宅建業法 実戦篇

業務上の規制・事務所等の過去問アーカイブス 昭和58年・問50 

広告開始時期の制限・供託所等の説明・取引態様の別の明示・報酬額の掲示


次の記述のうち,宅地建物取引業者が宅地建物取引業法違反とならないものはどれか(昭和58年・問50)

1.「は,建物の売却に関する広告を行ったが,当該建物の建築に関する工事の完了前であり,かつ,建築確認も受けていない時点であったため,広告に『売買契約は,建築確認を受けてからでないと締結できません。』と記載した。」

2.「宅地建物取引業保証協会の社員でないは,自ら売主として宅地の売買契約を締結したが,買主に対して,営業保証金の供託所に関する事項を,宅地建物取引主任者でない従業員をして当該売買契約の直前に説明させた。」

3.「は,の所有する宅地について,からその売却の代理を依頼され,当該宅地の売却に関する広告を行った。この広告に,は,の承諾を得たうえ「売主」として表示した。」

4.「は,従たる事務所でのみ宅地建物取引業を行い,主たる事務所では直接宅地建物取引業を行わないので,従たる事務所でのみ国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示した。」

【正解】

違反する 違反しない 違反する 違反する

1.「は,建物の売却に関する広告を行ったが,当該建物の建築に関する工事の完了前であり,かつ,建築確認も受けていない時点であったため,広告に『売買契約は,建築確認を受けてからでないと締結できません。』と記載した。」

【正解:違反する

◆広告開始時期の制限

 広告に『売買契約は,建築確認を受けてからでないと締結できません。』と記載しても,建築確認が必要とされる建築工事で建築確認がなされていない場合,工事完了前に広告をすること自体が禁止されているので,宅建業法に違反します。(宅建業法・33条)

自ら当事者の売買・交換,売買・交換・賃貸の媒介・代理では,宅地の造成又は建築工事の完了前は,当該工事に必要とされる開発許可や建築確認,その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ,広告をしてはならない(宅建業法・33条)
  自ら当事者 媒介・代理
売買 交換 賃貸 売買 交換 賃貸
契約締結等の時期の制限  ×   ×    ×  ×  
広告開始時期の制限  ×  ×    ×  ×  ×

 ○・・・制限がない,×・・・制限がある

   監督処分  罰則
契約締結等の時期の制限 1年以内の業務停止処分

情状が特に重いときは免許取消処分

 特に定められていない 
広告開始時期の制限 指示処分  特に定められていない

2.「宅地建物取引業保証協会の社員でないは,自ら売主として宅地の売買契約を締結したが,買主に対して,営業保証金の供託所に関する事項を,宅地建物取引主任者でない従業員をして当該売買契約の直前に説明させた。」

【正解:違反しない

◆供託所等の説明−契約が成立する前,説明するのは取引主任者でなくてもよい

 宅建業者は,相手方等に対し,契約が成立するまでの間に,営業保証金を供託した供託所及びその所在地について,説明をするようにしなければなりません。<書面を交付して説明することまでは求めていない。>(宅建業法・35条の2)

 また,説明義務は宅建業者に課せられているので,説明させるのは取引主任者でなくてもかまいません。

 本肢では,【売買契約直前に】【取引主任者ではない従業員に】,説明させていますが,宅建業法には違反していません。

保証協会の社員でないとき 営業保証金を供託した主たる事務所のもよりの供託所

及びその所在地

保証協会の社員であるとき 保証協会の社員である旨、

保証協会の名称、住所及び事務所の所在地、

保証協会が供託する供託所及びその所在地

3.「は,の所有する宅地について,からその売却の代理を依頼され,当該宅地の売却に関する広告を行った。この広告に,は,の承諾を得たうえ「売主」として表示した。」

【正解:違反する

◆取引態様の別の明示−代理

 当事者として取引するのか,代理人として取引するのか,取引態様の別を明示しなければならないので(宅建業法・34条・1項),依頼主の承諾を得ていたとしても,「代理人」なのに「売主」として広告に偽りの表示をすることは,宅建業法に違反します。

●広告をするときの明示義務

    売買  交換  賃貸
 業者が契約の当事者  明示義務  明示義務  −
 業者が代理人  明示義務  明示義務  明示義務
 業者が媒介する  明示義務  明示義務  明示義務

 KEY 

   取引態様の別の明示義務 
           ↓違反すると
   監督処分 指示処分
         1年以内の業務停止処分(全部又は一部)
         情状が特に重いときは,免許取消処分

●取引態様の別の明示
(取引態様の明示)
第34条  宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する広告をするときは、自己が契約の当事者となつて当該売買若しくは交換を成立させるか、代理人として当該売買、交換若しくは貸借を成立させるか、又は媒介して当該売買、交換若しくは貸借を成立させるかの別(次項において「取引態様の別」という。)を明示しなければならない。

2  宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する注文を受けたときは、遅滞なく、その注文をした者に対し、取引態様の別を明らかにしなければならない。

取引態様によって,契約締結権限の有無,当事者でないとすれば報酬〔媒介と代理〕などが異なってくるので,広告をするときや注文を受けるときは明示することになっている。

宅建業者間の取引でも適用される。

4.「は,従たる事務所でのみ宅地建物取引業を行い,主たる事務所では直接宅地建物取引業を行わないので,従たる事務所でのみ国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示した。」

【正解:違反する

◆報酬の額の掲示

 宅建業者は,その事務所ごとに,公衆の見やすい場所に,国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければなりません。(宅建業法・46条・4項)

 この規定は主たる事務所・従たる事務所の区別なく適用されるので,主たる事務所で直接宅建業を行わない場合であっても,従たる事務所だけでなく,主たる事務所に報酬の額を掲示する義務があります。

 したがって,本肢は宅建業法に違反します。

 KEY 

   報酬の額の明示明示義務 
           ↓違反すると
   監督処分 指示処分

   罰則  50万円以下の罰金 (宅建業法・83条・1項・2号)


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