Brush Up! 権利の変動篇 借地借家法
借家権の過去問アーカイブス 昭和61年・問14 借地借家法の適用
建物の賃貸借に関する次の記述のうち,民法及び借地借家法の規定によれば,誤っているものはどれか。(昭和61年・問14) |
1.「一時使用のために建物を賃借したことが明らかな場合には,借地借家法は適用されない。」 |
2.「無償で建物を借りている場合には,借地借家法は適用されない。」 |
3.「営業の用に供する目的で建物を賃借した場合でも,借地借家法は適用される。」 |
4.「賃借権が登記されず,かつ,建物の引渡しがない場合には,借地借家法は適用されない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | ○ | × |
1.「一時使用のために建物を賃借したことが明らかな場合には,借地借家法は適用されない。」 |
【正解:○】 ◆一時使用の建物の賃貸借には適用されない 借地借家法の規定では, 『この章の規定は,一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には,適用しない』(40条) となっています。 ▼建物所有を目的とした一時使用のための土地の賃貸借では,借地借家法の一部の適用があります。 |
●一時使用のための賃貸借の適用関係 | |
建物の一時使用のための賃貸借 | 民法が適用される。 |
建物所有を目的とした土地の一時使用のための賃貸借 | 民法+借地借家法 |
2.「無償で建物を借りている場合には,借地借家法は適用されない。」 |
【正解:○】 ◆使用貸借には適用されない 借地借家法は,『賃料を賃借人が支払う,建物の賃貸借』について適用されるのであって,『無償で建物を借りる使用貸借』には適用されません。 使用貸借の場合は,民法593条〜600条の規定に従います。(使用貸借権は,借主の死亡によって効力を失い,消滅します。) 賃貸借と使用貸借の区別は,実質的に賃料に相当する金額の授受があったかどうかで判断されます。 |
●対比 | |
建物所有を目的にした無償の地上権 | 借地借家法が適用される |
不動産〔土地・建物〕の使用貸借 | 借地借家法は適用されない |
3.「営業の用に供する目的で建物を賃借した場合でも,借地借家法は適用される。」 |
【正解:○】 ◆建物の使用目的には関係なく適用される 建物であれば,その種類・構造・用途・目的を問わず,借地借家法が適用されます。建物使用の目的は,当事者間で自由に定めることができます。 ▼居住用の建物にのみ適用される規定としては,相続人がいない場合の居住用建物の賃借権の承継(36条),定期建物賃貸借での賃借人からの解約の申入れ〔床面積200平方メートル未満の居住用建物〕(38条5項)の二つがあります。 |
●類題 |
1.「建物の一部で独立性のない部分の賃貸借である間借りについては,借地借家法の規定は適用されない。」(昭和49年) |
【正解:○】
借地借家法の規定は,『建物及び建物の一部で構造上独立性の認められる区画の賃貸借』についてのみ認められます。 一室の間借りや下宿については,建物にあたるかどうか,議論がありますが,少なくとも独立性のない部分の賃貸借には,借地借家法の規定は適用されないとされています。 ▼判例 建物の一部であっても,障壁その他によって他の部分と区分され,独占的・排他的支配が可能な構造・規模を有するものは,借家法1条1項の「建物」にあたる。 |
4.「賃借権が登記されず,かつ,建物の引渡しがない場合には,借地借家法は適用されない。」 |
【正解:×】 ◆対抗要件と混同しないこと 確かに,賃借権の登記や建物の引渡しは,借家権を第三者に対抗するための要件ですが,建物の賃貸借があれば借地借家法が適用されます。『賃借権が登記されず,かつ,建物の引渡しがない場合に、借地借家法は適用されない』ということではありません。 |
●類題 |
1.「建物の賃貸借は,その登記がなくても,建物の引渡しがあったときは,その後その建物について物権を取得した者に対して,その効力を生ずる。」(昭和49年) |
【正解:○】
本設問は,借地借家法・31条の1項ソノママです。その建物を譲り受けた者ではなく, 例えば,所有権者だけではなく,抵当権者も該当します。抵当権に後れた賃貸借は,抵当権者の同意の登記がないと賃借人は対抗できませんが,抵当権が設定される前に引渡しがあった賃借人は抵当権者に対抗できることになります。 |
◆借地借家法が適用されないもの ・一時使用のための賃貸借 (借家は適用されない。借地は一部適用される。) ・使用貸借 (借家、借地とも適用されない) |