宅建業法 実戦篇

保証協会・業務上の規制の過去問アーカイブス 昭和58年・問48 

保証協会・手付放棄による契約解除・契約締結時期の制限


宅地建物取引業法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和58年・問48)

1.「宅地建物取引業保証協会に加入しようとする宅地建物取引業者が同保証協会に納付すべき弁済業務保証金分担金の額は,主たる事務所につき60万円,その他の事務所につき事務所ごとに30万円の割合による金額の合計額である。」

2.「宅地建物取引業者が自ら売主となる建物の売買契約の締結に際して手付を受領した場合,当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主は契約の解除をすることができるが,そのためには,その手付の倍額を支払わなければならない。」

3.「宅地建物取引業者は,建物の建築に関する工事の完了前であっても,当該建物の売買の媒介であれば,当該工事に必要な建築確認を受ける前に行って差し支えない。」

4.「宅地建物取引業保証協会の社員であった宅地建物取引業者が国土交通大臣が指定する弁済業務開始日以後に同保証協会の社員の地位を失ったときは,2週間以内に営業保証金を供託しなければならないが,これに違反した場合は,業務停止処分を受けることがある。」

【正解】

× × ×

1.「宅地建物取引業保証協会に加入しようとする宅地建物取引業者が同保証協会に納付すべき弁済業務保証金分担金の額は,主たる事務所につき60万円,その他の事務所につき事務所ごとに30万円の割合による金額の合計額である。」

【正解:

◆弁済業務保証金分担金

 宅建業者は,保証協会に加入しようとする日までに,弁済業務分担金を保証協会に納付します。

 弁済業務分担金は,主たる事務所につき60万円その他の事務所につき事務所ごとに30万円の割合による金額の合計額になります。(宅建業法・64条の9・第1項・第1号,施行令・7条)

   弁済業務保証金分担金  営業保証金
主たる事務所  60万円  1,000万円
従たる事務所  事務所ごとに 30万円    500万円

保証協会に加入後に,新たな事務所を設置したときは,設置の日から2週間以内に,弁済業務分担金を保証協会に納付します。<この期間内に納付しないときは,保証協会の社員の地位を失う。>(宅建業法・64条の9・第2項,第3項)

2.「宅地建物取引業者が自ら売主となる建物の売買契約の締結に際して手付を受領した場合,当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主は契約の解除をすることができるが,そのためには,その手付の倍額を支払わなければならない。」

【正解:×

◆自ら売主の宅建業者の受領する手付−解約手付の性質

 宅建業者が,自ら売主として,宅建業者ではない者と宅地・建物の売買契約を締結するのに際して手附を受領したときは,その手附がいかなる性質のものであっても<つまり,証約手付や違約手付であっても>,

 当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主その手附を放棄して,宅建業者はその倍額を償還して,契約の解除をすることができます。(宅建業法・39条・2項)

 本肢では,<買主は契約の解除をすることができるが,そのためには,その手付の倍額を支払わなければならない。>としているので誤りです。

●関連民法
 判例によれば,当事者間で特に定めがない場合,手付の授受があれば,金額の大小を問わず,原則として解約手付と推定されます。(最高裁・昭和29.1.21,民法・557条・1項)

3.「宅地建物取引業者は,建物の建築に関する工事の完了前であっても,当該建物の売買の媒介であれば,当該工事に必要な建築確認を受ける前に行って差し支えない。」

【正解:×

◆契約締結等の時期の制限−媒介・代理でも適用される

 宅建業者は,未完成物件については,開発許可,建築確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ,自ら当事者として,その売買や交換の契約を締結することは禁じられており,当事者を代理して契約することも,またその売買・交換の媒介をすることも禁止されています。(宅建業法・36条) 。したがって,本肢は誤りです。

未完成物件・・・宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前のもの

  自ら当事者 媒介・代理
売買 交換 賃貸 売買 交換 賃貸
契約締結等の時期の制限  ×   ×    ×  ×  
広告開始時期の制限  ×  ×    ×  ×  ×

 ○・・・制限がない,×・・・制限がある

4.「宅地建物取引業保証協会の社員であった宅地建物取引業者が国土交通大臣が指定する弁済業務開始日以後に同保証協会の社員の地位を失ったときは,2週間以内に営業保証金を供託しなければならないが,これに違反した場合は,業務停止処分を受けることがある。」

【正解:×

◆保証協会の社員の地位を失ったとき−1週間以内に営業保証金を供託する

 保証協会の社員であった宅地建物取引業者が当該保証協会の社員の地位を失ったときは,1週間以内に営業保証金を供託しなければならず,これに違反した場合は,業務停止処分を受けることがあります(宅建業法・64条の15前段,65条2項2号)

 KEY 

保証協会の社員の地位を失ったとき 

1週間以内に営業保証金を供託する。

      ↓違反すると
 監督処分  1年以内の業務停止処分(全部又は一部)


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