宅建業法 実戦篇

自ら売主の8種制限の過去問アーカイブス 平成19年・問41


 宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者でないBと建物の売買契約を締結しようとし、又は締結した場合に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。(平成19年・問41)

1 は、自己の所有に属しない建物を売買する場合、が当該建物を取得する契約を締結している場合であっても、その契約が停止条件付きであるときは、当該建物の売買契約を締結してはならない。

2 売買契約の締結に際し、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める場合において、これらを合算した額が売買代金の2割を超える特約をしたときは、その特約はすべて無効となる。

3 「建物に隠れたす瑕疵があった場合、その瑕疵がの責に帰すことのできるものでないときは、は瑕疵担保責任を負わない」とする特約は有効である。

がホテルのロビーで買受けの申込みをし、 3日後にの自宅で売買契約を締結した場合、は、当該建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払っているときでも、当該売買契約の解除をすることができる。

<コメント>  
 
●出題論点●
 肢1 自己の所有に属しない物件を取得する契約が停止条件付のときは,その物件について,宅建業者でない者と売買契約できない 

 肢2 「損害賠償の予定額+違約金」 の合計が代金の20%を超える特約は,全部が無効になるのではなく,代金の20%を超える部分について無効となる〔一部無効

 肢3 瑕疵担保責任は,売主の無過失責任であり,売主に帰責事由がなければ瑕疵担保責任を負わないとする特約は無効

 肢4 引渡しを受け,かつ,代金全額を支払うと,クーリングオフによる解除できない

【正解】

× × ×

 正答率  81.6%

1 は、自己の所有に属しない建物を売買する場合、が当該建物を取得する契約を締結している場合であっても、その契約が停止条件付きであるときは、当該建物の売買契約を締結してはならない。

【正解:

◆取得する契約が停止条件付のときは,宅建業者でない者と売買契約できない 

 宅建業者は,自己の所有に属しない宅地や建物について,宅建業者ではない者と,自ら売主となる売買契約(予約を含む。)を,原則として,締結することはできません。

 ただし,宅建業者が,<その宅地や建物を取得する契約(予約を含み,その効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているとき>や,<宅建業者がその宅地や建物を取得できることが明らかな場合で国土交通省令で定めるとき>は,売買契約を締結することができます(宅建業法33条の2第1号)

 宅建業者が,自己の所有に属しない建物を取得する契約を,その所有者と締結していても,その契約が停止条件付のときは,宅建業者ではない者と,自ら売主となる売買契約(予約を含む。)を,締結することはできないので,本肢は正しい記述です。

2 売買契約の締結に際し、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める場合において、これらを合算した額が売買代金の2割を超える特約をしたときは、その特約はすべて無効となる。

【正解:×

◆損害賠償の予定額+違約金の合計が,代金の20%を超える部分について無効

  宅建業者が自ら売主として宅建業者ではない者と宅地や建物の売買契約を締結する場合に,当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償額を予定額と違約金を合算した額が代金の額の十分の二を超える定めをすることはできません (宅建業法38条1項)

 この規定に反する特約は,その特約全部が無効になるのではなく,代金の額の十分の二を超える部分について無効となります(宅建業法38条1項,2項)

 本肢では,<その特約はすべて無効となる>としているので,誤りです。

3 「建物に隠れたす瑕疵があった場合、その瑕疵がの責に帰すことのできるものでないときは、は瑕疵担保責任を負わない」とする特約は有効である。

【正解:×

◆売主に帰責事由がなければ瑕疵担保責任を負わないとする特約は無効

 民法では,瑕疵担保責任は,売主に帰責事由がなくても,買主は損害賠償を請求でき,契約の目的を達することができないときは解除をすることができるとしています(売主は無過失でも瑕疵担保責任を負う。民法570条,566条)。

 宅建業者は,自ら売主となる宅地や建物を宅建業者ではない者と売買契約を締結する場合に,瑕疵担保責任について,瑕疵担保責任を負う期間を引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き民法の規定よりも買主に不利となる特約をすることはできません(宅建業法40条1項)。また,この規定に反する特約は無効です(宅建業法40条2項)

 したがって,<『売主に帰責事由がなければ,は瑕疵担保責任を負わない』とする特約は有効である。>とする本肢は誤りです。

がホテルのロビーで買受けの申込みをし、 3日後にの自宅で売買契約を締結した場合、は、当該建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払っているときでも、当該売買契約の解除をすることができる。

【正解:×

◆引渡しを受け,かつ,代金全額を支払うと,クーリングオフによる解除はできない

 事務所等以外の場所〔クーリングオフの規定が適用される場所。本肢のホテルのロビーはこれに該当する。〕で,買受けの申込みをして売買契約を締結した者が,売買の目的物である宅地や建物の引き渡しを受け,かつ,その代金全額を支払ったときには,クーリングオフの規定による売買契約の解除をすることはできなくなります(宅建業法37条の2第1項2号)

 したがって,<引渡しを受け,かつ,その代金の全部を支払っているときでも,売買契約を解除できる>とする本肢は誤りです。


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