宅建業法 実戦篇

業務上の規制の過去問アーカイブス 昭和55年・問35 

不当な履行遅延の禁止・帳簿の備付け・名義貸しの禁止・秘密を守る義務


次の記述のうち,宅地建物取引業法上,誤っているものはどれか。(昭和55年・問35)

1.「宅地建物取引業者は,その業務に関してなすべき宅地又は建物の登記について,不当に遅延する行為をしてはならない。」

2.「宅地建物取引業者は,主たる事務所にその業務に関する帳簿を備えれば,従たる事務所に備えておく必要はない。」

3.「宅地建物取引業者は,自己の名義をもって,他人に宅地建物取引業を営ませてはならない。」

4.「宅地建物取引業者は,宅地建物取引業を廃業した後であっても,その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他人に漏らしてはならない。」

【正解】

×

1.「宅地建物取引業者は,その業務に関してなすべき宅地又は建物の登記について,不当に遅延する行為をしてはならない。」

【正解:

◆不当な履行遅延の禁止

 宅建業者は,その業務に関してなすべき宅地・建物の登記,引渡し,または取引に係る対価の支払を不当に遅延する行為をしてはいけません。(宅建業法44条)

 KEY 

 登記,引渡し,または取引に係る対価の支払を
 不当に遅延する行為をしてはならない。
                  ↓
 罰則 6月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金,又は併科

 両罰規定 行為者を罰するほか,宅建業者である法人・個人にも
        罰金刑を科する。

 監督処分 1年以内の業務停止処分(全部又は一部)

        情状が特に重いときや業務停止処分に違反したときは
        免許取消処分

2.「宅地建物取引業者は,主たる事務所にその業務に関する帳簿を備えれば,従たる事務所に備えておく必要はない。」

【正解:×

◆帳簿の備付け

 宅建業者は,主たる事務所・従たる事務所も,事務所ごとに業務に関する帳簿 (電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスクを含む。) を備え,取引のあった都度,年月日・取引に係る宅地建物の所在及び面積,その他国土交通省令で定める事項を記載しなければなりません。(宅建業法・49条,施行規則・18条)

 KEY 

             帳簿の備え付けと記載
                  ↓

 罰則 帳簿を備え付けず,又はこれに49条に規定する事項を記載せず,
     若しくは虚偽の記載をした者 は50万円以下の罰金

 両罰規定 行為者を罰するほか,宅建業者である法人・個人にも
        罰金刑を科する。

 監督処分 指示処分

帳簿・・・事業年度の末日をもって閉鎖し,閉鎖後5年間(当該宅地建物取引業者が自ら売主となる新築住宅に係るものは10年間)は保存しなければならない。

3.「宅地建物取引業者は,自己の名義をもって,他人に宅地建物取引業を営ませてはならない。」

【正解:

◆名義貸しの禁止

 宅建業者は,自己の名義をもって,他人に宅地建物取引業を営ませてはいけません。(宅建業法・13条1項)

 KEY 

 罰則 3年以下の懲役 もしくは 300万円以下の罰金 又は 併科

 両罰規定 行為者を罰するほか,宅建業者である法人・個人にも
        罰金刑を科する。(法人業者は1億円以下の罰金)

 監督処分 1年以内の業務停止処分(全部又は一部)

        情状が特に重いときや業務停止処分に違反したときは
        免許取消処分

自己の名義をもって他人に宅建業を営む旨の表示をさせ,又は宅建業を営む目的をもってする広告をさせることも禁止されています。(宅建業法・13条2項)
 この表示・広告での名義貸しの
監督処分は上と同じですが,罰則は,100万円以下の罰金になります。監督処分としては,指示処分,業務停止処分,情状が重いときや業務停止処分に違反したときは免許取消処分が行われます。

4.「宅地建物取引業者は,宅地建物取引業を廃業した後であっても,その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他人に漏らしてはならない。」

【正解:

◆秘密を守る義務

 宅建業者は,正当な理由がなければ,業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはいけません。これは,宅建業を営まなくなった後でも,同じです。(宅建業法・45条)

※正当な理由・・・裁判での証言,税務署員からの質問,取引の相手方の利害に係ること,本人の承諾があるものなど。

 KEY 

 罰則 50万円以下の罰金  両罰規定

 監督処分  指示処分

        1年以内の業務停止処分(全部又は一部)

        情状が特に重いときや業務停止処分に違反したときは
        免許取消処分

宅建業者の使用人その他の従業者にも,この守秘義務があります。(宅建業法・75条の2)⇒罰則は50万円以下の罰金。

 宅建業者,従業者どちらの場合の守秘義務違反も,被害者の意思を尊重するため,いわゆる親告罪とされており,被害者等から告訴がなければ公訴を提起することはできません(宅建業法・83条・2項)


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