税法その他 実戦篇

住宅金融公庫法の過去問アーカイブス 平成15年・問46 


住宅金融公庫の業務に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(平成15年・問46)

1.「住宅金融公庫は,貸付けを受けた者が災害により元利金の返済が著しく困難となった場合は,原則として,主務大臣の認可を受けて,貸付けの条件の変更又は延滞元利金の支払方法の変更をすることができる。」

2.「住宅金融公庫は,高齢者が自ら居住するための新築マンションの購入に必要な資金の貸付けに係る償還については,死亡時に一括償還する方法によることができる。 」

3.「住宅金融公庫は,貸付けを受けた者のうち当初期間経過後において所得が低額であり,かつ,特に居住の安定を図る必要がある者として住宅金融公庫法施行令で定めるものに対する貸付金の利率については,当初期間後の期間の全部又は一部につき,その利率を当初期間の利率と同一の利率とすることができる。」

4.「住宅金融公庫は,大部分が住宅部分であるマンションの共用部分の改良を行う管理組合法人に対して,その改良に必要な資金の貸付けを行うことができる。」

【正解】

×

1.「住宅金融公庫は,貸付けを受けた者が災害により元利金の返済が著しく困難となった場合は,原則として,主務大臣の認可を受けて,貸付けの条件の変更又は延滞元利金の支払方法の変更をすることができる。」

【正解:平成5年,15年,〔災害復興住宅の出題〕平成7年,11年,16年

◆貸付けの条件の変更等

 貸付けを受けた者が,災害その他特殊の事由により,元利金の支払が著しく困難となった場合には,住宅金融公庫は,主務大臣の認可を受けて,『貸付けの条件の変更』又は『延滞元利金の支払方法の変更』をすることができます。(住宅金融公庫法・22条)

 (ただし,主務省令で定める災害により主務省令で定める範囲内の変更をするときは,主務大臣の認可を受ける必要はありません。)

2.「住宅金融公庫は,高齢者が自ら居住するための新築マンションの購入に必要な資金の貸付けに係る償還については,死亡時に一括償還する方法によることができる。 」

【正解:×

◆死亡時の一括償還

 マンションなどの一定の合理的土地利用耐火建築物等が過半の住宅部分を有している場合,主務省令で定める年齢以上 (60歳以上) の高齢者が自ら居住する住宅部分に係るものの償還については,当該高齢者の死亡時に一括償還をする方法によることができますが, この場合の建築物は建替えに係るものに限られています。(住宅金融公庫法21条の5,17条第11項・第12項,施行規則2条の18)

 したがって,高齢者が自ら居住するための新築マンションを購入するすべてのケースでこの制度の適用が受けられるのではないため,本肢は誤りになります。

本肢は初出題であり,正答した人も消去法でこの肢2をマークした人が多いものと思われます。

●割賦償還以外の償還方法

 住宅金融公庫の貸付金の償還は,原則として,割賦償還ですが,別の方法によることもできます。

・賃貸住宅(平成11年)や分譲住宅(平成8年)の建設,宅地造成,相当の住宅部分を有する一定の耐火建築物の建設に必要な資金の貸付金の償還は、割賦償還の方法によらないことができる。(住宅金融公庫法21条の4第1項)

・公庫から貸付けを受けた者(包括承継人を含む。)は、貸付金の弁済期日が到来する前に、貸付金額の全部又は一部の償還をすることができる。(平成4年)(住宅金融公庫法21条の4第2項)

・マンションなどの一定の合理的土地利用耐火建築物等が過半の住宅部分を有しているもので建替え等に係るものについては,主務省令で定める年齢以上 (60歳以上) の高齢者が自ら居住する住宅部分に係るものの償還については,当該高齢者の死亡時に一括償還をする方法によることができます。(平成15年)(住宅金融公庫法21条の5,17条第11項・第12項,施行規則2条の18)

3.「住宅金融公庫は,貸付けを受けた者のうち当初期間経過後において所得が低額であり,かつ,特に居住の安定を図る必要がある者として住宅金融公庫法施行令で定めるものに対する貸付金の利率については,当初期間後の期間の全部又は一部につき,その利率を当初期間の利率と同一の利率とすることができる。」

【正解:関連・平成平成4年・問31・肢3,

◆当初期間の経過後の利率

 貸付けの日から起算して10年を経過する日までの期間を「当初期間」といい,当初期間の利率と当初期間後の期間の利率は異なっています。(住宅金融公庫法・21条1項)

 住宅金融公庫は,貸付けを受けた者のうち当初期間経過後において所得(その者と生計を一にするその親族の所得を含む。)が低額であり,かつ,特に居住の安定を図る必要がある者として政令で定めるものに対する貸付金の利率については,当初期間後の期間の全部又は一部につき,その利率を当初期間の利率と同一の利率とすることができます。(住宅金融公庫法・21条3項,施行令16条の4)

政令で定める者とは,具体的には,以下の人たちです。

 「配偶者のない女子で現に児童を扶養しているもの 」,「身体上の障害の程度が主務省令で定める程度であるもの(その者と生計を一にするその親族を含む。)」,「重度又はこれに準ずる程度の知的障害者と判定されている者(その者と生計を一にするその親族を含む。)」,「特に居住の安定を図る特別の事情がある者で公庫が主務大臣の承認を得て定めるもの 」(住宅金融公庫法施行令16条の4)

4.「住宅金融公庫は,大部分が住宅部分であるマンションの共用部分の改良を行う管理組合法人に対して,その改良に必要な資金の貸付けを行うことができる。」

【正解:平成10年,15年

◆マンションの共用部分の改良に必要な資金の貸付

 住宅金融公庫は,住宅の改良を行う者に対し,その改良に必要な資金を貸し付けることができます。これはマンションの共用部分の改良についても適用されます。

 したがって,大部分が住宅部分であるマンションの共用部分の改良を行う管理組合法人に対しても,その改良に必要な資金の貸付けを行うことができます。(住宅金融公庫法・17条5項)

大部分が住宅部分ではない場合は,当該共用部分の改良に必要な資金のうち,その区分所有建物の中で住宅部分が占める割合に対応したものに限られます。


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