Brush Up! 権利の変動篇 借地借家法
借家権の過去問アーカイブス 昭和57年・問13
Aは,B所有の建物を賃借している。この場合,借地借家法の規定によれば,次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和57年・問13) |
1.「借賃の増額について,AB間で協議が調わないときは,Aは,増額を正当とする裁判が確定するまでは,相当と認める借賃を支払えばよい。」 |
2.「Bが建物をCに譲渡した場合,Aは賃借権について登記しなければ,Cに対抗できない。」 |
3.「AとBの賃貸借契約に期間の定めがある場合は,Bが契約期間満了後に遅滞なく異議を述べ,かつ,正当な事由を有するときは,賃借権は消滅する。」 |
4.「AとBの賃貸借契約に期間の定めがない場合は,当該建物が木造であれば,賃借権の存続期間は30年となる。」陳腐化により出題されないと予想 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
1.「借賃の増額について,AB間で協議が調わないときは,Aは,増額を正当とする裁判が確定するまでは,相当と認める借賃を支払えばよい。」 |
【正解:○】 ◆借賃増減請求権 建物の借賃が,租税その他の負担の増減・経済事情の変動・近隣同種の建物の借賃との比較などにより不相当になったときは,契約の条件にかかわらず,当事者〔賃貸人・賃借人〕は,将来に向かって借賃の額の増減を相手方に請求することができます。(32条1項)
建物の借賃の増額について当事者間で協議が調わなければ,増額の請求を受けた賃借人は,増額を正当とする裁判が確定するまでは,相当と認める額の建物の借賃を支払うことになっています。 ただし,増額を正当とする裁判が確定し,既に支払った額に不足があるときは,その不足額に年1割の利息を付して支払わなければいけません。(32条2項) ▼増額を正当とする裁判が確定すると,増額請求をしたときからの借賃に遡って適用されることに注意。 |
2.「Bが建物をCに譲渡した場合,Aは賃借権について登記しなければ,Cに対抗できない。」 |
【正解:×】 ◆賃借権の対抗力−賃借権の登記・引渡し B (元・賃貸人)――C (建物の新・所有者) 建物の賃貸借は,賃借権の登記がなくても,建物の引渡しがあったときは,その後その建物について物権(所有権・抵当権など)を取得した者に対してその効力を生じます。(31条1項) したがって,Aは,賃借権の登記をしていなくても建物の引渡しがあれば,Cに対抗することができます。〔Cから明渡し請求があっても拒絶できる。〕 ▼建物の引渡しは,「現実の引渡し」だけではなく,「簡易の引渡し」,「指図による占有移転」,「占有改定」も一般に『建物の引渡し』になると解されています。 |
3.「AとBの賃貸借契約に期間の定めがある場合は,Bが契約期間満了後に遅滞なく異議を述べ,かつ,正当な事由を有するときは,賃借権は消滅する。」 |
【正解:×】 ◆法定更新 (i)更新拒絶の通知をしない (ii)期間満了後の使用継続に異議を述べない 期間に定めのある建物の賃貸借では,当事者が期間満了の1年前から6月前までの間に,<更新しない旨の通知>または<条件を変更しなければ更新をしない旨の通知>をしなかったときは,従前の契約と同じ条件で契約を更新したとみなされます。ただし,その期間は,定めがないものになります。(26条1項)→通知は形式を問わない。 また賃貸人からの更新拒絶する場合には正当事由が必要です。(28条) 本肢では更新拒絶した旨の記載がないので法定更新されているものと考えられます。期間満了後に遅滞なく異議を述べても遅すぎます。したがって,本肢は誤りの記述です。
賃貸人が期間満了の1年前から6月前までの間に正当事由のある更新拒絶をして期間が満了したとしても,賃借人が建物の使用を継続している場合は,賃貸人はそのことに遅滞なく異議を述べなかったときにも,従前の契約と同じ条件で契約を更新したとみなされます。(その期間は,定めがないものになる。)(26条2項)→異議は形式を問わない。 →この場合の異議には正当事由は必要とされていません。更新拒絶したときに正当事由があればよく,異議にまで正当事由は必要とされていません。 |
■法定更新−期間の定めのない賃貸借の場合
→ 賃貸人が建物の賃貸借終了後の使用継続に遅滞なく異議を述べないときには,従前と同じ条件で更新したものとみなされる。
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4.「AとBの賃貸借契約に期間の定めがない場合は,当該建物が木造であれば,賃借権の存続期間は30年となる。」陳腐化により出題されないと予想 |
【正解:×】 ◆存続期間 建物の用途や構造で存続期間の違いはありません。なお,借地借家法が適用される建物の賃貸借では,民法604条は適用されないため存続期間は20年を超えることができます。
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●民法604条 ―借地借家法が適用される土地建物の賃貸借には適用されない |
1 賃貸借の存続期間は20年を超えることができない。もしこれより長い期間をもって賃貸借をしたときはその期間は20年に短縮される。 2 賃貸借の契約を更新することができるがその場合でも20年を超えることはできない。 |