宅建業法 実戦篇
媒介契約の過去問アーカイブス 昭和60年・問50
宅地建物取引業者Aは,BからB所有の土地付建物の売却の媒介を依頼され,これを承諾した。この場合,宅地建物取引業法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。 |
1.「AB間の媒介契約がBが他の宅地建物取引業者に重ねて売買の媒介又は代理を依頼できるものである場合,当該媒介契約において,Aがその業務の処理状況を3週間に1回以上報告する旨の定めをすることができる。」 |
2.「Bが宅地建物取引業者である場合には,Aは媒介契約の内容を記載した書面を作成して,Bに交付する必要はない。」 |
3.「AB間の媒介契約が専任媒介契約であって,かつ,国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づくものでない場合には,Bが他の宅地建物取引業者の媒介又は代理により売買契約を成立させたときの措置は,特に定める必要はない。」 |
4.「Aは,当該土地付建物を売買すべき価額についてBが希望する価額より高い価額を意見として述べようとするときは,特にその根拠を明らかにする必要はない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
●売買・交換の媒介・代理の契約締結後,遅滞なく交付する34条の2の書面 |
宅建業者が,宅地・建物の売買・交換の媒介をする契約を締結したときは,
宅建業者に,媒介書面 (34条の2の書面) の交付が義務付けられていますが, 宅地・建物の貸借についての媒介では,媒介書面の交付の義務はありません。 ※媒介書面の記名押印は,宅建業者がすることになっています。取引主任者が記名押印するのではありません(宅建業法・34条の2・第1項)。 ※売買・交換の代理を依頼する契約では,媒介を依頼する契約の規定が準用されています(宅建業法・34条の3)。 |
KEY |
(売買・交換についての) 媒介書面の交付を怠ると 監督処分 1年以内の業務停止処分(全部又は一部) 情状が特に重いときや業務停止処分に違反したときは ▼37条書面を交付しなかったときは監督処分のほかに50万円以下の罰金が ▼媒介書面に宅建業者が記名押印をしなかったときの監督処分は,指示処分〜。 |
1.「AB間の媒介契約がBが他の宅地建物取引業者に重ねて売買の媒介又は代理を依頼できるものである場合,当該媒介契約において,Aがその業務の処理状況を3週間に1回以上報告する旨の定めをすることができる。」 |
【正解:○】 ◆業務処理状況の報告義務 依頼を受けた後の業務処理状況の報告義務は,下表のとおりです。一般媒介契約では,もともと業務処理状況を報告する義務はありませんが,依頼者との間で,3週間に1回以上報告する旨の定めをすることはできます。 ●業務処理状況の報告義務
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●一般媒介契約と専任媒介契約の違い | |||||||||||
●業務処理状況の報告義務 (⇒ 肢1参照) ●契約の有効期間
●媒介契約締結後に指定流通機構に登録しなければならない期間
●媒介書面の記載事項 (⇒ 肢3参照) |
2.「Bが宅地建物取引業者である場合には,Aは媒介契約の内容を記載した書面を作成して,Bに交付する必要はない。」 |
【正解:×】 ◆売買・交換の媒介書面の交付は,相手方が宅建業者でも省略できない 媒介書面(34条の2書面),重要事項説明での35条書面,契約書面(37条書面)は,相手方等が宅建業者でも省略できない(宅建業法・78条2項)ので,本肢は誤りです。
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3.「AB間の媒介契約が専任媒介契約であって,かつ,国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づくものでない場合には,Bが他の宅地建物取引業者の媒介又は代理により売買契約を成立させたときの措置は,特に定める必要はない。」 |
【正解:×】 ◆他の宅建業者の媒介・代理により契約を成立させたときの措置 媒介契約が専任媒介契約 (専属専任媒介契約も含む。) であるときは,<依頼者が他の宅建業者の媒介代理により契約を成立させたときの措置>を,媒介書面に記載しなければなりません(宅建業法・34条の2・第1項・3号,7号,施行規則・15条の7・第1号)。したがって,本肢は誤りです。 これは,標準媒介契約約款に基づくものかどうかには関係なく,記載することになっています。 なお,媒介契約の別により,媒介契約書面に記載する事項は次のように分かれています。
▼媒介契約書面には,一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の如何にかかわらず,国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの別を記載しなければなりません(宅建業法・34条の2・第1項・7号,施行規則・15条の7・第4号)。 |
4.「Aは,当該土地付建物を売買すべき価額についてBが希望する価額より高い価額を意見として述べようとするときは,特にその根拠を明らかにする必要はない。」 |
【正解:×】 ◆価額・評価額について意見を述べるときは根拠を明らかにする 宅建業者が,宅地・建物の売買・交換の媒介契約をするときに,媒介する宅地・建物の価額や評価額について意見を述べるときには,求められなくてもその根拠を明らかにしなければいけません(宅建業法・34条の2・第2項)。したがって,本肢は宅建業法に違反し,誤りです。
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