Brush Up! 権利の変動篇 借地借家法
借地権の過去問アーカイブス 昭和58年・問13
存続期間・建物買取請求権(14条)・土地の使用継続による法定更新・対抗要件
Aは,Bの所有する土地を賃借し,その上に建物を所有している。この場合,借地借家法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。(昭和58年・問13) |
1.「AとBの借地契約上,借地権の存続期間について,特にその定めがなければ30年となるが,借地権の設定後の最初の更新の場合にはその定めがないと20年となる。」改題 |
2.「Aが当該建物と借地権を第三者Cに譲渡しようとしたときに,Bが正当な理由なく承諾を与えないときには,AはBに対して建物を時価で買い取るべきことを請求することができる。」重要問題★ |
3.「借地権の存続期間の満了後Aが土地の使用を継続する場合において当該土地の上に建物があるときは,Bは,正当な理由がなければAの土地利用に対して異議を述べることはできない。」改題 |
4.「Aの借地権の存続期間内にBが当該土地の所有権を第三者Dに譲渡した場合,Aの借地権が登記されていなくても当該建物の登記があれば,AはDに対して借地権を対抗することができる。」改題 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
1.「AとBの借地契約上,借地権の存続期間について,特にその定めがなければ30年となるが,借地権の設定後の最初の更新の場合にはその定めがないと20年となる。」改題 |
【正解:○】 ◆存続期間 借地権の法定存続期間は30年で(契約に定めがない場合),定期借地権や一時使用目的の借地権を除いて,当事者の合意で定める約定存続期間もこれが最低基準(下限)になります。つまり,30年以上なら何年でも自由に設定できます。(上限がない。)(3条) また,当事者の合意で30年未満とした場合でも,法定存続期間より短いものは借地権者の不利になるために無効であり(9条),期間の定めのないときと同じ30年になります。
借地権の設定後の最初の更新での存続期間は,20年が最短期間です。当事者の合意で20年より短いものを定めても,期間の定めのない更新と同じ20年になります。〔2回目以降の更新での最短期間は10年。〕 (4条) ●借地権設定後の最初の更新
●2回目以降の更新
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2.「Aが当該建物と借地権を第三者Cに譲渡しようとしたときに,Bが正当な理由なく承諾を与えないときには,AはBに対して建物を時価で買い取るべきことを請求することができる。」重要問題 |
【正解:×】間違えやすい問題です。 ◆建物買取請求権 借地権者が建物買取請求をすることができるのは,借地期間が満了して契約の更新がない場合のみです。(13条1項) 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他を取得した場合に,借地権設定者が賃借権の譲渡や転貸を承諾しないときは,その第三者は借地権設定者に対して建物その他を時価で買い取るよう請求することができますが(14条),借地権者は,借地権設定者が不利となる恐れがないにもかかわらず,賃借権の譲渡や転貸を承諾しないときに,賃借権の譲渡・転貸の許可を裁判所に申し立てることができるのみで(19条1項),この場合借地権者は建物買取請求権を行使することはできません。
▼要件の違いに注意 −太字部分− 借地権者は,借地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合に,借地権設定者が不利となる恐れがないにもかかわらず,賃借権の譲渡や転貸を承諾しないときは,借地権設定者の承諾に代わる賃借権の譲渡・転貸の許可を裁判所に申し立てることができる。(19条1項) 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他を取得した場合に,借地権設定者が賃借権の譲渡や転貸を承諾しないときは,その第三者は借地権設定者に対して建物その他を時価で買い取るよう請求することができる。(14条) |
3.「借地権の存続期間の満了後Aが土地の使用を継続する場合において当該土地の上に建物があるときは,Bは,正当な理由がなければAの土地利用に対して異議を述べることはできない。」改題 |
【正解:○】 ◆土地の使用継続による法定更新 (更新の合意がなかった場合に),借地権の存続期間が満了した後,建物のあるその土地の使用を借地権者が継続していることに対して,<土地所有者が正当事由のある異議を遅滞なく述べなかったときは,従前の契約と同一の条件で借地契約は更新された>とみなされます。(5条2項,6条) |
4.「Aの借地権の存続期間内にBが当該土地の所有権を第三者Dに譲渡した場合,Aの借地権が登記されていなくても当該建物の登記があれば,AはCに対して借地権を対抗することができる。」 |
【正解:○】 ◆借地権の対抗要件−借地上の建物の登記 借地権者(土地の賃貸人または地上権者)は,土地の賃借権や地上権の設定登記がなくても,借地上の建物に登記(保存登記 or 表示登記)があれば,借地権設定者(土地の所有者)から土地を譲り受けた第三者に対して,借地権を対抗することができます。(10条1項) |