Brush Up! 権利の変動篇 借地借家法
借家権の過去問アーカイブス 平成15年・問14 定期建物賃貸借〔定期借家契約〕
平成15年10月に新規に締結しようとしている,契約期間が2年で,更新がないこととする旨を定める建物賃貸借契約(以下この問において「定期借家契約」という。 )に関する次の記述のうち,借地借家法の規定によれば,正しいものはどれか。(平成15年・問14) |
1.「事業用ではなく居住の用に供する建物の賃貸借においては,定期借家契約とすることはできない。」 |
2.「定期借家契約は,公正証書によってしなければ,効力を生じない。」 |
3.「 定期借家契約を締結しようとするときは,賃貸人は,あらかじめ賃借人に対し,契約の更新がなく,期間満了により賃貸借が終了することについて,その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。」 |
4.「定期借家契約を適法に締結した場合,賃貸人は,期間満了日1ヵ月前までに期間満了により契約が終了する旨通知すれば,その終了を賃借人に対抗できる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
1.「事業用ではなく居住の用に供する建物の賃貸借においては,定期借家契約とすることはできない。」 |
【正解:×】 ◆定期借家契約は,居住用・非居住用を問わない 建物の種類や用途には関係なく,定期借家契約とすることができるので,本肢は×。 ▼居住用・非居住用で扱いが異なるのは,『賃借人のやむをえない事情による中途解約権』(38条5項)。
註 居住用の面積要件は,区分建物や賃貸アパートでは,共用部分を含めず,専有部分等のみの面積です。 |
2.「定期借家契約は,公正証書によってしなければ,効力を生じない。」 |
【正解:×】 ◆定期借家契約は,書面によって契約をするときに限る 定期借家契約は,公正証書などの書面によって契約をするときに限る(38条1項) ○書面は「公正証書」ではなくてもよい。→ したがって本肢は×。 ○更新がなく,期間満了によって契約が終了する旨の特約のみを書面にしてもダメ。契約全体を書面にしなければならない。
|
3.「 定期借家契約を締結しようとするときは,賃貸人は,あらかじめ賃借人に対し,契約の更新がなく,期間満了により賃貸借が終了することについて,その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。」 |
【正解:○】 ◆あらかじめ定期借家契約である旨の説明義務 賃貸人が定期建物賃貸借をしようとするときは,あらかじめ,契約締結に先立って,定期借家契約である旨の書面を交付した上で,賃借人になろうとする者に対して説明しなければいけません。(借地借家法・38条2項) もし,賃貸人がこれを怠ると,賃貸借契約のうち『契約の更新がない特約の部分』だけが無効になり,『定期借家契約』ではなく,『普通借家契約』を締結したことになります。〔事前の書面の交付・説明がないと,普通借家契約での法定更新が適用されたり,賃貸人の更新拒絶に正当事由が必要になる。〕 ▼賃貸人の義務とされる,「定期建物賃貸借」である旨の事前の説明・書面の交付は,代理人に委任してもよいことに注意してください。賃貸人と言っても,ほとんどが零細な賃貸業を営んでいることが多く,賃貸業のほかに仕事を持っていることが多いため,実務では、賃貸の媒介をしている宅建業者に委任することが多いものと思われます。 ただし,賃貸の媒介をしている宅建業者が代理として事前の書面の交付・説明をするにしても,重要事項説明等とは別個にしなければいけないので,重要事項説明等で代えることはできません。 |
●参考問題 |
「宅地建物取引業者が,宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項について説明をする場合に関する次の記述は,○か×か。
建物の貸借の媒介において,当該貸借が借地借家法第38条第1項の定期建物賃貸借である場合は,貸主がその内容を書面で説明したときでも,定期建物賃貸借である旨を借主に説明しなければならない。」(平成12年・問39・肢1) |
【正解:○】
定期建物賃貸借である旨を貸主が説明したものとは別個に,宅建業者は,宅地建物取引主任者をして,借主に対して,宅地建物取引業法35条に規定する重要事項として説明させなければいけません。 |
4.「定期借家契約を適法に締結した場合,賃貸人は,期間満了日1ヵ月前までに期間満了により契約が終了する旨通知すれば,その終了を賃借人に対抗できる。」 |
【正解:×】 ◆定期借家契約終了の通知 期間満了1年前 期間満了6ヵ月前 期間満了 ――●―――――――●――――――――●――――――――――→ 期間が1年以上の定期借家契約では,期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に期間が満了して契約が終了する旨の通知をしなければ,その終了を賃借人に対抗できない。この通知は口頭でもかまわないとされています。(借地借家法・38条4項本文) したがって,本肢は×です。 ▼通知期間〔期間満了の1年前から6ヵ月前まで〕に通知しなかったときでも,契約期間満了前に通知した場合は,賃貸人が通知をしてから6ヵ月経過すると契約が終了したことを賃借人に対抗できます。(借地借家法・38条4項但書) 期間満了6ヵ月前 期間満了 ―――――――――●――――――――●――――――――――→ ▼契約期間満了まで賃貸人がこの通知を出さず,賃借人も期間満了後も使用を継続している場合は,定期借家契約期間満了後は『期間の定めのない建物賃貸借』になると解されています。 期間満了1年前 期間満了6ヵ月前 期間満了 ――●―――――――●――――――――●――――――――――→ |
●定期借家契約 〔普通借家契約との違い〕 | |
・賃貸人の正当事由の有無にかかわらず,期間満了によって終了する。ただし,期間満了後に新たに定期借家契約することも可能。 〔→普通借家では,賃貸人が更新拒絶するには正当事由が必要。また,更新しない旨の特約は無効。〕 ・1年未満の契約も有効で,日単位・週単位でも借家期間を設定できる。 〔→普通借家では,1年未満の契約は自動的に『期間の定めのないもの』とみな
・賃料増減額請求権を排除する特約は有効。賃料の改定についての特約は, 〔→ 普通借家では,『一定期間,賃料を増額しない特約』のみが認められる。〕 ・契約の書面化,賃貸人の説明義務,終了の通知義務 定期借家契約である旨を貸主が口頭で伝えただけでは定期借家契約は成立しない。 〔→ 普通借家では,書面によって契約することは義務付けられていない。〕 賃貸人が定期建物賃貸借をしようとするときは,あらかじめ,契約締結に先立っ 期間が1年以上の定期借家契約では,期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に ・賃貸人の中途解約権(借地借家法・38条5項) この規定は「店舗併用住宅」にも適用されると解されています。 〔→ 普通借家では,期間の定めのない賃貸借では,民法617条とおり,賃借人 |