宅建業法 実戦篇
業務上の規制・事務所等の過去問アーカイブス 平昭和62年・問44
秘密の保持・従業者証明書のの提示・帳簿・不当な履行遅延の禁止
次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定によれば,誤っているものはどれか。(昭和62年・問44) |
1.「宅地建物取引業者は,正当な理由がなければ,その業務上知り得た秘密を他にもらしてはならないが,宅地建物取引業を営まなくなった後は,この限りではない。」 |
2.「宅地建物取引業者の従業者は,取引の関係者の請求があったときは,その従業者であることを証する証明書を提示しなければならない。」 |
3.「本店及び支店で宅地建物取引業を営む宅地建物取引業者は,本店だけでなく支店においてもその業務に関する帳簿を備えなければならない。」 |
4.「宅地建物取引業者は,その業務に関してなすべき宅地若しくは建物の登記若しくは引渡し又は取引に係る対価の支払を不当に遅延する行為をしてはならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
1.「宅地建物取引業者は,正当な理由がなければ,その業務上知り得た秘密を他にもらしてはならないが,宅地建物取引業を営まなくなった後は,この限りではない。」 |
【正解:×】 ◆秘密を守る義務 宅建業者は,正当な理由がなければ,業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはいけません。これは,宅建業を営まなくなった後でも,同じです(宅建業法・45条)。 したがって,本肢は誤りです。 ※正当な理由・・・裁判での証言,税務署員からの質問,取引の相手方の利害に係ること,本人の承諾があるものなど。
▼宅建業者の使用人その他の従業者にも,この守秘義務があります。(宅建業法・75条の2)⇒罰則は50万円以下の罰金。 宅建業者,従業者どちらの場合の守秘義務違反も,被害者の意思を尊重するため,いわゆる親告罪とされており,被害者等から告訴がなければ公訴を提起することはできません(宅建業法・83条・3項)。 |
2.「宅地建物取引業者の従業者は,取引の関係者の請求があったときは,その従業者であることを証する証明書を提示しなければならない。」 |
【正解:○】 ◆従業者証明書 宅建業者は,従業者に,従業者証明書を携帯させる義務があり,携帯させなければその者を業務に従事させてはいけません(宅建業法48条1項)。 また,従業者は,取引の関係者の請求があったときは,その従業者であることを証する証明書を提示しなければなりません(宅建業法48条2項)。
▼宅建業者は,その事務所ごとに,従事者名簿 (電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスクを含む。) を備えなければならず(宅建業法48条3項),取引の関係者から請求があったときは,従事者名簿をその者の閲覧に供しなければなりません(宅建業法48条4項)。 また,従事者名簿は,最終の記載をした日から10年間保存しなければならないとされています(宅建業法施行規則17条の2第4項)。 |
3.「本店及び支店で宅地建物取引業を営む宅地建物取引業者は,本店だけでなく支店においてもその業務に関する帳簿を備えなければならない。」 |
【正解:○】 ◆帳簿の備え付け−閉鎖後5年間は保存しなければならない− 宅建業者は,その事務所ごとに,その業務に関する帳簿 (電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスクを含む。) を備え,宅建業に関し取引のあったつど,その年月日,その取引に係る宅地又は建物の所在及び面積その他国土交通省令で定める事項を記載しなければなりません(宅建業法49条,施行規則18条1項,2項)。 また,帳簿は,閉鎖後5年間保存(当該宅地建物取引業者が自ら売主となる新築住宅に係るものは10年間)しなければならないとされています(宅建業法施行規則18条3項)。 ※帳簿は,各事業年度の末日をもって閉鎖します。
●保存期間の違いに注意
▼開業後5年経過した時点 (開業後6年目) では,開業1年目の帳簿も保存されていることになり,免許証の有効期間の5年と符合することになります。 |
4.「宅地建物取引業者は,その業務に関してなすべき宅地若しくは建物の登記若しくは引渡し又は取引に係る対価の支払を不当に遅延する行為をしてはならない。」 |
【正解:○】 ◆不当な履行遅延の禁止 宅建業者は,その業務に関してなすべき宅地・建物の登記,引渡し,取引に係る対価の支払を不当に遅延する行為をしてはいけません(宅建業法44条)。
|