税法その他 実戦篇
土地の過去問アーカイブス 平成5年・問1
がけ面の保護・盛土と段切り・軟弱地盤・産業廃棄物処分場跡地
土地に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成5年・問1) |
1.「地山を切土して宅地を造成する場合,風化による強度の低下と流水による浸蝕のおそれがあるので,擁壁で覆うか,又は速やかに植生等をして,そのがけ面を保護しなければならない。」 |
2.「著しく傾斜している谷に盛土して宅地を造成する場合,盛土前の地盤と盛土が接する面がすべり面となって崩壊するおそれがあるので,原地盤に繁茂している樹木を残したまま盛土を行って,その安定を図らなければならない。」 |
3.「高含水性の粘性土等が堆積している軟弱地盤は,盛土や建物の荷重によって大きな沈下を生じたり,側方に滑動したりすることがあるので,開発事業に当たっては,十分注意しなければならない。」 |
4.「産業廃棄物の処分場跡地を宅地に利用する場合は,あらかじめ,長時間をかけて,ガス抜き,浸出水の浄化,地盤沈下等の観測等を行わなければならない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
1.「地山を切土して宅地を造成する場合,風化による強度の低下と流水による浸蝕のおそれがあるので,擁壁で覆うか,又は速やかに植生等をして,そのがけ面を保護しなければならない。」 |
【正解:○】 ◆切土でのがけ面の保護 地山を切土して宅地を造成する場合に,風化による強度の低下と流水による浸蝕のおそれがあるので,擁壁で覆う,のり面緑化工,構造物によるのり面保護工,のり面排水工などののり面保護工の措置をしなければなりません。 問題文では,<擁壁で覆うか,又は速やかに植生等>となっていて,直接には,構造物によるのり面保護や排水工が書いてありませんが,<等>となっているのでそれらも含まれていると考えます。
▼切土又は盛土をした土地の部分に生ずるがけ面は,原則として,崩壊を防ぐために,擁壁でおおわなければならない(宅地造成等規制法施行令5条)。⇒ 都市計画法施行規則第23条第1項にも同様のものがある。 ▼切土又は盛土をした土地の部分に生ずることとなるがけを擁壁でおおわないときは、そのがけ面は、石張り、芝張り、モルタルの吹付け等によつて風化その他の侵食に対して保護しなければならない(宅地造成等規制法施行令12条)。 ▼建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない(建築基準法19条4項)。 |
●都市計画法33条の開発規準 |
政令で定める規模以上の開発行為にあつては、開発区域及びその周辺の地域における環境を保全するため、開発行為の目的及び第2号イからニまでに掲げる事項を勘案して、開発区域における植物の生育の確保上必要な樹木の保存、表土の保全その他の必要な措置が講ぜられるように設計が定められていること(都市計画法・33条1項9号)。
註 33条1項2号イ〜二 イ 開発区域の規模、形状及び周辺の状況 |
2.「著しく傾斜している谷に盛土して宅地を造成する場合,盛土前の地盤と盛土が接する面がすべり面となって崩壊するおそれがあるので,原地盤に繁茂している樹木を残したまま盛土を行って,その安定を図らなければならない。」 |
【正解:×】 ◆斜面地での盛土 ⇒ 段切り 原地盤に繁茂している樹木を残したまま盛土を行うと崩壊する恐れがあるので,斜面を段切りして削り取るなどして地すべりや斜面崩壊の発生を防ぐ必要があります。 |
3.「高含水性の粘性土等が堆積している軟弱地盤は,盛土や建物の荷重によって大きな沈下を生じたり,側方に滑動したりすることがあるので,開発事業に当たっては,十分注意しなければならない。」 |
【正解:○】 ◆軟弱地盤 軟弱地盤の宅地造成では,盛土や建物の荷重によって大きな沈下を生じたり,側方に滑動したりすることがあるので,地盤改良や擁壁の設置などの安全対策工事が都市計画法・宅地造成等規制法で定められています。 |
●都市計画法33条の開発規準 |
開発区域内の土地が、地盤の軟弱な土地、がけ崩れ又は出水のおそれが多い土地その他これらに類する土地であるときは、地盤の改良、擁壁の設置等安全上必要な措置が講ぜられるように設計が定められていること (都市計画法・33条1項7号)。 |
4.「産業廃棄物の処分場跡地を宅地に利用する場合は,あらかじめ,長時間をかけて,ガス抜き,浸出水の浄化,地盤沈下等の観測等を行わなければならない。」 |
【正解:○】 ◆産業廃棄物の処分場跡地 本肢の記述の通りですが,最近の法改正等での補足をしておきます。 産業廃棄物処分場跡地も開発され宅地として利用されることがあります。産業廃棄物の処理については廃棄物処理法,処分地跡地については条例など(横浜市の例)のほか,指定区域(廃棄物処理法15条の17,施行令13条の2)では,土地掘削・土地形質変更を行う場合の都道府県知事への事前届出も課せられています。 指定区域では,土地の形質の変更に着手する日の30日前までに,環境省令で定めるところにより,当該土地の形質の変更の種類,場所,施行方法及び着手予定日その他環境省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければいけません(廃棄物処理法15条の19)。 指定区域内で環境省令で定める基準に適合しない土地の形質の変更が行われた場合,生活環境の保全上の支障が生じ,又は生ずるおそれがあると認められるときは,都道府県知事は,必要な限度において,当該土地の形質の変更をした者に対し,期限を定めて,その支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができます(廃棄物処理法19条の10)。 |