税法その他 実戦篇

不当景品類及び不当表示防止法・公正競争規約の過去問アーカイブス 

平成11年・問47 


宅地建物取引業者が行う広告に関する次の記述のうち,不当景品類及び不当表示防止法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成11年・問47)

1.「不動産の販売広告において,自己の販売する物件の価格等の取引条件が競争事業者のものより有利である旨表示し,一般消費者を誘引して顧客を獲得しても,その取引条件の有利性についての具体的かつ客観的な根拠を広告に示していれば,不当表示となるおそれはない。」

2.「不動産の販売広告に係る甲物件の取引を顧客が申し出た場合に,甲物件に案内することを拒否したり,甲物件の難点を指摘して取引に応じることなく顧客に他の物件を勧めたときでも,甲物件が存在していれば,その広告は不当表示となるおそれはない。」

3.「新聞の折込広告において,分譲住宅40戸の販売を一斉に開始して1年経過後,売れ残った住宅30戸の販売を一時中止し,その6ヵ月後に一般日刊新聞紙の紙面広告で当該住宅を 「新発売」 と表示して販売したときでも,広告媒体が異なるので,不当表示となるおそれはない。」

4.「市街化調整区域内に所在する土地 (開発許可を受けた開発区域内の土地その他の一定の土地を除く) の販売広告においては, 「市街化調整区域」 と表示し,このほかに 「現在は建築不可」 と表示さえすれば,市街化区域への区分の変更が行われる予定がないとしても,不当表示となるおそれはない。」

【正解】

× × ×

1.「不動産の販売広告において,自己の販売する物件の価格等の取引条件が競争事業者のものより有利である旨表示し,一般消費者を誘引して顧客を獲得しても,その取引条件の有利性についての具体的かつ客観的な根拠を広告に示していれば,不当表示となるおそれはない。」

【正解:平成11年,

◆不当な比較広告の禁止−競争事業者よりも優位に立つことを意味する用語

〔解1〕景品表示法

 価格等の取引条件が競争事業者のものより有利である旨表示しても,その取引条件の有利性についての具体的かつ客観的な根拠を広告に示していれば,不当表示となるおそれはありません(景品表示法4条)

〔解2〕競争事業者のものより優位である旨の用語の禁止

 自己の販売する物件の価格等の取引条件が競争事業者のものより優位である旨の用語を表示しても,合理的な根拠を示す資料を有している場合は不当表示にはなりません(不動産の表示に関する公正競争規約・18条2項2号)

〔解3〕不当な比較広告の禁止の面でも考えることができます。

 事業者は,比較広告において,実証されていない,または実証することができない事項を挙げて比較する表示をすることができません(不動産の表示に関する公正競争規約・22条1号)

 しかし,本肢の場合,具体的かつ客観的な根拠を広告に示しているので,不当表示となるおそれはありません。

不当景品類及び不当表示防止法
(不当な表示の禁止)
第4条
 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号に掲げる表示をしてはならない。

一  商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示

二  商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示

三  前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認めて公正取引委員会が指定するもの

2  公正取引委員会は、前項第一号に該当する表示か否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、第六条第一項及び第二項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。

●不動産の表示に関する公正競争規約

(特定用語の使用基準)
第18条  2項 事業者は、次に掲げる用語を用いて表示するときは、それぞれ当該表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除き、当該用語を使用してはならない。

(2) 物件の形質その他の内容、価格その他の取引条件又は事業者の属性に関する事項について、「日本一」、「日本初」、「業界一」、「超」、「当社だけ」、「他に類を見ない」、「抜群」等、競争事業者の供給するもの又は競争事業者よりも優位に立つことを意味する用語

(不当な二重価格表示)
第20条 事業者は、物件の価格、賃料又は役務の対価について、二重価格表示(実際に販売する価格(以下「実売価格」という。)にこれよりも高い価格(以下「比較対照価格」という。)を併記する等の方法により、実売価格に比較対照価格を付すことをいう。)をする場合において、事実に相違する広告表示又は実際のもの若しくは競争事業者に係るものよりも有利であると誤認されるおそれのある広告表示をしてはならない。

 (不当な比較広告)
第22条 事業者は、比較広告において、次に掲げる広告表示をしてはならない。

(1) 実証されていない、又は実証することができない事項を挙げて比較する表示

(2) 一般消費者の物件等の選択にとって重要でない事項を重要であるかのように強調して比較するもの及び比較する物件等を恣意的に選び出すなど不公正な基準によって比較する表示

(3) 一般消費者に対する具体的な情報ではなく、単に競争事業者又はその物件等誹謗し又は中傷する表示

2.「不動産の販売広告に係る甲物件の取引を顧客が申し出た場合に,甲物件に案内することを拒否したり,甲物件の難点を指摘して取引に応じることなく顧客に他の物件を勧めたときでも,甲物件が存在していれば,その広告は不当表示となるおそれはない。」

