宅建業法 実戦篇

媒介契約と自ら売主の制限の過去問アーカイブス 昭和63年・問39 

有効期間・買取特約・損害賠償額の予定等の制限・瑕疵担保責任の特約の制限


次の記述のうち,宅地建物取引業法の規定によれば,誤っているものはどれか。
(昭和63年・問39)

1.「宅地建物取引業者が締結した宅地の売却に関する専任媒介契約において,「有効期間は4月」との特約をした場合であっても,その有効期間は3月となる。」

2.「宅地建物取引業者が締結した宅地の売却に関する専任媒介契約において,「有効期間内に売却できなかった場合,依頼者の希望があれば媒介価格で媒介業者が買い取る」との特約をした場合には,その特約は無効となる。」

3.「宅地建物取引業者が自ら売主となり宅地建物取引業者でない者と締結した宅地の売買契約において,「予定する損害賠償の額と違約金の額をそれぞれ代金の額の2/10とする」との特約をした場合であっても,予定する損害賠償の額と違約金の額を合算した額は,代金の2/10となる。」

4.「宅地建物取引業者が自ら売主となり宅地建物取引業者でない者と締結した宅地の売買契約において,「目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し,損害賠償を請求することができる期間は,目的物の引渡しの日から1年」との特約をした場合には,その特約は無効とされ,買主は,瑕疵があることを知ったときから1年以内であれば,損害賠償を請求することができる。」

【正解】

×

1.「宅地建物取引業者が締結した宅地の売却に関する専任媒介契約において,「有効期間は4月」との特約をした場合であっても,その有効期間は3月となる。」

【正解:

◆専任媒介契約の有効期間は3ヵ月

 専任媒介契約・専属専任媒介契約の有効期間は3月を超えることはできず,これより長い期間を定めても,3月を超える期間については無効で,有効期間は3月になります(宅建業法34条の2第3項)

 KEY 

3月より長い有効期間を定めたとき 

3月を超える期間について無効 

2.「宅地建物取引業者が締結した宅地の売却に関する専任媒介契約において,「有効期間内に売却できなかった場合,依頼者の希望があれば媒介価格で媒介業者が買い取る」との特約をした場合には,その特約は無効となる。」

【正解:×

◆媒介価額で買い取る旨の特約

 下記により,<売主が宅建業者に安く売ることを義務付けず,売主の希望があれば宅建業者が買い取るべきことを定めたのみであれば差し支えない>とされているので,<依頼者の希望があれば媒介価格で媒介業者が買い取る>旨の特約は無効ではなく,有効だと考えられるので,誤りです。

●宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 (国土交通省)
一定の期間中に目的物件の売却ができなかったときは,宅地建物取引業者が媒介価額を下回る価額で買い取る旨の特約は,売主が宅地建物取引業者に安く売ることを義務付けず,売主の希望があれば宅地建物取引業者が買い取るべきことを定めたのみであれば差し支えない。(第34条の2関係・3標準媒介契約約款について)

3.「宅地建物取引業者が自ら売主となり宅地建物取引業者でない者と締結した宅地の売買契約において,「予定する損害賠償の額と違約金の額をそれぞれ代金の額の2/10とする」との特約をした場合であっても,予定する損害賠償の額と違約金の額を合算した額は,代金の2/10となる。」

【正解:

◆損害賠償額の予定等の制限−20%超の部分は無効

 宅建業者は,自ら売主として宅建業者ではない者と売買契約を締結する際に,債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の予定額と違約金の額の合計額が代金の20%を超えることとなる定めをしてはいけません。これに反する特約をしたときは,代金の20%を超える部分について無効になります(宅建業法38条)

 本肢では,「予定する損害賠償の額と違約金の額をそれぞれ代金の額の20%とする」との特約をした場合であっても,予定する損害賠償の額と違約金の額を合算した額は,代金の20%となるので,正しい記述です。

 KEY 

 宅地建物の売買を不特定多数のものに反復継続して行う

宅建業の免許が必要

4.「宅地建物取引業者が自ら売主となり宅地建物取引業者でない者と締結した宅地の売買契約において,「目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し,損害賠償を請求することができる期間は,目的物の引渡しの日から1年」との特約をした場合には,その特約は無効とされ,買主は,瑕疵があることを知ったときから1年以内であれば,損害賠償を請求することができる。」

【正解:

◆瑕疵担保責任の特約

 宅建業者は,自ら売主として宅建業者ではない者と売買契約を締結する際に,瑕疵担保責任について,<目的物の引渡しの日から2年以上となる特約>となる場合を除いて民法の規定 (買主が隠れた瑕疵を知ったときから1年以内に,担保責任を負う) よりも買主に不利な特約はしてはならないことになっています(宅建業法・40条1項)

 また,これに反した特約は無効です(宅建業法・40条2項)

 本肢では,<目的物の引渡しの日から1年>なので,宅建業法の特則である『引渡しの日から2年以上』にも,また,民法の規定にも反し,無効となります。

 この場合に買主が担保責任を追及ことができるのは,民法の規定どおり,<隠れた瑕疵があることを知ったときから1年以内>になります。

 KEY 

 引渡しから2年未満とする特約をすると,その特約は無効になる。
                    ↓
 この場合の瑕疵担保責任の請求は
 民法の原則に立ち戻って,
 買主が事実を知ってから1年以内になる。


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