宅建業法 実戦篇
監督処分と罰則の過去問アーカイブス 平成19年・問36
法人である宅地建物取引業者A (甲県知事免許) に関する監督処分及び罰則に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているものはどれか。(平成19年・問36) |
1 Aが、建物の売買において、当該建物の将来の利用の制限について著しく事実と異なる内容の広告をした場合、Aは、甲県知事から指示処分を受けることがあり、その指示に従わなかったときは、業務停止処分を受けることがある。 |
2 Aが、乙県内で行う建物の売買に関し、取引の関係者に損害を与えるおそれが大であるときは、Aは、甲県知事から指示処分を受けることはあるが、乙県知事から指示処分を受けることはない。 |
3 Aが、正当な理由なく、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他人に漏らした場合、Aは、甲県知事から業務停止処分を受けることがあるほか、罰則の適用を受けることもある。 |
4 Aの従業者Bが、建物の売買の契約の締結について勧誘をするに際し、当該建物の利用の制限に関する事項で買主の判断に重要な影響を及ぼすものを故意に告げなかった場合、Aに対して1億円以下の罰金刑が科せられることがある。 |
<コメント> |
●出題論点● |
肢1 指示処分に従わなかった場合は,業務停止処分を受けることがある
肢2 免許権者以外の知事も,指示処分や業務停止処分をすることができる 肢3 守秘義務に違反すると,業務停止処分+罰則 (50万円以下の罰金刑) 肢4 買主の判断に重要な影響を及ぼす事実の不告知の禁止に従業者が違反すると,法人の場合,罰金1億円が科せられる |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
正答率 | 85.8% |
1 Aが、建物の売買において、当該建物の将来の利用の制限について著しく事実と異なる内容の広告をした場合、Aは、甲県知事から指示処分を受けることがあり、その指示に従わなかったときは、業務停止処分を受けることがある。 |
【正解:○】 ◆指示処分に従わなかった場合は,業務停止処分を受けることがある 誇大広告の禁止に違反すると,業務停止処分の対象になりますが(宅建業法65条2項2号),(軽度の違反などでは) 免許権者は指示処分にすることもできます(宅建業法65条1項本文)。 この指示に従わなかった場合,業務停止処分を受けることがあります(宅建業法65条2項3号)。
▼業務停止処分の対象となる宅建業法違反も,免許権者は,違反の程度などによって,指示処分にすることができる。 |
2 Aが、乙県内で行う建物の売買に関し、取引の関係者に損害を与えるおそれが大であるときは、Aは、甲県知事から指示処分を受けることはあるが、乙県知事から指示処分を受けることはない。 |
【正解:×】 ◆免許権者以外の知事も,指示処分や業務停止処分をすることができる 宅建業者が<業務に関し取引の関係者に損害を与えたとき>や<損害を与えるおそれが大であるとき>は,免許権者は,その宅建業者に指示処分をすることができます(宅建業法65条1項1号)。 当該行為に対しては,免許権者である都道府県知事及び国土交通大臣だけでなく,免許権者以外の都道府県知事も,指示処分をすることができます。 都道府県知事は,国土交通大臣や他の都道府県知事の免許を受けた宅建業者で当該都道府県の区域内において業務を行なうものが,その都道府県の区域内の業務に関し,65条1項各号の一に該当する場合や宅建業法に違反した場合には,その宅建業者に対して,必要な指示をすることができるからです(宅建業法65条3項)。 |
●指示処分の対象 | |
国土交通大臣または都道府県知事は,その免許を受けた宅建業者が
(1) 65条1項の各号のいずれかに該当する場合 (業務停止処分〔情状が特に重いときは免許取消し〕にすることもできる。)
または (2) 宅建業法の規定に違反した場合※, (3) 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律 (「履行確保法」という。)の所定の規定に違反した場合 当該宅地建物取引業者に対して,必要な指示をすることができる。 ※<業務停止処分,免許取消し処分に該当しない違反行為>のほか,<業務停止処分の対象になるものでも比較的軽度の違反の場合に,違反行為の是正措置を早急にさせる必要があるとき>に,指示処分になることがある。 |
3 Aが、正当な理由なく、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他人に漏らした場合、Aは、甲県知事から業務停止処分を受けることがあるほか、罰則の適用を受けることもある。 |
【正解:○】 ◆守秘義務に違反すると,業務停止処分+罰則 (50万円以下の罰金刑)
宅建業者が,正当な理由なく,その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他人に漏らした場合,免許権者から業務停止処分を受けるほか(宅建業法65条2項2号),罰則の適用<50万円以下の罰金>を受けます(宅建業法83条1項3号)。 |
●従業者の守秘義務違反 |
宅建業者の従業者が守秘義務(宅建業法75条の2)に違反すると,行為者に50万円以下の罰金が科せられます(宅建業法83条1項3号)。
この場合は,その宅建業者に対して,両罰規定として罰金刑が科せられることはありません(宅建業法84条)。 |
4 Aの従業者Bが、建物の売買の契約の締結について勧誘をするに際し、当該建物の利用の制限に関する事項で買主の判断に重要な影響を及ぼすものを故意に告げなかった場合、Aに対して1億円以下の罰金刑が科せられることがある。 |
【正解:○】法改正による初出題 ◆買主の判断に重要な影響を及ぼす事実の不告知の禁止に従業者が違反すると,法人の場合,罰金1億円が科せられる 宅建業者は,契約の締結について勧誘をするに際し,相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるものについて,故意に事実を告げず,または不実のことを告げる行為は禁止されています(宅建業法47条1号二)。 従業者や代理人が,故意に告げなかった場合は,行為者が罰せられるだけでなく,宅建業者にも両罰規定として罰金刑が科せられますが, 宅建業者が法人の場合は,最高で1億円の罰金が科せられます(宅建業法84条)。 ●整理● 両罰規定のまとめ
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●事実の不告知,不実の告知の禁止 |
(業務に関する禁止事項) 第47条 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。 一 宅地若しくは建物の売買、交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為 イ 第35条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項 〔35条の重要事項〕 ロ 第35条の2各号に掲げる事項 〔供託所,保証協会に関する事項〕 ハ 第37条第1項各号又は第2項各号(第1号を除く。)に掲げる事項〔37条書面の記載事項〕 ニ イからハまでに掲げるもののほか、宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であつて、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの |