宅建業法 実戦篇
自ら売主の制限・媒介契約・業務上の規制の過去問アーカイブス 昭和59年・問44
瑕疵担保責任の特約の制限・34条の2書面・信用の供与による契約締結誘引の禁止・
監督処分
宅地建物取引業者Aは,自己の所有するマンションの売却の媒介を宅地建物取引業者Bに依頼し,この結果,Bの媒介により,宅地建物取引業者でないCとの間に売買契約が成立した。この場合,宅建物取引業法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。 |
1.「AC間の売買契約において,Aが瑕疵担保責任を負うべき期間を『Cが目的物に関する瑕疵の事実を知ったときから1年6ヵ月』とした場合,この特約は有効である。」 |
2.「Bが,AB間の媒介契約の内容を記載した書面を作成してAにこれを交付することを怠った場合,Bは業務停止処分を受けることがある。」 |
3.「Bが,Aに頼まれて,当該マンションの重大な欠陥について故意にその事実をCに告げなかった場合,Bは,監督処分を受けることはあっても罰金に処せられることはない。」 |
4.「Bが,Cに対して手附について貸付けをすることにより,Aとの売買契約の締結を誘引してはならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | × | ○ |
1.「AC間の売買契約において,Aが瑕疵担保責任を負うべき期間を『Cが目的物に関する瑕疵の事実を知ったときから1年6ヵ月』とした場合,この特約は有効である。」 |
【正解:○】 ◆瑕疵担保責任−宅建業法に反した特約は無効 宅建業者B 宅建業者は,買主等が宅建業者でない場合,瑕疵担保責任について,宅建業法の規定と異なる特約をすることはできますが,宅建業法の規定に反した特約は無効とされており,特約が無効の場合は,民法の原則<事実を知ったときから1年以内に,損害賠償又は解除をすることができる。>に立ち戻ることになります。(宅建業法・40条2項) 本肢では,<瑕疵の事実を知ったときから1年6ヵ月>は宅建業法の規定<引渡しの日から2年以上>に反しないので有効です。 ⇒『瑕疵を知ったときから』とすると『引渡し』を起点とするよりも,範囲が広くなります。 |
2.「Bが,AB間の媒介契約の内容を記載した書面を作成してAにこれを交付することを怠った場合,Bは業務停止処分を受けることがある。」 |
【正解:○】 ◆業者間取引でも,媒介書面の交付 宅建業者B 媒介契約や代理契約についての宅建業法の規定は,宅建業者間の取引にも適用されます。 依頼者が宅建業者である場合も,媒介契約の内容を記載した書面を作成して交付しなければいけません。(宅建業法・34条の2・第1項)
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3.「Bが,Aに頼まれて,当該マンションの重大な欠陥について故意にその事実をCに告げなかった場合,Bは,監督処分を受けることはあっても罰金に処せられることはない。」 |
【正解:×】 ◆事実の不告知(故意) 宅建業者B 35条の重要事項に該当しなくても,取引の相手方に重大な不利益をもたらすおそれのある事項について,故意に事実を告知しなかったり,事実とは違う不実のことを告げることは禁止されています(宅建業法・47条・第1号)。 本肢での<マンションの重大な欠陥について故意にその事実をCに告げなかった>ことは,47条1号の『重要な事項の故意の不告知』に該当し,違反すると業務停止処分になるほか,罰則として<2年以下の懲役,もしくは100万円以下の罰金,又は併科>に処せられるので,本肢は誤りです。
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●業務に関する禁止事項 |
(業務に関する禁止事項) 第47条 宅地建物取引業者は,その業務に関して,宅地建物取引業者の相手方等に対し,次に掲げる行為をしてはならない。 1号 宅地若しくは建物の売買,交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し,又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため,次のいずれかに該当する事項について,故意に事実を告げず,又は不実のことを告げる行為 イ 第35条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項 |
4.「Bが,Cに対して手附について貸付けをすることにより,Aとの売買契約の締結を誘引してはならない。」 |
【正解:○】 ◆手附について信用の供与をすることによって契約の締結を誘引する行為は禁止 宅建業者B 宅建業者は,その業務に関して,相手方等に対し,手附について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為をすることは禁止されています(宅建業法・47条・第3号)。 契約が実際に締結されなくても,信用の供与によって契約の締結を誘引する行為そのものが禁止されていることに注意してください。
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