Brush Up! 権利の変動篇 借地借家法

借地権の過去問アーカイブス 昭和62年・問12

存続期間・賃借権の譲渡についての裁判所の許可・建物買取請求権


借地借家法に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和62年・問12)

1.「木造の建物を所有する目的で借地権を設定するにあたり,地主と借地人の合意により,存続期間を3年と定めた場合でも,その約定はなかったものとみなされ,借地権は契約のときから30年存続する。」

2.「土地の賃借人が借地上の建物を第三者に譲渡する場合,地主が自己に不利となるおそれがないにもかかわらず,当該賃借権を譲渡することを承諾しないときは,裁判所はこれに代わる許可を与えることができる。」

3.「借地契約満了時に更新がなされなかった場合には,借地人は,地主に対して時価をもって建物を買取るべきことを請求することができる。」

4.「借地契約において,借地権の存続期間,建物の種類及び構造を定めなかったときは,借地権は堅固な建物の所有を目的とするものとみなされ,従って,その存続期間は60年となる。」原題のママ

【正解】

×

1.「木造の建物を所有する目的で借地権を設定するにあたり,地主と借地人の合意により,存続期間を3年と定めた場合でも,その約定はなかったものとみなされ,借地権は契約のときから30年存続する。」

【正解:

◆存続期間

  借地契約において借地権の存続期間を30年未満とする定めは無効であることから,契約に期間の定めのないときの法定存続期間が適用され,存続期間は30年になります。(3条)

 法定存続期間  契約に定めがないとき
 約定存続期間が30年未満のとき
  30年
 約定存続期間  当事者の合意で定めるとき  最短30年
 上限なし

2.「土地の賃借人が借地上の建物を第三者に譲渡する場合,地主が自己に不利となるおそれがないにもかかわらず,当該賃借権を譲渡することを承諾しないときは,裁判所はこれに代わる許可を与えることができる。」

【正解:

◆賃借権譲渡の地主の承諾に代わる裁判所の許可

 借地権者は,借地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合に,借地権設定者が不利となる恐れがないにもかかわらず,賃借権の譲渡や転貸を承諾しないときは,借地権設定者の承諾に代わる賃借権の譲渡・転貸の許可を裁判所に申し立てることができる。(19条1項)

3.「借地契約満了時に更新がなされなかった場合には,借地人は,地主に対して時価をもって建物を買取るべきことを請求することができる。」

【正解:

◆建物買取請求権

 借地権の存続期間が満了し,借地契約の更新がない場合において,建物があるときは,借地権者は,土地の所有者に対して建物を時価で買い取るように請求できます。(借地借家法13条1項)この建物買取請求権は形成権のためこの行使によって当然に売買契約が成立します。(一般定期借地権,事業用定期借地権,一時使用目的の借地権を除く)

 形成権・・・一方的な意思表示によって法律関係を発生させる権利。
         この場合,相手の承諾はなくてもよい。

4.「借地契約において,借地権の存続期間,建物の種類及び構造を定めなかったときは,借地権は堅固な建物の所有を目的とするものとみなされ,従って,その存続期間は60年となる。」原題のママ

【正解:×

◆存続期間

  借地契約において借地権の存続期間を定めなかったときは,法定存続期間が適用され,存続期間は30年になります。(3条)

 法定存続期間  契約に定めがないとき
 約定存続期間が30年未満のとき
  30年
 約定存続期間  当事者の合意で定めるとき  最短30年
 上限なし

旧・借地法では,堅固建物所有目的と非堅固建物所有目的とで区別して借地権の存続期間もそれぞれ異なっていました。原題はそれに着目した出題でした。

 しかし,現在の借地借家法では,建物の種類・構造によって存続期間が異なるということはなく一律に30年〔当事者の合意で30年超にしたときはその期間〕になっています。


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