宅建業法 実戦篇
媒介契約規制の過去問アーカイブス 平成19年・問39
宅地建物取引業者Aは、BからB所有の宅地の売却について媒介の依頼を受けた。この場合における次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、誤っているものはどれか。 (平成19年・問39) |
1 Aは、Bとの間に媒介契約を締結したときは、当該契約が国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの別を、法第34条の2第1項の規定に基づき交付すべき書面に記載しなければならない。 |
2 Aは、Bとの間で媒介契約を締結し、Bに対して当該宅地を売却すべき価額又はその評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。 |
3 Aは、Bとの間に専属専任媒介契約を締結したときは、当該契約の締結の日から5日以内(休業日を除く。)に、所定の事項を当該宅地の所在地を含む地域を対象として登録業務を現に行っている指定流通機構に登録しなければならない。 |
4 Aは、Bとの間で有効期間を2か月とする専任媒介契約を締結する際、Bが媒介契約を更新する旨を申し出ない場合は、有効期間満了により自動更新するものとする」旨の特約を定めることができる。 |
<コメント> |
●出題論点● |
肢1 標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの別−媒介契約書面の記載事項
肢2 価額〔売買のとき〕または評価額〔交換のとき〕について意見を述べるときは,その根拠を明示しなければならない 肢3 専属専任媒介契約を締結した日から5日以内に,指定流通機構に登録しなければならない 肢4 専任媒介契約〔専属専任も含む〕−自動更新の禁止 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | ○ | × |
正答率 | 88.3% |
1 Aは、Bとの間に媒介契約を締結したときは、当該契約が国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの別を、法第34条の2第1項の規定に基づき交付すべき書面に記載しなければならない。 |
【正解:○】 ◆標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの別 宅建業者が媒介契約を締結したときに,遅滞なく依頼者に交付すべき書面〔34条の2の書面,媒介契約書面〕には,一般媒介契約,専任媒介契約の区分に関係なく,その媒介契約が 「国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの別」 を記載しなければなりません(宅建業法34条の2第1項7号,施行規則15条の7第4号)。
▼媒介契約に関する34条の2の規制は,売買・交換の媒介に関するものであり,貸借の媒介には適用されないことに注意してください。したがって,貸借の媒介では,34条の2の書面の交付義務はありません。 |
2 Aは、Bとの間で媒介契約を締結し、Bに対して当該宅地を売却すべき価額又はその評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。 |
【正解:○】 ◆価額や評価額の根拠の明示 宅建業者が,媒介を依頼された宅地や建物の価額〔売買のとき〕または評価額〔交換のとき〕について意見を述べるときは,その根拠を明らかにしなければなりません (宅建業法34条の2第2項)。 ▼この規定は,一般媒介契約,専任媒介契約の区分に関係なく,適用されます。 ▼価額・評価額の根拠を明らかにするのは文書でなくても,口頭でしても構いません。また,根拠を明らかにするのは取引主任者にさせなければならないという規定はないので,個人業者本人,法人の代表者に限らず,一般の従業員でも構いません。 |
●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 (国土交通省) |
4 媒介価額に関する意見の根拠の明示義務について (1)意見の根拠について 意見の根拠としては、価格査定マニュアル(財団法人不動産流通近代化センターが作成した価格査定マニュアル又はこれに準じた価格査定マニュアル)や、同種の取引事例等他に合理的な説明がつくものであることとする。 なお、その他次の点にも留意することとする。 1) 依頼者に示すべき根拠は、宅地建物取引業者の意見を説明するものであるので、必ずしも依頼者の納得を得ることは要さないが、合理的なものでなければならないこと。 2) 根拠の明示は、口頭でも書面を用いてもよいが、書面を用いるときは、不動産の鑑定評価に関する法律に基づく鑑定評価書でないことを明記するとともに、みだりに他の目的に利用することのないよう依頼者に要請すること。 3) 根拠の明示は、法律上の義務であるので、そのために行った価額の査定等に要した費用は、依頼者に請求できないものであること。 |
3 Aは、Bとの間に専属専任媒介契約を締結したときは、当該契約の締結の日から5日以内(休業日を除く。)に、所定の事項を当該宅地の所在地を含む地域を対象として登録業務を現に行っている指定流通機構に登録しなければならない。 |
【正解:○】 ◆指定流通機構への登録 宅建業者が,専任媒介契約を締結したときは,契約の相手方を探索するため, 専任媒介契約〔専属専任以外〕を締結した日から7日以内(休業日を除く。), 専属専任媒介契約を締結した日から5日以内(休業日を除く。), に,当該専任媒介契約の目的物である宅地または建物について,その所在,規模,形質,売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を,「指定流通機構」に登録しなければなりません(宅建業法34条の2第5項,施行規則15条の8第1項)。 ⇒ 一般媒介契約では,指定流通機構への登録は義務ではありませんが,一般媒介契約でも登録することはできます。なお,一般媒介契約でも,34条の2の書面で,指定流通機構への登録に関する事項を記載しなければなりません。。 ▼指定流通機構は国土交通大臣から指定され(宅建業法50条2の5第1項),現在,(財)東日本不動産流通機構,(財)中部圏不動産流通機構,(財)近畿圏不動産流通機構,(財)西日本不動産流通機構の四つの団体があります。 問題文で,「当該宅地の所在地を含む地域を対象として登録業務を現に行っている指定流通機構」といっているのは,四つの指定流通機構のうち,物件の所在地を含む地域を管轄にしている財団法人を意味しています(施行規則19条の2の7)。 |
●宅地建物取引業法施行規則 |
(指定流通機構の指定方法) 第19条の2の7 法第50条の2の5第一項 の規定による指定は、宅地及び建物の流通の実情、相当数の登録の見込み、宅地及び建物の取引に係る情報ネットワークの効率的な構築の見通し等を勘案して国土交通大臣が定める地域ごとに一を限り、行うものとする。 |
4 Aは、Bとの間で有効期間を2か月とする専任媒介契約を締結する際、Bが媒介契約を更新する旨を申し出ない場合は、有効期間満了により自動更新するものとする」旨の特約を定めることができる。 |
【正解:×】 ◆自動更新の禁止 「専任媒介契約」(専属専任媒介契約を含む)の有効期間は,3か月を超えることができません。これより長い期間を定めても,その期間は3か月に短縮されます(宅建業法34条の2第3項)。 専任媒介契約の有効期間は,依頼者の申出があってはじめて,更新することができます(宅建業法34条の2第4項)。自動更新の定めをしても無効です(宅建業法34条の2第9項)。 ▼一般媒介契約では,有効期間の制限,自動更新の禁止の規定はありません。 |