宅建業法 実戦篇
自ら売主の8種制限と業務上の規制の過去問アーカイブス 平成19年・問43
売買契約の締結等の時期の制限,手付け金等保全措置,取引態様の別,解約手付
次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。 (平成19年・問43) |
1 宅地建物取引業者Aは、都市計画法第29条第1項の許可を必要とする宅地の造成工事着手前において、当該許可を受けていない場合であっても、当該許可を受けることを停止条件とする特約を付ければ、当該宅地の売買契約を締結することができる。 |
2 宅地建物取引業者Bが自ら売主となって、宅地建物取引業者でないCと1億円のマンションの売買契約(手付金1,500万円、中間金1,500万円、残代金7,000万円)を建築工事完了前に締結し、その引渡し及び登記の移転を残代金の支払と同時に行う場合、Bは、手付金の受領前及び中間金の受領前それぞれについて、保全措置を講じなければならない。 |
3 宅地建物取引業者Dは、取引態様の明示がある広告を見た宅地建物取引業者Eから建物の売買の注文を受けた場合、Eから取引態様の問い合わせがなければ、Eに対して、取引態様を明示する必要はない。 |
4 宅地建物取引業者Fが自ら売主となって、宅地建物取引業者でないGと宅地の売買契約を締結するに際して手付金を受領する場合において、その手付金が解約手付である旨の定めがないときは、Fが契約の履行に着手していなくても、Gは手付金を放棄して契約の解除をすることができない。 |
<コメント> |
●出題論点● |
肢1 相手方が宅建業者でも,工事に必要な政令で定める処分がなければ,契約を締結することはできない。
肢2 保全措置の必要な手付金等には,契約締結日以降引渡し前に支払われるものをいい,中間金も含まれる。 肢3 取引態様の別が明示されている広告を見た者にも,注文を受ける時には,改めて取引態様の別を明示しなければならない。 肢4 解約手付である旨の定めがなくても,解約手付になる。 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
正答率 | 82.8% |
1 宅地建物取引業者Aは、都市計画法第29条第1項の許可を必要とする宅地の造成工事着手前において、当該許可を受けていない場合であっても、当該許可を受けることを停止条件とする特約を付ければ、当該宅地の売買契約を締結することができる。 |
【正解:×】 ◆契約締結等の時期の制限 相手方が宅建業者でも,工事に必要な政令で定める処分を受けていない場合は,売買または交換の契約を締結〔その媒介や代理も〕することはできません(宅建業法36条)。 停止条件付の売買契約であっても,締結することはできないので,本肢は誤りです。 |
2 宅地建物取引業者Bが自ら売主となって、宅地建物取引業者でないCと1億円のマンションの売買契約(手付金1,500万円、中間金1,500万円、残代金7,000万円)を建築工事完了前に締結し、その引渡し及び登記の移転を残代金の支払と同時に行う場合、Bは、手付金の受領前及び中間金の受領前それぞれについて、保全措置を講じなければならない。 |
【正解:○】 ◆保全措置の必要な手付金等には,契約締結日以降引渡し前に支払われるものをいい,中間金も含まれる。 保全措置の必要な手付金等には,契約締結日以降引渡し前に支払われるものをいい,中間金も含まれます(宅建業法41条1項)。 宅建業者ではない買主が引渡し及び所有権移転登記と同時に残代金を支払うということは,手付金と中間金を引渡し前に支払うことになるので,それぞれを受領する前に,手付金等の保全措置を講じなければなりません。 ▼未完成物件の場合,代金の5%以下かつ1,000万円以下であれば,保全措置を講じる必要はありません。しかし,本肢の場合,手付金が代金の15%なので,手付金を受領する前に保全措置を講じなければなりません。 |
3 宅地建物取引業者Dは、取引態様の明示がある広告を見た宅地建物取引業者Eから建物の売買の注文を受けた場合、Eから取引態様の問い合わせがなければ、Eに対して、取引態様を明示する必要はない。 |
【正解:×】 ◆取引態様の別の明示 取引態様の別が明示されている広告を見た者にも,注文を受ける時には,改めて取引態様の別を明示しなければなりません(宅建業法34条2項)。これは,広告を見て注文をしてきたのが,宅建業者であっても変わりはありません。 広告した時点とその後で,取引態様の別が変わることがあり,また広告を見たといっても,その人が取引態様の別を勘違いしている場合もあります。後々問題を起こさないようにするために,注文を受けたときには遅滞なく明示することになっています。 |
4 宅地建物取引業者Fが自ら売主となって、宅地建物取引業者でないGと宅地の売買契約を締結するに際して手付金を受領する場合において、その手付金が解約手付である旨の定めがないときは、Fが契約の履行に着手していなくても、Gは手付金を放棄して契約の解除をすることができない。 |
【正解:×】 ◆解約手付である旨の定めがなくても,解約手付になる 宅建業者が,自ら売主として,宅建業者ではない者と売買契約を締結する際に受領した手付は,解約手付である旨の定めがなくても,解約手付として扱われます(宅建業法39条2項)。 したがって,買主のGは,売主のFが契約の履行に着手していなければ,手付金を放棄して契約の解除をすることができるので,本肢は誤りです。 |