宅建過去問 宅建業法
自ら売主の8種制限の過去問アーカイブス 平成20年・問40
手附の額の制限等〔解約手付〕,損害賠償額の予定等の制限,クーリングオフ,
瑕疵担保責任についての特約の制限
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者でないBと建物の売買契約を締結する場合に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法 (以下この問において 「法」 という。) 及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。 (平成20年・問40) |
1 Bが契約の履行に着手するまでにAが売買契約の解除をするには、手付の3倍に当たる額をBに償還しなければならないとの特約を定めることができる。 |
2 Aの違約によりBが受け取る違約金を売買代金の額の10分の3とするとの特約を定めることができる。 |
3 Bから法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフによる売買契約の解除があった場合でも、Aが契約の履行に着手していれば、AはBに対して、それに伴う損害賠償を請求することができる。〔重要〕 |
4 Aは、瑕疵(かし)担保責任を負うべき期間として、引渡しの日から2年で、かつ、Bが瑕疵(かし)を発見した時から30日以内とする特約を定めることができる。 |
<コメント> |
●出題論点● |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
正答率 | 76.5% |
1 Bが契約の履行に着手するまでにAが売買契約の解除をするには、手付の3倍に当たる額をBに償還しなければならないとの特約を定めることができる。 |
【正解:○】 ◆解約手付 (手附の額の制限等) 宅建業者が,宅建業者ではない者と,自ら売主となる宅地建物の売買契約を締結するに際し,手附を受領したときは,その手附がいかなる性質のものであっても,当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主はその手附を放棄し,当該宅建業者はその倍額を償還して,契約の解除をすることができます(宅建業法39条2項)。 この規定に反する特約で,買主に不利なものは無効です(宅建業法39条3項)。 しかし,本肢の特約は,<売主である宅建業者Aが売買契約の解除をするには,手付の3倍に当たる額をBに償還しなければならない>というもので,買主Bにとって,不利とは言えず,有利な特約です。 この特約は有効であり,本肢は正しい記述です。 |
2 Aの違約によりBが受け取る違約金を売買代金の額の10分の3とするとの特約を定めることができる。 |
【正解:×】 ◆損害賠償額の予定等の制限 (自ら売主である宅建業者が受け取る) 違約金を売買代金の額の10分の3とする特約を定めることはできません。したがって,本肢は誤りです。 宅建業者が,宅建業者ではない者と,自ら売主となる宅地建物の売買契約を締結するに際し,当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し,または違約金を定めるときは,これらを合算した額が代金の額の十分の二を超える特約を定めることはできません(宅建業法38条1項)。 この規定に反する特約は,代金の額の十分の二を超える部分について無効です(宅建業法38条2項)。 本肢の場合,売買契約そのものや損害賠償の予定額の特約のすべてが無効になるのではなく,代金の額の十分の二を超える部分についてのみ無効になります。 |
3 Bから法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフによる売買契約の解除があった場合でも、Aが契約の履行に着手していれば、AはBに対して、それに伴う損害賠償を請求することができる。〔重要〕 |
【正解:×】 ◆クーリングオフによる契約解除があったとき, クーリング・オフの規定による買受けの申込みの撤回や売買契約の解除があったとき,宅建業者は,損害賠償の請求や違約金の請求をすることはできません(宅建業法37条の2第1項後段)。この規定に反する特約で申込者等に不利なものは無効です。 また,この場合,宅建業者は,申込者等に対し,速やかに、買受けの申込みまたは売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければなりません(宅建業法37条の2第3項)。 たとえば,買主が手付を交付していた場合にクーリングオフによる契約の解除があったときは,宅建業者が契約の履行に着手していても,手付金全額を買主に返還しなければならず,契約の解除に伴う損害賠償請求をすることはできません。 |
4 Aは、瑕疵(かし)担保責任を負うべき期間として、引渡しの日から2年で、かつ、Bが瑕疵(かし)を発見した時から30日以内とする特約を定めることができる。 |
【正解:×】 ◆瑕疵担保責任についての特約の制限 宅建業者は,宅建業者ではない者と,自ら売主となる宅地建物の売買契約をする場合に,瑕疵担保責任を負う期間について,<その目的物の引渡しの日から2年以上となる特約>をする場合を除き,<善意無過失の買主がその事実を知った時から1年以内>とする民法の規定よりも買主に不利となる特約をすることは禁止されています。また,この規定に反する特約は無効です。(宅建業法40条1項,2項,民法570条,566条3項)。 本肢の「引渡しの日から2年で,かつ,買主のBが瑕疵を発見した時から30日以内とする特約」は,民法の規定よりも不利な特約ですから無効になります。 ▼「引渡しの日から2年」という部分は宅建業法でも認めているのでよいのですが,「買主のBが瑕疵を発見した時から30日以内」という部分が民法の規定よりも不利な特約です。 本肢の瑕疵担保責任の特約は無効になるので,瑕疵担保責任を負う期間は民法の原則に立ち戻り,<善意無過失の買主がその事実を知った時から1年以内>になります。 |