Brush Up! 権利の変動篇 借地借家法

借家権の過去問アーカイブス 平成13年・問13 借賃増減額請求権(減額請求)


賃貸人(個人)と賃借人(個人)との間の居住用建物の賃貸借契約に関する次の記述のうち,借地借家法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。(平成13年・問13)

1.「が家賃減額の請求をしたが,家賃の減額幅についてAB間に協議が調わず裁判になったときは,は,その裁判が確定するまでの期間は,が相当と認める金額の家賃を支払うようにに請求できる。」

2.「が家賃減額の請求をしたが,家賃の減額幅についてAB間に協議が調わず裁判になったときは,その請求にかかる一定額の減額を正当とする裁判が確定した時点以降分の家賃が減額される。」

3.「 家賃が,近傍同種の建物の家賃に比較して不相当に高額になったときは,契約の条件にかかわらず,は,将来に向かって家賃の減額を請求することができる。」

4.「AB間で,3年間は家賃を減額しない旨特に書面で合意した場合,その特約は効力を有しない。」

【正解】

×

1.「が家賃減額の請求をしたが,家賃の減額幅についてAB間に協議が調わず裁判になったときは,は,その裁判が確定するまでの期間は,が相当と認める金額の家賃を支払うようにに請求できる。」

【正解:

◆減額請求で裁判になったときの賃料支払

 借賃の減額請求について協議が調わず裁判になったとき,賃貸人は,その裁判で減額が確定するまでの期間は,賃貸人A自身が『相当と認める金額』の家賃〔従来の家賃も可とする裁判例もある。〕を支払うように賃貸人Bに対して請求することができます(32条3項本文)

この規定があるにもかかわらず,賃貸人の請求金額を支払わずに,賃借人が自分が相当と認める額〔賃貸人の請求額より少ない額〕を支払い続けた場合は,借賃不払いによる解除が裁判所により認められる場合があります。

裁判の確定までの考え方=「裁判確定までは従来の法律関係が維持される

   裁判の確定まで
賃借人が減額請求 ⇒   賃貸人相当と認める金額を賃借人に請求できる。
(請求する金額は,従来の賃料も可とする裁判例もある)
賃貸人が増額請求 ⇒   賃借人相当と認める金額を賃貸人に支払えばよい。
(支払う金額は,従来の賃料より低いものであってはならない)

賃借人の減額請求に対抗して賃貸人が増額請求した場合や,賃貸人の増額請求に対抗して賃借人が減額請求した場合でも,賃借人は従来の賃料を支払うことが必要で,賃貸人は従来の金額を超えて請求することはできない。

2.「が家賃減額の請求をしたが,家賃の減額幅についてAB間に協議が調わず裁判になったときは,その請求にかかる一定額の減額を正当とする裁判が確定した時点以降分の家賃が減額される。」

【正解:×

◆減額が裁判で確定したとき

 裁判で減額が確定し,既に支払いを受けた建物の借賃の額正当とされた借賃の額超えているときは,賃貸人は,その超過額に年1割の受領の時からの利息をつけて返還しなければなりません。〔≠5%であることに注意!!〕(32条3項但書)

 受領の時からの超過額・利息というのは,<減額請求の意思表示をした時から>のものなので(判例),本肢の≪減額を正当とする裁判が確定した時点以降分の家賃が減額≫というのは×です。

3.「 家賃が,近傍同種の建物の家賃に比較して不相当に高額になったときは,契約の条件にかかわらず,は,将来に向かって家賃の減額を請求することができる。」

【正解:

◆減額請求権

 建物の借賃が,

   (i) 土地・建物に対する租税その他の負担の増減により,
   (ii) 土地・建物の価格の上昇・低下その他の経済事情の変動により,

 近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは,
 契約の条件にかかわらず,
 当事者〔賃借人・賃貸人〕は,将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができます。(32条1項本文)

4.「AB間で,3年間は家賃を減額しない旨特に書面で合意した場合,その特約は効力を有しない。」

【正解:

◆減額請求できない特約は無効

 建物の借賃が不相当になったときは,契約の条件にかかわらず減額請求することができ,<3年間は借賃を減額しない旨>書面で特約があったとしても減額請求権を排除できない,とされています(判例)。したがって,減額請求権を排除できない,という意味では,この特約は無効です。

当事者間に<一定の期間借賃を増額しない>旨の特約がある場合は有効であり,事情が変更したとしても,原則としてその期間は賃料の増額を賃貸人は請求することができません(32条1項但書)

●参考問題
契約の条件にもかかわらず,当事者が経済事情の変更などにより,近傍同種の建物の借賃に比較して不相当になったときは増減額請求できるという借地借家法32条1項の規定は強行規定であり,当事者の合意で,一定の期間増額しないという特約があったとしてもその定めは無効である。

【正解:×

 借地借家法32条は強行規定にはなっていません(37条)が,<一定の期間借賃を増額しない>特約がある場合にはその定めに従うことになっています(32条1項但書)


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