【正解:×昭和58年,61年,平成元年,5年,8年,10年,11年,12年,

おとり広告−取引する意思のない物件

 自ら広告しておきながら物件の案内を拒否し,難点をことさらに指摘する等して,その物件の取引に応じないというのは「取引する意思がない」ということです。勧めたほかの物件が実際に存在しているかどうかには関係ありません。

 宅建業法では,取引する意思のない物件について広告することはおとり広告であり,誇大広告として禁止されています。(宅地建物取引業法・32条)

 表示に関する公正競争規約でも,取引する意思のない不動産について,取引できると誤認させるおそれのある表示は『おとり広告』として禁止されています。

表示に関する公正競争規約

(おとり広告)
第21条 事業者は、次に掲げる広告表示をしてはならない。

(1) 物件が存在しないため、実際には取引することができない物件に関する表示

(2) 物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示

(3) 物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示

3.「新聞の折込広告において,分譲住宅40戸の販売を一斉に開始して1年経過後,売れ残った住宅30戸の販売を一時中止し,その6ヵ月後に一般日刊新聞紙の紙面広告で当該住宅を 「新発売」 と表示して販売したときでも,広告媒体が異なるので,不当表示となるおそれはない。」

【正解:×

◆新発売

 新発売という文言は,新築の住宅又は新たに造成された宅地(工事完了前のものを含む。)であって,一般消費者に対し、初めて購入の申込みの勧誘を行うという意味で用いなければなりません。

 一団地を数期に分けて販売するときには,期ごとに新発売という文言を用いることができますが,本肢のように,一度販売開始して中止した後販売を再開して,売れ残ったものについて新発売と表示することは不当表示の恐れがあります。

表示に関する公正競争規約

(特定用語の使用基準)
第18条  事業者は、次に掲げる用語を用いて表示するときは、それぞれ当該各号に定める意義に即して使用しなければならない。

(その他の不当表示)(1) 新築  建築後1年未満であって、居住の用に供されたことがないものをいう。

(2) 新発売 新たに造成された宅地又は新築の住宅(造成工事又は建築工事完了前のものを含む。)について、一般消費者に対し、初めて購入の申込みの勧誘を行うこと(一団の宅地又は建物を数期に区分して販売する場合は、期ごとの勧誘)をいい、その申込みを受けるに際して一定の期間を設ける場合においては、その期間内における勧誘をいう。
第23条 事業者は、次に掲げる広告表示をしてはならない。

(69) 新発売でない物件について,新発売であると誤認されるおそれのある表示

4.「市街化調整区域内に所在する土地 (開発許可を受けた開発区域内の土地その他の一定の土地を除く) の販売広告においては, 「市街化調整区域」 と表示し,このほかに 「現在は建築不可」 と表示さえすれば,市街化区域への区分の変更が行われる予定がないとしても,不当表示となるおそれはない。」

【正解:×昭和57年,昭和59年,平成11年,

◆市街化調整区域内の土地

 表示に関する公正競争規約では,市街化調整区域内の土地の売買の広告については,開発許可を受けているものを除いて,「市街化調整区域。宅地の造成及び建物の建築はできません。」と表示する義務があります。

 「現在は建築不可」という表現は,将来は建築可能になるとの誤ったイメージを持たせる可能性があり,「市街化区域への区分の変更が行われる予定がない」以上,不当表示になるおそれがあります。

●不動産の表示に関する公正競争規約施行規則
(特定事項の明示義務)
第9条 規約第13条(特定事項の明示事項)に規定する規則で定める「特定事項」は、次の各号に掲げる事項とし、それぞれ当該各号に定めるところにより表示する。

(1) 都市計画法第7条に規定する市街化調整区域に所在する土地(同法第29条に規定する開発許可を受けているもの及び都市計画法施行令(昭和44年政令第158号)第36条第1項第3号ロ又はハに該当するものを除く。)については、「市街化調整区域。宅地の造成及び建物の建築はできません。」と16ポイント以上の文字で明示すること。

 ただし、新聞・雑誌広告における文字の大きさについては、この限りでない。

(2) 建築基準法第42条に規定する道路に2メートル以上接していない土地については、「再建築不可」又は「建築不可」と明示すること。ただし、同法第43条第1項ただし書の許可を受けることができることとなる場合において、その旨を表示するときは、この限りでない。

(3) 建築基準法第40条の規定に基づく地方公共団体の条例により附加された敷地の形態に対する制限に適合しない土地については、「再建築不可」又は「建築不可」と明示すること。

(4) 路地状部分のみで道路に接する土地であって、その路地状部分の面積が当該土地面積のおおむね30パーセント以上を占めるときは、その旨及びその面積を明示すること。

(5) 建築基準法第42条第2項の規定により道路とみなされる部分(セットバックを要する部分)を含む土地については、その旨を表示し、セットバックを要する部分の面積がおおむね10パーセント以上である場合は、併せてその面積を明示すること。

(6) 土地取引において、当該土地上に古家、廃屋等が存在するときは、その旨を明示すること。


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