宅建過去問 税法その他 

住宅金融支援機構法の過去問アーカイブス 平成20年・問46 


独立行政法人 住宅金融支援機構 (以下この問において 「機構」 という。) に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか(平成20年・問46)

1 機構は、民間金融機関により貸付けを受けた住宅ローン債務者の債務不履行により元利金を回収することができなかったことで生じる損害をてん補する住宅融資保険を引き受けている。

2 機構は、災害復興融資、財形住宅融資、子育て世帯向け ・ 高齢者世帯向け賃貸住宅融資など、政策上重要で一般の金融機関による貸付けを補完するための融資業務を行っている。

3 機構は、あらかじめ貸付けを受けた者と一定の契約を締結し、その者が死亡した場合に支払われる生命保険金を当該貸付に係る債務の弁済に充てる団体信用生命保険を業務として行っている。

4 機構は、貸付けを受けた者が景況の悪化や消費者物価の上昇により元利金の支払が困難になった場合には、元利金の支払の免除をすることができる。

<コメント>  
   この問題は,『常識力テスト』と考えると,氷解します。受験者は,肢3と肢4とどちらがマチガイかと二つに絞れますが,出題者のトラップを外すことができれば,「出題者は,ムズカシクしようとして,かえって,逆に墓穴を掘ってしまった問題例の一つ」だということがわかります。

〔出題者のトラップ〕肢3で住宅金融支援機構法の条文を用いずに,「団体信用生
          命保険」という機構の窓口用語を意図的に出題しています。
          これは,「どうせ知らないだろう」という出題者のタカをくく
          った心理的姿勢が見受けられ,受験者を迷わせてやろうという
          "親心" が見てとれます。

〔未知の事項に関する処理〕常識力

〔補正難易度〕標準レベル

〔解法のテクニック〕疲労困憊期待型の出題。肢3まで問題文を読んで頭が疲れ,
          肢4の正誤の判断に迷うことを,出題者は期待しています。

【正解】

×

 正答率  61.2%

1 機構は、民間金融機関により貸付けを受けた住宅ローン債務者の債務不履行により元利金を回収することができなかったことで生じる損害をてん補する住宅融資保険を引き受けている。

【正解:初出題

◆住宅融資保険

 機構は,一般の金融機関による住宅の建設等に必要な資金の融通を支援するため,以下の業務を行っている(住宅金融支援機構法4条,13条1項〜3項)

ア (住宅の建設・購入資金の)貸付債権の譲受け<証券化支援業務・買取型>

イ 住宅融資保険を担保とする有価証券の債務保証〔特定債務保証〕
 <証券化支援業務・保証型>

ウ 住宅融資保険 (民間金融機関と契約)

 本肢は,このウに該当する(住宅金融支援機構法13条3項)。 

2 機構は、災害復興融資、財形住宅融資、子育て世帯向け ・ 高齢者世帯向け賃貸住宅融資など、政策上重要で一般の金融機関による貸付けを補完するための融資業務を行っている。

【正解:平成19年・問46・肢2,肢3,

◆一般金融機関の貸付けの補完

 機構は,一般の金融機関による貸付けを補完するため,一般の金融機関では行っていない以下の業務を行っている(住宅金融支援機構法4条)

・災害復興建築物の建設・購入,被災建築物の補修のための資金の融資(13条5項)

・災害予防代替建築物の建設・購入,災害予防移転建築物の移転,災害予防関連工
 事の費用,住宅の耐震改修の資金のための融資(13条6項)

・合理的土地利用建築物の建設・購入,マンションの共用部分の改良のための資金
 の融資(13条7項)

・子育て世帯向け,高齢者世帯向けの賃貸住宅を建設・改良するための資金融資
 (13条8項) ⇒ 平成19年・問46・肢2

・高齢者の家庭に適した良好な居住性能及び居住環境を有する住宅とすることを
 主たる目的とする住宅の改良の資金の融資(13条9項)

・財形住宅融資など(13条2項) ⇒ 平成19年・問46・肢2,肢3, 

3 機構は、あらかじめ貸付けを受けた者と一定の契約を締結し、その者が死亡した場合に支払われる生命保険金を当該貸付に係る債務の弁済に充てる団体信用生命保険を業務として行っている。

【正解:初出題

◆あらかじめ契約して保険金等を貸付債務の弁済とすること

 機構は,「証券化支援業務で一般金融機関から譲り受けた貸付け債権に係る貸付けを受けた者」や「機構から直接貸付けを受けた者」とあらかじめ契約を締結して,その者が死亡した場合(重度障害の状態となった場合を含む。)に支払われる保険金等を当該貸付けに係る債務の弁済に充当することとすることができる(住宅金融支援機構法13条10項)

 機構の窓口業務では,これを「団体信用生命保険」として取り扱っている。

[用語の整理]
 保険金等・・・この場合は,生命保険の保険金や生命共済の共済金
 

【コメント】条文が実務ではどのように反映されているかを知ることは必要ではある
      が,いちいち受験者に要求していたら際限がない。
     19年・問46・肢3と同じ出題方法。 

●生命保険の保険金などによる一括償還をすることができる場合
・証券化支援事業(買取型) により譲り受けた住宅ローン債権に係る貸付けを受けた者

・災害復興建築物の建設・購入,被災建築物の補修に必要な資金(当該災害復興建築物の建設若しくは購入又は当該被災建築物の補修に付随する土地・借地権の取得に必要な資金を含む。)

・災害予防代替建築物の建設・購入(合わせて付随する土地・借地権の取得も含む),災害予防移転建築物の移転(合わせて付随する土地・借地権の取得も含む),災害予防関連工事,耐震関連の住宅改良(地震に対する安全性の向上を主たる目的とする住宅の改良),

・合理的土地利用建築物の建設,合理的土地利用建築物で人の居住の用その他その本来の用途に供したことのないものの購入に必要な資金(当該合理的土地利用建築物の建設又は購入に付随する合わせて付随する土地・借地権の取得も含む),マンションの共用部分の改良

●死亡時に一括償還をすることができる場合
・高齢者が自ら居住する住宅とするために行う合理的土地利用建築物の建替えでの住宅部分の建設・購入,

・高齢者が自ら居住する住宅について行う一定の改良

4 機構は、貸付けを受けた者が景況の悪化消費者物価の上昇により元利金の支払が困難になった場合には、元利金の支払の免除をすることができる。

【正解:×初出題

◆貸付けの条件の変更,延滞元利金の支払い方法の変更

 機構は,一定の場合に,貸付けの条件の変更,延滞元利金の支払い方法の変更をすることができるが,元利金の支払の免除をするという規定はない(規程26条など)

 常識的に,「銀行から借金をしていた個人が元金と利息を全額免除される」ということは通常ではありえない。(特別な状況下では,銀行から債務免除をしてもらう事態はありえるが,そこまで考えたら<ドロ沼>になる。) 


住宅金融支援機構法のトップに戻る   過去問アーカイブス・税法その他に戻る

Brush Up! 税法その他編に戻る