宅建業法 実戦篇
自ら売主の制限の過去問アーカイブス 昭和56年・問48 <無効>のバリエーション
手付放棄による契約解除・損害賠償額の予定等の制限・瑕疵担保責任の特約の制限・
割賦販売の契約の解除等の制限 ⇒ 業者間の取引には適用されない。
次の記述のうち,宅地建物取引業法上,誤っているのはどれか。(昭和56年・問48) |
1.「宅地建物取引業者が,自ら売主となる売買契約において,「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主は手付の半額を放棄して契約の解除をすることができる」という特約をした場合,その特約は無効になる。」 |
2.「宅地建物取引業者が,自ら売主となる売買契約において,「違約金の額は代金の30%とする」という特約をし,損害賠償の額の予定の特約はとくにしなかった場合,その違約金の特約は代金の額の20%を超える部分について無効となる。」 |
3.「宅地建物取引業者が,自ら売主となる売買契約において,「売主はいかなる場合にも瑕疵担保責任を負わない」という特約をした場合,その特約は無効となる。」 |
4.「宅地建物取引業者が,自ら売主となる割賦販売契約において,「買主の賦払金の支払いの延滞があったときは,売主は,催告をしないで直ちに契約を解除することができる」という特約をした場合,その特約は無効となる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
1.「宅地建物取引業者が,自ら売主となる売買契約において,「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主は手付の半額を放棄して契約の解除をすることができる」という特約をした場合,その特約は無効になる。」 |
【正解:×】 ◆解約手付の特約 宅建業者が,自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは,買主が非業者であれば,その手附がいかなる性質のものであつても,その手付は解約手付になります。
<この規定に反して,買主に不利な特約は無効>ですが(宅建業法・39条3項),本肢では,<買主が解除をするには手付の半額の放棄でよい>としているので,宅建業法の規定よりも有利な特約ですから,無効ではありません。 |
●手付についての制限 | ||||||
下記のほかに,手付金等の保全措置の規定(宅建業法41条,41条の2)がある。
□自ら売主の制限 <宅建業者間の取引には適用されない> (手附の額の制限等) 2 宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは、その手附がいかなる性質のものであつても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手附を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。 3 前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。
□手付についての信用の供与による契約締結誘引行為の禁止<宅建業者間の取引にも適用される> (業務に関する禁止事項) 三 手附について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為
□手付解除について正当な理由なく,解除を拒み,又は妨げることの禁止の信用の供与による契約締結誘引行為の禁止<宅建業者間の取引にも適用される> (業務に関する禁止事項) (法第47条の2第3項 の国土交通省令で定める行為) 三 宅地建物取引業者の相手方等が手付を放棄して契約の解除を行うに際し、正当な理由なく、当該契約の解除を拒み、又は妨げること。
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2.「宅地建物取引業者が,自ら売主となる売買契約において,「違約金の額は代金の30%とする」という特約をし,損害賠償の額の予定の特約はとくにしなかった場合,その違約金の特約は代金の額の20%を超える部分について無効となる。」 |
【正解:○】 ◆損害賠償額の予定等の制限 宅建業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約では,買主が非業者であれば,損害賠償の額を予定したり,違約金の定めをする場合<又は,その合算額を定める場合>,代金の額の20%を超える部分については無効です。(宅建業法・38条1項,2項)
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●条文確認 |
(損害賠償額の予定等の制限) 第38条 宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない。 2 前項の規定に反する特約は、代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする。 |
3.「宅地建物取引業者が,自ら売主となる売買契約において,「売主はいかなる場合にも瑕疵担保責任を負わない」という特約をした場合,その特約は無効となる。」 |
【正解:○】 ◆瑕疵担保責任の特約 民法では,瑕疵担保責任は売主の無過失責任であり,瑕疵によって契約の目的が達成できないときは,契約の解除をすることができ,契約の解除をすることができないときは,損害賠償の請求のみをすることができます。(民法570条,566条1項,判例) また,この契約の解除又は損害賠償責任の請求は,買主がその事実を知った時から1年以内にしなければなりません。(民法570条,566条3項) 宅建業法では,買主が非業者であれば,原則として,この民法の規定よりも買主に不利な特約はしてはならないことになっていますが,その例外として<目的物の引渡しの日から2年以上となる特約>は許されています。(宅建業法・40条1項) 宅建業法のこの規定に反する特約は,無効であり,自ら売主である宅建業者は,宅建業者ではない買主と「瑕疵担保責任を負わない」とする特約を締結することはできないとされています。 (宅建業法・40条2項)
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●条文確認 |
(瑕疵担保責任についての特約の制限) 第40条 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法第570条 において準用する同法第566条第3項 に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。 2 前項の規定に反する特約は、無効とする。 |
4.「宅地建物取引業者が,自ら売主となる割賦販売契約において,「買主の賦払金の支払いの延滞があったときは,売主は,催告をしないで直ちに契約を解除することができる」という特約をした場合,その特約は無効となる。」 |
【正解:○】 ◆割賦販売の契約の解除等の制限 宅建業者は,買主が非業者であれば,自ら売主となる宅地又は建物の割賦販売の契約について賦払金の支払の義務が履行されない場合,30日以上の相当の期間を定めてその支払を書面で催告し,その期間内にその義務が履行されないときでなければ,賦払金の支払の遅滞を理由として,契約を解除し、又は支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することはできません。(宅建業法・42条1項) この規定に反する特約<催告なしに解除できる,催告期間が30日未満など>は,無効です。(宅建業法・42条2項) 本肢での特約は,<延滞があったときは,売主は,催告をしないで直ちに契約を解除することができる>ことになっていて,上の規定に反しているので,この特約そのものが無効になります。
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●条文確認 |
(宅地又は建物の割賦販売の契約の解除等の制限) 第42条 宅地建物取引業者は、みずから売主となる宅地又は建物の割賦販売の契約について賦払金の支払の義務が履行されない場合においては、30日以上の相当の期間を定めてその支払を書面で催告し、その期間内にその義務が履行されないときでなければ、賦払金の支払の遅滞を理由として、契約を解除し、又は支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することができない。
2 前項の規定に反する特約は、無効とする。
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