宅建業法 実戦篇
広告制限の過去問アーカイブス 平成16年・問36
広告開始時期の制限・取引態様の別の明示・価格の表示・誇大広告等の禁止
宅地建物取引業者Aが行う広告に関する次の記述のうち,宅地建物取引業法によれば,誤っているものはどれか。(平成16年・問36) |
1.「Aは,宅地の売買に係る広告において,当該宅地に関する都市計画法第29条の許可を受けていれば,当該造成工事に係る検査済証の交付を受けていなくても,当該広告を行うことができる。」 |
2.「Aは,未完成の土地付建物の販売依頼を受け,その広告を行うにあたり,当該広告印刷時には取引態様の別が未定であるが,配布時には決定している場合,取引態様の別を明示しない広告を行うことができる。」 |
3.「Aは,土地付建物の売買価格について,建物売買に係る消費税額 (地方消費税額を含む。) を含む土地付建物売買価格のみを表示し,消費税額を明示しない広告を行うことができる。」 |
4.「Aは,賃貸物件の媒介の広告を行うにあたり,実在しない低家賃の物件の広告を出した。Aは業務停止処分を受けることがある。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
1.「Aは,宅地の売買に係る広告において,当該宅地に関する都市計画法第29条の許可を受けていれば,当該造成工事に係る検査済証の交付を受けていなくても,当該広告を行うことができる。」 |
【正解:○】 ◆広告開始時期の制限 開発許可 工事開始 工事完了 検査済証の交付 工事完了の公告 ―――●―――――●―――――●――――●―――――――●―――― 開発許可は開発工事の始まる前の処分であり,検査済証の交付は開発工事完了後であることを,まず,押さえておく必要があります。 宅建業者は,宅地の造成工事完了前は,当該工事に関し必要とされる開発許可その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあつた後でなければ,当該工事に係る宅地の売買その他の業務に関する広告をしてはいけません(宅建業法33条,施行令2条の5)。 しかし,この処分の中には,検査済証の交付は含まれていないので,開発許可を受けていれば,検査済証の交付を受けていなくても,売買その他の業務に関する広告をすることができます。 |
●開発許可〜検査済証の交付〜工事完了の公告 |
開発許可処分 |
2.「Aは,未完成の土地付建物の販売依頼を受け,その広告を行うにあたり,当該広告印刷時には取引態様の別が未定であるが,配布時には決定している場合,取引態様の別を明示しない広告を行うことができる。」 |
【正解:×】 ◆取引態様の別の明示 宅建業者は,宅地・建物の売買・交換・貸借に関する広告をするときは,「取引態様の別」を明示しなければなりません(宅建業法34条1項)。 自己が契約の当事者となるのか,媒介・代理の立場なのかによって,報酬の支払や法律関係が異なるので,トラブルが発生しないように,広告をするときや注文を受けるときは取引態様の別の明示が義務付けられています。 したがって,広告印刷時に取引態様の別が未定で,配布時には決定している場合であっても,取引態様の別の明示をしなければいけないので,本肢は誤りです。 |
3.「Aは,土地付建物の売買価格について,建物売買に係る消費税額 (地方消費税額を含む。) を含む土地付建物売買価格のみを表示し,消費税額を明示しない広告を行うことができる。」 |
【正解:○】 ◆価格の表示−総額表示方式 宅建業者は,消費税法第63条の2の規定により,不特定多数の一般消費者に対して物件価格,賃料等を表示する場合は,譲渡,賃貸等に係る消費税等相当額を含んだ額を表示しなければなりません(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。 この場合に,宅建業者は,消費税等相当額を明示しないで広告を行うことができます。
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●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方−消費税等相当額の扱いについて |
・法第37条第1項第3号又は第2項第2号の規定により、宅地建物取引業者は、契約を締結したときは、遅滞なく、「代金の額」又は「借賃の額」を記載した書面を交付しなければならないこととされているが、消費税等相当額は、代金、借賃等の額の一部となるものであり、かつ、代金、借賃に係る重要な事項に該当するので、「代金の額」又は「借賃の額」の記載に当たっては、「当該売買、貸借等につき課されるべき消費税等相当額」を明記することとなる。
・法第34条の2第1項第5号又は法第34条の3の規定により、媒介又は代理契約を締結したときは、遅滞なく「報酬に関する事項」を記載した書面を交付しなければならないこととされているが、その記載に当たっては、当該報酬の額に含まれる消費税等相当額に関する事項についても記載することとなる。 ・、譲渡、賃貸等に課されるべき消費税等相当額は、法第47条第1号の重要な事項に該当することとなるので、宅地若しくは建物の売買、交換又は貸借の各当事者に対して故意に事実を告げず、又は不実のことを告げた場合には、法第47条違反となる。 |
4.「Aは,賃貸物件の媒介の広告を行うにあたり,実在しない低家賃の物件の広告を出した。Aは業務停止処分を受けることがある。」 |
【正解:○】 ◆虚偽広告−誇大広告等の禁止 実在しない物件を広告するのは虚偽広告であり,誇大広告等の禁止に違反します(宅建業法32条,宅地建物取引業法の考え方)。 誇大広告等の禁止に違反すると,業務停止処分の対象になるので,本肢は正しい記述です(宅建業法65条2項2号)。 |
●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 |
第32条関係 「誇大広告等」とは、本条において規定されるところであるが、顧客を集めるために売る意思のない条件の良い物件を広告し、実際は他の物件を販売しようとする、いわゆる「おとり広告」及び実際には存在しない物件等の「虚偽広告」についても本条の適用があるものとする。 また、広告の媒体は、新聞の折込チラシ、配布用のチラシ、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ又はインターネットのホームページ等種類を問わないこととする。 |