Brush Up! 権利の変動篇 借地借家法

借家権の過去問アーカイブス 平成14年・問14 建物賃貸借契約の法定更新


建物賃貸借契約(以下,この問において「契約」という。)の終了に関する次の記述のうち,借地借家法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成14年・問14)

1.「期間の定めのある建物賃貸借において,賃貸人が,期間満了の1年前から6月前までの間に,更新しない旨の通知を出すのを失念したときは,賃貸人に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合でも,契約は期間満了により終了しない。」

2.「期間の定めのある建物賃貸借において,賃貸人が,期間満了の10月前に更新しない旨の通知を出したときで,その通知に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合は,期間満了後,賃借人が使用を継続していることについて,賃貸人が異議を述べなくても,契約は期間満了により終了する。」

3.「期間の定めのある契約が法定更新された場合,その後の契約は従前と同一条件となり,従前と同一の期間の定めのある賃貸借契約となる。」

4.「期間の定めのない契約において,賃貸人が,解約の申入れをしたときで,その通知に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合は,解約の申入れの日から3月を経過した日に,契約は終了する。」

【正解】

× × ×

1.「期間の定めのある建物賃貸借において,賃貸人が,期間満了の1年前から6月前までの間に,更新しない旨の通知を出すのを失念したときは,賃貸人に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合でも,契約は期間満了により終了しない。」

【正解:

◆法定更新 (i)更新通知を出し忘れたとき

 期間の定めのある賃貸借において,賃貸人が,賃貸借期間満了の1年前から6月前までの間に,賃借人に対して,『更新拒絶の通知』または『条件を変更しなければ更新しない旨の通知』をしなかったときは,期間を除いて従前の契約と同一の条件で,契約を更新したものとみなされます。また,この法定更新後の賃貸借は期間の定めのないものとなります(26条1項)

 本肢では,更新拒絶の通知を失念して〔ウッカリ忘れて〕出していなかったので,正当事由があったとしても,法定更新になります。したがって本肢は正しく,正解肢になります。

2.「期間の定めのある建物賃貸借において,賃貸人が,期間満了の10月前に更新しない旨の通知を出したときで,その通知に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合は,期間満了後,賃借人が使用を継続していることについて,賃貸人が異議を述べなくても,契約は期間満了により終了する。」

【正解:×

◆法定更新 (ii)期間満了後の使用継続に異議を述べないとき

         更新拒絶の通知
  ――○―――――――――○―――――――――――――
    1年前            6月前          期間満了→使用継続

 賃貸人が,賃貸借期間満了の1年前から6月前までの間に,賃借人に対して,正当事由のある『更新拒絶の通知』をしたとしても,期間満了後に賃借人が建物の使用を継続していた場合は,賃貸人は遅滞なく異議を述べないと法定更新されることになります。(26条2項)

 本肢では,<期間満了後,賃貸人が使用を継続していることについて,賃貸人が異議を述べなくても,契約は期間満了により終了する>としているので×です。

対比借地権の場合のみなし承諾による法定更新

 存続期間が満了する時に,借地上に建物があり,借地権者からの契約の更新請求に対して土地の所有者が遅滞なく異議を述べた〔更新拒絶の意思表示〕としても,存続期間満了後に借地権者が使用継続している場合には,土地の所有者が遅滞なく異議を述べないと『みなし承諾による法定更新』になります。(5条2項)

   更新請求  遅滞なく異議  
  ――――――――――――――――
                  期間満了 → 使用継続

 註 更新請求を拒絶したからといっても,それだけでは安心できないということです。

3.「期間の定めのある契約が法定更新された場合,その後の契約は従前と同一条件となり,従前と同一の期間の定めのある賃貸借契約となる。」

【正解:×

◆法定更新後は『期間の定めのない賃貸借』になる

 上で述べたように,法定更新されると,更新後の契約は,期間を除いて従前と同一条件となり,期間の定めのない賃貸借になります。(26条1項)

 したがって,本肢は×です。

4.「期間の定めのない契約において,賃貸人が,解約の申入れをしたときで,その通知に借地借家法第28条に定める正当事由がある場合は,解約の申入れの日から3月を経過した日に,契約は終了する。」

【正解:×

◆期間の定めのない賃貸借での解約の申入れ

 期間の定めのない建物の賃貸借では,賃貸人・賃借人ともいつでも解約の申入れをすることができますが,賃貸人から解約の申入れをする場合は,正当事由を必要とし(28条),解約申入れから6月を経過することによって終了します。(27条1項)

 賃借人からの解約申入れの場合は民法617条が適用され,解約の申入れから3月が経過することによって終了します。(民法617条1項2号)

     終了時点  解約理由
 賃貸人からの解約申入れ  申入れから6月経過  正当事由が必要
 賃借人からの解約申入れ  申入れから3月経過      −

建物所有を目的とする借地契約(土地の賃貸借・地上権)では,期間の定めがない場合は,存続期間が30年になり,解約の申入れもできないことに注意。

注意期間の定めのない建物の賃貸借での法定更新

 賃貸人が,正当事由ある解約の申入れをしてから6月経過しても,賃借人が建物の使用を継続していた場合は,賃貸人は遅滞なく異議を述べないと法定更新されることになります。(27条2項)

    解約の申入れ  
  ―――――――――――――
              6月経過 → 使用継続

 註 解約の申入れをしたからといっても,それだけでは安心できないということです。


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