過去問で学ぶ 区分所有法入門
区分所有法の過去問アーカイブス 宅建・平成12年・問13
ガイド | 規約と集会の決議の総合問題 (管理者の選任・復旧・共用部分の変更・管理者の訴訟追行権) ※類似の問題は,昭和55年に出題されています。 |
建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(宅建・平成12年・問13) |
1.「区分所有者が管理者を選任する場合は,集会の決議の方法で決することが必要で,規約によっても,それ以外の方法による旨定めることはできない。」 |
2.「建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失した場合において,滅失した共用部分を復旧するときは,集会の決議の方法で決することが必要で,規約によっても,それ以外の方法による旨定めることはできない。」 |
3.「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は,集会の決議の方法で決することが必要で,規約によっても,それ以外の方法による旨定めることはできない。」改 |
4.「管理者をその職務に関し区分所有者のために原告又は被告とする場合は,集会の決議の方法で決することが必要で,規約によっても,それ以外の方法による旨定めることはできない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
肢問の問題文の読解
「規約によっても,それ以外の方法による旨定めることはできない。」 ⇒ 「規約によって,集会の決議によって決する以外の方法を定めることはできない」 ⇒ 「規約によって,定めることはできない」 |
1.「区分所有者が管理者を選任する場合は,集会の決議の方法で決することが必要で,規約によっても,それ以外の方法による旨定めることはできない。」 |
【正解:×】 ◆管理者の選任 ⇒ 集会の決議のほかに,規約で定めることができる。 管理者の選任は,規約にその定めがあればそれに従い,規約に定めがないときは集会の決議によって行います。(25条1項)
|
2.「建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失した場合において,滅失した共用部分を復旧するときは,集会の決議の方法で決することが必要で,規約によっても,それ以外の方法による旨定めることはできない。」 |
【正解:×】 ◆小規模滅失での復旧 ⇒ 集会の決議のほかに,規約で定めることができる。 建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失した場合,滅失した共用部分を復旧するときは,各区分所有者がすることができますが〔61条1項〕,集会の決議の方法で決すること〔61条2項〕も,規約によって別段の定めをすること〔61条3項〕も,どちらもできます。
|
3.「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は,集会の決議の方法で決することが必要で,規約によっても,それ以外の方法による旨定めることはできない。」改 |
【正解:○】 ◆共用部分の変更の実施 ⇒ 集会の決議のほかに,規約で定めることはできない。 共用部分の変更 (その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。) は,区分所有者及び議決権の各4分の3の集会決議によって決します。規約で定めることはできません。〔17条本文〕 ●勘違い注意!! 共用部分の重大変更を決議するときに,区分所有者の定数を過半数まで減ずることが規約で定めることができるという規定があります〔17条但書〕が,これは議決方法に関する別段の定めであり,共用部分の重大変更の決定そのものについての定めではありません。
|
4.「管理者をその職務に関し区分所有者のために原告又は被告とする場合は,集会の決議の方法で決することが必要で,規約によっても,それ以外の方法による旨定めることはできない。」 |
【正解:×】 ◆管理者の訴訟追行権 ⇒ 集会の決議のほかに,規約で定めることができる。 管理者は,規約又は集会の決議により,その職務に関して,区分所有者のために原告または被告になること〔訴訟を追行すること〕ができます。(26条4項) ⇒ 規約の定め又は集会の決議がなければ,管理者は,その職務に関して,区分所有者のために原告または被告になることができない。
|
●管理者の当事者適格 |
規約の定め又は集会の決議があれば,以下のものについて,管理者は,その職務に関して,区分所有者のために原告または被告になることができます。〔管理組合法人についても同じ。管理組合法人も,規約の定め又は集会の決議により,その事務に関して,区分所有者のために原告または被告になることができます。(47条6項・8項)〕 |
・共用部分等を対象とする損害保険契約に基づく保険金の請求の訴訟
・共用部分等の不法占拠者に対する妨害排除請求の訴訟 ・共用部分等について生じた損害賠償金〔不法行為のほか債務不履行によるものも含む〕及び不当利得による返還金の請求訴訟 ⇒ 平成14年改正で新たに認められたもの 例) 損壊行為等の不法行為により共用部分等に損害が生じた場合の損害賠償金を請求する訴訟。 |
●盲点 共同利益に反する行為への請求裁判での訴訟主体 (訴訟追行)
・当該違反者を除く他の区分所有者全員
〔必ず全員で訴訟を提起しなければならないとすると著しく不便なため,区分所有法では,集会の決議により,他の区分所有者全員のために,訴訟追行権を付与された『管理者』または『集会において指定された区分所有者』が訴訟を提起することができるとした。〕(57条3項・58条4項・59条2項・60条2項) ・管理組合法人 |
||||
⇒ 義務違反者への訴訟の場合は,請求訴訟提起の決議に加えて,57条3項等により,管理者が訴訟を提起するには,それについての集会の決議を必要とするので注意。
|
1000本ノック・権利の変動篇・過去問で学ぶ区分所有法に戻る
HOMEに戻る | 宅建・権利の変動篇に戻る | マン管・区分所有法に戻る |