Brush Up! 権利の変動篇 借地借家法
借地権の過去問アーカイブス 平成14年・問13 建物買取請求権
Aが,平成4年8月,Bに土地を賃貸し,Bがその土地上に建物を所有している場合の契約終了に伴う建物買取請求権に関する次の記述のうち,借地借家法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。(平成14年・問13) |
1.「AB間の借地契約が,公正証書により10年の事業専用の目的で締結された場合には,Bは建物買取請求権を有しない。」 |
2.「建物買取請求権は,契約終了の理由を問わず,Bの債務不履行を原因とする契約終了の場合にも,BはAに対して建物の買取りを請求することができる。」 |
3.「BがAの承諾を得て土地をCに転貸し,建物を譲渡した場合,AB間,BC間の契約が,ともに期間満了し更新がなければ,CはAに対し直接建物買取請求権を有する。」 |
4.「Bが適法にAに建物買取請求権を行使すると,その所有権は直ちにBからAに移転するが,BはAが代金を支払うまで,建物の引渡しを拒むことができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
建物買取請求権の出題は,平成10年問11肢4(13条),平成6年問11肢3・肢4(14条), |
●建物買取請求権とは何か |
借地権の存続期間が満了し,借地契約の更新がない場合において,建物があるときは,借地権者は,土地の所有者に対して建物を時価で買い取るように請求できます。(借地借家法13条1項)この建物買取請求権は形成権のため,この行使によって当然に売買契約が成立します。(一般定期借地権,事業用定期借地権,一時使用目的の借地権を除く) ※形成権・・・一方的な意思表示によって法律関係を発生させる権利。 ▼民法の原則によれば,借地期間が終了すれば,借地権者は自らの費用で建物を取り壊して更地にして明渡さなければいけません。しかし,これでは有効に活用できる建物までも取り壊さなければならず,社会全体では不経済になってしまいます。 そのため,借地借家法では,建物の保全と借地権者が借地上の建物その他に投下した資本の回収を図るために,借地権者の建物買取請求権を認めました。この13条の規定は,強行規定になっており,特約でも排除することはできません。借地権者または転借地権者に不利なものは無効とされているからです。〔14条の第三者の建物買取請求権も特約で排除することはできません。〕(借地借家法16条) |
1.「AB間の借地契約が,公正証書により10年の事業専用の目的で締結された場合には,Bは建物買取請求権を有しない。」 |
【正解:○】最近の関連出題歴・平成7年問12肢3 ◆事業用定期借地権では,建物買取請求権はない 事業用定期借地権では,更新や再築の規定(3条〜8条,18条),借地権者の建物買取請求権(13条)は適用しないとされています。(23条1項,2項) ▼注意!! 14条の建物買取請求権 借地借家法23条では,14条の建物買取請求権は排除されていません。『第三者(競落人でもよい)が借地の建物その他を取得した場合に,土地の所有者が賃借権の譲渡や転貸を承諾しないときは,その第三者はその他建物を時価で買い取るように土地の所有者に対して請求することができる。』という規定は,事業用定期借地権でも適用されます。 競売で借地上の建物を競落した者の建物買取請求権は,平成5年問10肢4に出題。 |
●14条の建物買取請求権の出題例 |
1.「Aは,Bの所有する土地を賃借し,その上に木造の建物を所有している。Aが当該建物と借地権を第三者Cに譲渡しようとしたときに,Bが正当な理由なく承諾を与えないときには,AはBに対して建物を時価で買い取るべきことを請求することができる。」(昭和58年問13肢2) |
【正解:×】
B (土地の賃貸人) 建物買取請求できるのは,借地上の建物を取得した第三者です。 |
2.「AがBの土地を賃借して建てた建物の所有権が,Cに移転した。Bは,Cが使用しても何ら支障がないにもかかわらず,賃借権の譲渡を承諾しない。Bが賃借権の譲渡を承諾しないときは,Cは,Bに対して,借地権の価額に建物の価額を加算した金額で,建物の買取を請求することができる。」(平成6年問11肢3) |
【正解:×】
B (土地の賃貸人) 借地上の建物を譲り受けた者は,建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るように請求することはできますが,借地権の価額を加算することはできません。 |
2.「建物買取請求権は,契約終了の理由を問わず,Bの債務不履行を原因とする契約終了の場合にも,BはAに対して建物の買取りを請求することができる。」 |
【正解:×】最近の出題歴・平成3年問12肢3, ◆債務不履行解除の場合は,建物買取請求権はない 建物買取請求権は,借地権者の保護のために,借地権の存続期間が満了して契約の更新がない場合に認められているものです。(13条1項) 判例では,債務不履行による契約解除で契約が終了したときは,借地人は建物買取請求権を有しないとされています。(最高裁・昭和35.2.9) |
●類題 |
1.「借地契約満了時に更新がなされなかった場合には,借地人は,地主に対して時価をもって建物を買い取るべきことを請求することができる。」(昭和62年問12肢3) |
【正解:○】 |
2.「AはBの所有地を賃借して居住用の家屋を所有している。Aは,借地権が消滅した場合において,家屋があるときは,自らが債務不履行のときでも,Bに対し家屋の買取りを請求することができる。」(平成3年問12肢3) |
【正解:×】 |
3.「BがAの承諾を得て土地をCに転貸し,建物を譲渡した場合,AB間,BC間の契約が,ともに期間満了し更新がなければ,CはAに対し直接建物買取請求権を有する。」 |
【正解:○】 ◆転借人の建物買取請求権 A (土地の賃貸人) 建物買取請求権の規定は,借地権の存続間が満了した場合での転借地権者(転借人)と借地権設定者(土地の所有者)との間にも準用されており,転借人Cは土地の所有者Aに対し直接,建物買取請求をすることができます。(13条3項) |
4.「Bが適法にAに建物買取請求権を行使すると,その所有権は直ちにBからAに移転するが,BはAが代金を支払うまで,建物の引渡しを拒むことができる。」 |
【正解:○】 ◆建物買取請求権と土地・建物の引渡しは同時履行の関係 A (土地の賃貸人) 判例では,建物買取請求権を行使されると,賃貸人Aの建物買取の代金支払い義務と賃借人Bの土地・建物の引渡し義務は同時履行の関係にあるとされ(大審院・昭和7.1.26),BはAが代金を支払うまで,土地・建物の引渡しを拒むことができます。 ●対照 (大審院・昭和7.1.26)
▼賃貸人が代金を支払うまで土地・建物の引渡しを拒むことはできますが,賃貸借契約期間終了後の土地の地代相当分は不当利得となるのでその分は返還しなければいけません。(最高裁・昭和35.9.20) → 平成6年問11肢4に出題 |