宅建業法 実戦篇

宅建業者・自ら売主の制限の過去問アーカイブス 昭和59年・問38 

変更の届出・自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限・
契約締結時期の制限・広告開始時期の制限・手付金等の保全措置


県知事の免許を受けて宅地建物取引業を営む者である。この場合,宅地建物取引業法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(昭和59年・問38)

1.「が事業開始後新たに県内に事務所を設置したときは,当該事務所における業務は,所定の金額の営業保証金を供託し,その旨を県知事に届け出れば開始できるが,県知事への当該事務所の設置の届出は,設置の2週間前までに行わなくてはならない。」

2.「は,第三者が所有する建物について,から取得する契約を締結した上で自ら売主となって販売することは差し支えないが,この契約が予約である場合には,原則として,当該建物を自ら売主となって販売することはできない。」

3.「は,建物の建築に関する工事の完了前においては,当該工事に関し必要とされる建築確認の後でなければ当該工事に係る建物の売買契約をしてはならないが,その広告をすることは差し支えない。」

4.「は,建物の建築に関する工事の完了前において行う当該工事に係る建物の売買で自ら売主となるものに関しては,原則として,一定の手付金等保全措置を講じた後でなければ買主から手付金等を受領することはできないが,当該建物について買主が所有権の登記をしたときはこの限りではない。」

【正解】

× × ×

1.「が事業開始後新たに県内に事務所を設置したときは,当該事務所における業務は,所定の金額の営業保証金を供託し,その旨を県知事に届け出れば開始できるが,県知事への当該事務所の設置の届出は,設置の2週間前までに行わなくてはならない。」

【正解:×

◆従たる事務所を設置したときは,30日以内に変更の届出

 主たる事務所と同一の都道府県内に従たる事務所を設置したときは,30日以内に変更の届出をしなければなりません。<従たる事務所を主たる事務所とは違う都道府県に新設する場合は,国土交通大臣への免許換えをしなければなりません。>

 また,供託した旨の届出をしなければ,新設した事務所の業務を開始することはできません。

 したがって,本肢は前半部分は正しいのですが,後半部分が誤りの記述です。

●従たる事務所を新設したとき
 従たる事務所の新設 ⇒ 30日以内に変更の届出
     ↓
 従たる事務所についての営業保証金の供託 ⇒ 供託した旨の届出
 ↓     <届出期間の指定はない>
 従たる事務所の営業開始

2.「は,第三者が所有する建物について,から取得する契約を締結した上で自ら売主となって販売することは差し支えないが,この契約が予約である場合には,原則として,当該建物を自ら売主となって販売することはできない。」

【正解:×

◆他人物売買の制限−自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限

 から取得する
         契約が予約

 (所有者) ―――――――― (宅建業者,自ら売主) ―― 宅建業者ではない者 

 他人物の物件については,自ら売主として,宅建業者ではない者と売買契約を締結することは,原則として禁止されています。

 しかし,他人物の物件について,その所有権を取得する契約を締結していれば,その契約が予約であっても,自ら売主として,宅建業者ではない者と売買契約を締結することができます(宅建業法・33条の2第1号)

3.「は,建物の建築に関する工事の完了前においては,当該工事に関し必要とされる建築確認の後でなければ当該工事に係る建物の売買契約をしてはならないが,その広告をすることは差し支えない。」

【正解:×

◆建託確認の前は,契約締結,広告開始ともできない

 工事の完了前においては,当該工事に関し必要とされる建築確認<宅地造成工事ならば,開発許可>その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ,契約締結等をしてはならず,また広告をしてはならないので,本肢は誤りです。(宅建業法・36条,33条)

  自ら当事者 媒介・代理
売買 交換 賃貸 売買 交換 賃貸
契約締結等の時期の制限  ×   ×    ×  ×  
広告開始時期の制限  ×  ×    ×  ×  ×

 ○・・・制限がない,×・・・制限がある

   監督処分  罰則
契約締結等の時期の制限 1年以内の業務停止処分

情状が特に重いときは免許取消処分

 特に定められていない 
広告開始時期の制限 指示処分  特に定められていない

整理契約締結時期の制限,自己の所有に属さない宅地又は建物の売買契約締結時期の制限 

   建築確認等の前  建築確認等の後で完了前
 買主が宅建業者   契約締結できない  手付金等の保全措置を
 講じなくても,契約締結できる。
 買主が宅建業者ではない   契約締結できない  手付金等の保全措置を
 講じれば,契約締結できる。
※手付金等の合計が代金の5%以下,かつ,1,000万円以下であるとき,買主が所有権の登記をしたとき(保存登記),買主への所有権移転登記がされたときは保全措置は不要。

4.「は,建物の建築に関する工事の完了前において行う当該工事に係る建物の売買で自ら売主となるものに関しては,原則として,一定の手付金等保全措置を講じた後でなければ買主から手付金等を受領することはできないが,当該建物について買主が所有権の登記をしたときはこの限りではない。」

【正解:

◆買主が所有権の登記をしたときは,手付金等の保全措置を講じなくてもよい

 買主がすでに売買物件である当該土地及び建物の所有権の登記をしていれば,手付金等の保全措置を講じる必要はありません(宅建業法・41条・1項)

●手付金等保全措置
 【宅建業者が自ら売主として,宅建業者ではない買主と売買契約を締結するときの制限】

 原則 宅建業者は,保全措置を講じた後でなければ,手付金等を受領できない。

1) 受領しようとする時点での手付金等が以下の場合は,保全措置を講じなくてよい。

未完成物件  代金の5%以下,かつ,1,000万円以下
完成物件  代金の10%以下,かつ,1,000万円以下

2) 買主への所有権移転登記がされたとき,又は,買主が売買物件の所有権の登記をしたときは,保全措置を講じなくてもよい。


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