宅地建物取引業者でないCと4,000万円の宅地の割賦販売の契約を締結し,引渡しを終えた。残代金1,000万円が未払であったため,Cは代金債務を保証する保証人を立てたが,Bは,宅地の所有権の登記をB名義のままにしておいた。 」 |
【正解:違反する】 ◆所有権留保等の禁止 宅建業者は,自ら売主として宅建業者ではない者との間で,割賦販売契約を締結した場合は,当該割賦販売に係る宅地又は建物を買主に引き渡すまでに,原則として,登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければなりません(宅建業法43条1項)。 (例外1) 当該宅地又は建物を引き渡すまでに代金の30%を超える額の金銭の支払を受けていないとき。 (例外2) 買主が,所有権の登記をした後の代金債務について,これを担保するための抵当権や不動産売買の先取特権の登記を申請する見込みがないとき,又はこれを保証する保証人を立てる見込みがないとき。 本肢では,買主は,代金の30%を超える額【3,000万円は代金の75%】を支払っており,かつ,残代金1,000万円についても保証人を立てているので,43条1項の規定の適用が除外される上の二つの例外の場合には該当しません。 したがって,本肢は宅建業法に違反します。 |
3.「一の宅地建物取引業保証協会の社員である宅地建物取引業者Dは,自らが取引の相手方に対し損害を与えたときに備え,相手方の損害を確実に補填できるよう,他の宅地建物取引業保証協会に加入した。 」 |
【正解:違反する】 ◆社員は重ねて他の保証協会の社員になることはできない 一の保証協会の社員は,他の保証協会の社員になることはできません(宅建業法64条の4第1項)。 一の保証協会の社員が,他の保証協会の社員になることは,宅建業法に違反します。 |
4.「宅地建物取引業者Eは,Fの所有する宅地を取得することを停止条件として,宅地建物取引業者Gとの間で自ら売主として当該宅地の売買契約を締結した。」 |
【正解:違反しない】 ◆他人物売買の禁止 宅建業者は,自ら売主として,宅建業者ではない物との間で,自己の所有に属しない物件について売買契約を締結することは,原則として,禁止されています。 しかし,買主が宅建業者の場合には,自ら売主の8種制限は適用が除外されているので,本肢は宅建業法に違反しません。 |