宅建業法 実戦篇
営業保証金の過去問アーカイブス 昭和60年・問40
宅地建物取引業法に規定する営業保証金に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和60年・問40) |
1.「営業保証金は,金銭のほか,国債証券,地方債証券,その他国土交通省令で定める有価証券でも供託できるが,有価証券はその種類に応じて,額面金額の90/100又は80/100のいずれかの価額に評価される。」 |
2.「宅地建物取引業者に対し宅地建物取引業に関する取引により生じた債権を有する者は,当該宅地建物取引業者の免許が取り消された場合でも,当該宅地建物取引業者が供託した営業保証金の還付を受けることができる。」 |
3.「宅地建物取引業者は,営業保証金が還付されたため営業保証金の額に不足を生じた旨の通知書の送付を受けたときは,その送付を受けた日から2週間以内に不足額を供託しなければならない。」 |
4.「金銭以外のもので営業保証金を供託している宅地建物取引業者は,その主たる事務所を移転したためそのもよりの供託所が変更したときは,遅滞なく,営業保証金を移転後の主たる事務所のもよりの供託所に新たに供託しなければならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
1.「営業保証金は,金銭のほか,国債証券,地方債証券,その他国土交通省令で定める有価証券でも供託できるが,有価証券はその種類に応じて,額面金額の90/100又は80/100のいずれかの価額に評価される。」 |
【正解:×】 ◆有価証券での供託 営業保証金や保証協会の弁済業務保証金は,国債証券,地方債証券その他の国土交通省令で定める有価証券(振替社債等を含む。国土交通省令では31種類の有価証券が指定されている。)で供託することができます(宅建業法・25条3項,64条の7・第3項,施行規則・15条の2・第1項)。 ただし,有価証券の価額は,以下の有価証券の区分に従い,額面金額(発行価額に一定の算出方式で加算した額を額面金額とみなすものもある),額面金額の90/100,80/100のいずれかになります(施行規則・15条・1項)。 本肢では,三つのうちの額面金額が抜けているので,誤りです。
<割引の方法により発行した債券で供託の日から償還期限までの期間が5年を超えるものについての適用では,その発行価額に別記算式により算出した額を加えた額を額面金額とみなす。 >(施行規則・15条・1項) |
2.「宅地建物取引業者に対し宅地建物取引業に関する取引により生じた債権を有する者は,当該宅地建物取引業者の免許が取り消された場合でも,当該宅地建物取引業者が供託した営業保証金の還付を受けることができる。」 |
【正解:○】 ◆免許取消しになった宅建業者の営業保証金の還付 免許が取り消された宅建業者と宅建業に関して生じた債権を有する者も,その宅建業者が供託した営業保証金の還付を受けることができます(宅建業法・27条1項)。 ▼有効期間の満了や免許が取り消された場合でも,取消し前に行った取引が結了する目的のその範囲内では宅建業者とみなされます(宅建業法・76条)。 |
3.「宅地建物取引業者は,営業保証金が還付されたため営業保証金の額に不足を生じた旨の通知書の送付を受けたときは,その送付を受けた日から2週間以内に不足額を供託しなければならない。」 |
【正解:○】 ◆不足額の供託 宅建業者は,営業保証金が還付されて不足を生じたとき,免許権者から通知書の送付を受けた日から2週間以内に不足額を供託しなければなりません(宅建業法・28条1項,営業保証金規則4条)。
▼宅建業者は,供託した日から2週間以内に,供託物受入れの記載のある供託書の写しを添附して,供託した旨を免許権者に届け出なければなりません(宅建業法・28条2項)。 |
4.「金銭以外のもので営業保証金を供託している宅地建物取引業者は,その主たる事務所を移転したためそのもよりの供託所が変更したときは,遅滞なく,営業保証金を移転後の主たる事務所のもよりの供託所に新たに供託しなければならない。」 |
【正解:○】 ◆<金銭以外 (有価証券のみ) or 金銭+有価証券>での供託 ⇒ 移転後の主たる事務所のもよりの供託所に,遅滞なく供託する 主たる事務所を移転したためにもよりの供託所が変更になった場合, ・金銭によって供託しているときは供託している供託所に対して<移転後の主たる事務所の供託所への保管替えの請求>をし, ・金銭+有価証券,有価証券によって供託しているときは<移転後の主たる事務所のもよりの供託所に新たに供託>することになります(宅建業法・29条1項)。
※<有価証券のみ,or 有価証券+金銭>によって供託しているときには,保管替えの請求をすることはできない。 |