宅建業法 実戦篇
35条の重要事項説明の過去問アーカイブス 平成19年・問35
宅地建物取引業者が宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項について説明する場合における次の記述のうち、正しいものはどれか。 (平成19年・問35) |
1 建物の貸借の媒介において、当該建物について石綿が使用されていない旨の調査結果が記録されているときは、その旨を借主に説明しなくてもよい。 |
2 建物の貸借の媒介において、当該建物が宅地造成等規制法の規定により指定された造成宅地防災区域内にあるときは、その旨を借主に説明しなければならない。 |
3 平成19年10月に新築の工事に着手した建物の売買において、当該建物が指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関又は地方公共団体による耐震診断を受けたものであるときは、その内容を買主に説明しなければならない。 |
4 宅地の売買の媒介において、当該宅地の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結等の措置を講じないときは、その旨を買主に説明しなくてもよい。 |
<コメント> |
平成19年に改正点として新たに試験範囲となったものが一挙に出題され,正答率はかなり低い数字になっていますが,合格者の自己採点集計でみるとで37.4%よりも高い数字になっています。改正対策をしていなかった人には痛恨の問題でした。
しかし,現在では,出題されれば,正答率はおそらく70%以上になるでしょう。 |
●出題論点● |
肢1 石綿使用の有無の調査結果の記録があれば,その内容
肢2 造成宅地防災区域内にあるときは,その旨 肢3 一定の機関,建築士,地方公共団体等が行う耐震診断を受けていれば,その内容 肢4 瑕疵担保責任の履行に関し,保証保険契約の締結などの措置を講ずるか,講ずる場合はその内容 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
正答率 | 37.4% |
1 建物の貸借の媒介において、当該建物について石綿が使用されていない旨の調査結果が記録されているときは、その旨を借主に説明しなくてもよい。 |
【正解:×】 ◆石綿使用の有無の調査結果の記録があれば,その内容 建物の売買・交換(その媒介・代理),貸借の媒介・代理では,
を,35条の重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項14号,施行規則16条の4の3第3号)。⇒ 要するに,宅建業者の建物に関するすべての取引で説明義務。 石綿等が使用されていない旨の調査結果があるのならば,その旨を説明しなければならないので,本肢は誤りです。
▼宅建業者が信託受益権の販売をする場合に,信託財産が建物であるときにも,説明義務がある(宅建業法35条3項7号,施行規則16条の4の7第3号)。 |
●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 |
石綿の使用の有無の調査結果の記録が保存されているときは、「その内容」として、調査の実施機関、調査の範囲、調査年月日、石綿の使用の有無及び石綿の使用の箇所を説明することとする。・・・
本説明義務については、売主及び所有者に当該調査の記録の有無を照会し、必要に応じて管理組合、管理業者及び施工会社にも問い合わせた上、存在しないことが確認された場合又はその存在が判明しない場合は、その照会をもって調査義務を果たしたことになる。 なお、本説明義務については、石綿の使用の有無の調査の実施自体を宅地建物取引業者に義務付けるものではないことに留意すること。 |
2 建物の貸借の媒介において、当該建物が宅地造成等規制法の規定により指定された造成宅地防災区域内にあるときは、その旨を借主に説明しなければならない。 |
【正解:○】 ◆造成宅地防災区域内にあるときは,その旨 宅地または建物の売買・交換(その媒介・代理),貸借の媒介・代理では,
を,35条の重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項14号,施行規則16条の4の3第1号)。⇒ 要するに,宅建業者のすべての取引で説明義務。
この規定は,造成宅地防災区域内にあるか否かについて消費者に確認させるものとされています(国土交通省,宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。 ▼宅建業者が信託受益権の販売をする場合〔信託財産が宅地または建物であるとき〕にも,説明義務がある(宅建業法35条3項7号,施行規則16条の4の7第1号)。 |
●造成宅地防災区域 |
造成宅地防災区域内の造成宅地の所有者,管理者または占有者(以下「宅地所有者等」)は,当該造成宅地について宅地造成に伴う災害防止のため必要な措置(「滑動崩落防止工事」)を,都道府県知事等から勧告されることがあり(宅地造成等規制法16条2項),この場合,滑動崩落防止工事に必要な費用の全部又は一部を宅地所有者等が負担することになります。 |
3 平成19年10月に新築の工事に着手した建物の売買において、当該建物が指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関又は地方公共団体による耐震診断を受けたものであるときは、その内容を買主に説明しなければならない。 |
【正解:×】 ◆一定の機関,建築士,地方公共団体等が行う耐震診断を受けていれば,その内容 本肢の建物は,平成19年10月に新築の工事に着手しているので,耐震診断の内容を説明するべき建物には該当しない。このため,本肢は誤りです。 ………………………………………………………… 建物の売買・交換(その媒介・代理),貸借の媒介・代理では,
を,35条の重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項14号,施行規則16条の4の3第4号)。 ⇒ 要するに,宅建業者の建物(昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものを除く。)に関する取引のすべてで説明義務。
▼宅建業者が信託受益権の販売をする場合に,信託財産が建物であるときにも,説明義務がある(宅建業法35条3項7号,施行規則16条の4の7第4号)。 |
●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 |
本説明義務については、売主及び所有者に当該耐震診断の記録の有無を照会し、必要に応じて管理組合及び管理業者にも問い合わせた上、存在しないことが確認された場合は、その照会をもって調査義務を果たしたことになる。 なお、本説明義務については、耐震診断の実施自体を宅地建物取引業者に義務付けるものではないことに留意すること。 |
4 宅地の売買の媒介において、当該宅地の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結等の措置を講じないときは、その旨を買主に説明しなくてもよい。 |
【正解:×】 ◆瑕疵担保責任の履行に関し,保証保険契約の締結などの措置を講ずるか,講ずる場合はその内容 宅地または建物の売買・交換(その媒介・代理)では,
を,35条の重要事項として説明しなければなりません(宅建業法35条1項13号)。 ⇒ 貸借の媒介・代理では説明義務はないとされる(国土交通省の見解)。
▼宅建業者が信託受益権の販売をする場合〔信託財産が宅地または建物であるとき〕にも,説明義務がある(宅建業法35条3項7号,施行規則16条の4の7第6号)。 |
●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 |
当該宅地又は建物が宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前のものである等の事情により、重要事項の説明の時点で瑕疵担保責任の履行に関する措置に係る契約の締結が完了していない場合にあっては、当該措置に係る契約を締結する予定であること及びその見込みの内容の概要について説明するものとする。 なお、本説明義務については、瑕疵担保責任の履行に関する措置を講じること自体を宅地建物取引業者に義務付けるものではないことに留意すること。 ⇒ この後,改正により,瑕疵担保責任の資力確保のため,住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結または住宅販売瑕疵担保保証金の供託が義務付けられました。平成21年9月1日施行なので,この太字部分については平成21年の宅建試験では出題されにくいと考えられます。 |